がんの早期発見・早期治療に向けて
読売新聞連載企画
広がる内視鏡治療

 内視鏡は近年、大きく進歩しています。内視鏡による胃がんの治療で新しい手法を開発した、県立静岡がんセンター内視鏡科部長の小野裕之医師に、お話をうかがいました。

「診る」から「治療する」へ

 私が医師になったのは19年前ですが、胃がんの診断は、のぞいて診るファイバースコープから、モニターで観察するビデオ内視鏡への移行期でした。その当時、内視鏡の中を通したリング状のワイヤで病変部を縛り、電流で焼き切る治療が開発されました。専門的には「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と言います。

 大変な進歩ではありますが、直径が2センチメートル以下の病変でないと切除できません。もっと広範囲の治療はできないかと、私のいた国立がんセンター中央病院の内視鏡スタッフは試行錯誤を重ねました。そこで生まれたのが、先端に絶縁チップを付けた電気メスで病変部の粘膜下層をはがすように切り取る方法です。正式には「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)」と言って、10数センチメートルの病変でも内視鏡で治療できるようになりました。

ほとんどない後遺症

 90年代の半ばから臨床応用したESDで、胃がんの治療現場はさらに大きく変わりました。ESDの技術習得はやや難しいので、現在のところ実施している医療機関は全国で1千施設ほどですが、近い将来、より身近な治療法になることでしょう。

 内視鏡治療は、胃の全摘や部分摘出などに比べ、後遺症がほとんどなく、臨床医としてこれに勝る喜びはありません。

 ただ、あくまでも病変は粘膜層にとどまっている早期がんが対象です。リンパ節は切除できません。がんが進行すると、腹腔鏡(ふくくうきょう)による手術か、開腹手術になります。後遺症に悩まないためには、何よりも早期発見が大切です。たとえ胃がんになっても内視鏡治療で済むよう、ぜひとも定期的な検診を心がけて欲しいものです。

早期胃がんと進行胃がん


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