まず、寺島さんの「今」についてお伺いします。今年3月にアート・ディレクターをなさっているローランさんと結婚されたばかりですが、ご結婚を機に何か変化はありましたか。
寺島: 式から3カ月、こんなに長く仕事を休んだのは初めてなので、体が変調をきたして、健康のためにも適度に仕事はしなければと思っているところです(笑)。でも、長い人生の中では、こういう時期も必要なんでしょうね。8月の舞台から本格的にお仕事します。
女優として、仕事の上では結婚しても何も変わりません。ただ、たとえば映画を観る時、私はどうしても役者の視点から観てしまうけれども、ローランはプロデューサー、ディレクターの視点で観るんですね。そして、これまでは自分の観方しか信じられなかったのが、今は彼の意見によって気づかされることがたくさんあります。こういうことが蓄積して、後々プラスになっていくと思います。二人の好き嫌いも結構分かれるので、映画の後の食事は議論が白熱しますよ(笑)。
ご主人の影響で、アートもよくごらんになると伺っていますが。アートに対して観方や感じ方など、何か変わった点はありますか?
寺島: 美術館やギャラリーなどが多く、創作の場である青山近辺もよく歩きます。最初のうちは感性ゼロで、絵を観ても「何、これ」といった始末(笑)。ローランのようなヨーロッパの人は子どものころからごく身近にアートがあるので、眼が慣れているんですよね。彼の説明を聞いているうちに、少しずつ観方、感じ方がわかってきたような気がしています。そして、役者にとって色彩の感覚がものすごく大切だということを、あらためて実感しました。
でも彼は言うんです。「僕の意見を鵜呑みにする必要はない。数多く観ていれば、作品を理屈ぬきでいいと感じられる時が自然にやってくるから。」と。よく「アートが分かる」といいますが、「アートとは理解するものではなく感じるもの」ということなんでしょうね。
現在の環境を踏まえ、今後はどのようなお仕事をしていきたいと考えていますか。
寺島: これまで自分の自然な流れに沿って仕事ができてきたと思うので、そこは変えずに、じっくりと良い仕事をしていきたい。その中で、「え、次はこれをやるの?!」と、観てくださる方も自分自身も裏切るような仕事をしたいですね。
青山学院大学の卒業生でもいらっしゃる寺島さんですが、入られたのは初等部からですね。
寺島: 生粋の青山っ子で、すっかり甘えてエスカレーターに身を任せました(笑)。
私がいい先生に恵まれたということもあるんでしょうが、初等部では教室で授業中にお芝居をさせてくれたり、中等部ではバンド活動を応援してくれたりと、個性を大切に、いいところを伸ばしてくれる学校でしたね。高等部ではハンドボールに打ち込んで、体力もつけられましたし。
大学の文学部教育学科ではどのようなことを学びましたか?
寺島: 文学部教育学科には、あのころは心理学専修コースがありましたので、そのコースを選びました(注・現在は心理学科となっている)。実は今仕事の上で、その時勉強した「児童心理学」が、思いがけずとても役に立っているんです。最近は母親役を演らせて頂く事もあるので。いかに子役の子どもたちのヘソを曲げさせずに、一緒に仕事をするか、これが大問題ですから(笑)。
在学中、19歳で始めて舞台に立たれ、それから女優としてお仕事を。学業との両立は大変でしたか。
寺島: 我が家は弟が6歳で初舞台を踏むような特殊な環境。私も小さいころから将来は女優と決めていましたから、待ちに待った舞台デビューでした。もちろん、自分では大学の卒業も絶対条件と考えていたので、ノートや試験の情報収集だの、友達にはずいぶん助けてもらいましたね。でも在学中は時間がきちんと管理できる舞台の仕事ばかりだったので、それほど無理はありませんでした。テレビや芸能界にあこがれる気持ちも多少ありましたけど、大学で過ごす時間もとても大切だったので、結果的には舞台の仕事にとどめておいてよかったと思います。
大学での一番の思い出というと何が浮かびますか?
寺島: 大教室での講義が、いかにも大学で勉強しているって感じで、結構好きでした。それからやっぱり、クリスマスの点火祭。デートコースの定番で、そこで初めて発覚するカップルがあったりして盛り上がりました(笑)。
青山学院大学は来年度、アートからサブカルチャーまで、「文化」全般を実践的に扱う「総合文化政策学部」を新設しますが、アートの真ん中に身をおく寺島さんにとって、こうした大学の取り組みについてどのような印象を持ちますか。
寺島: すばらしい取り組みだと思います。私が授業を受けたいなあ。
青山という場所がよそと一番違うのは、アートが根付いているという点だと思うんですよ。たくさんのアーティストがここで実際に活動しているし、ローランが海外から呼んだアーティストが拠点にできるような施設もある。そんな地の利を生かし、活躍中のアーティストの仕事に直接触れて、そこから学ぶ。何か目指すものをもっている学生たちは、自ずといろんなことをどんどん吸収するでしょうね。
日本人は、生活の中でアートに触れる機会がまだまだ少ないと思います。そんな現状を、ローランはフランスと日本の橋渡しを通じて変えていく仕事がしたいと言っているのですが、新学部の誕生もそこにつながる部分があるような気がします。とても楽しみです。
寺島さんやローランさんも総合文化政策学部の講師として呼ばれるかもしれませんよ。
寺島: 青山学院出身者には、私のような役者もいれば、狂言師やシンガーやいろいろいますから、そうした人脈も大いに利用して、学生がアーティストの生の声を聞く機会をたくさん作ってほしいですね。彼らも最初は自分たちと同じ立場だった、そこから上りつめていったのだと知ることは、学生のモティベーションをすごく高めてくれるはずです。
私も、講師はおこがましいけど、Q&Aのような形なら喜んで協力します。私自身、そういう若い人たちに会ってみたいです。
最後に、大学受験を控えた高校生にメッセージをお願いします。
寺島: 青山学院は、それぞれの学生が型にはまらず、自分らしい花を咲かせる時間を作ってくれる場所。ぜひ、私の後輩になってください。
ピアス Shaesby / 伊勢丹新宿店