対談中の清水教授

金融危機を経て高まる文・理のワクを越えた人材のニーズ

 アメリカ発の金融危機が世界に広がり、わが国の経済も深刻な影響を被りつつあります。私は企業ファイナンス、投資といった、現在最も大きな問題をかかえている分野を専門としていますが、今後予想される不況からの脱却が容易でないことは、残念ながら疑いようがないでしょう。

 しかしこの事態から、多くを学ぶことができます。たとえば、高度な数学を用いる金融工学によって設計された、複雑な商品やシステムが氾濫する現代の金融市場に、十分な知識を持たずにかかわることは、きわめてリスクが大きいということ。その一方で、経済を数字だけで考え、モノや価値を生み出す本来の「仕事」のあり方を忘れてしまうと、やはりそこには落とし穴が待ち構えているということ。

 したがって、大切なのは「バランス」であるということが、あらためてはっきりしてきました。これから、確実に様変わりするであろう世界経済の中で、企業を先頭に日本がこれまで以上のイニシアティブをとっていくために、バランスのとれた視点とそれを支える確かな知識を併せ持つ人材が求められていくことは間違いありません。

 私ども「社会情報学部」が育成しようとしているのは、まさにそうした人材です。

 ご存知の通り、わが国の中・高等教育のカリキュラム、そしてそれに呼応する企業の人材採用の現場には、伝統的に「文系」「理系」の区別が存在しています。しかし、社会に出てしまえば、ごく一部の研究職などを除いて、文系の仕事も理系の仕事もありません。

 情報化、グローバル化が進むにつれて、「総合性」はますます重要なキーワードとなっていくでしょう。

 そんな近未来のニーズを先取りした「文理融合」をコンセプトに、本学部はこの4月にスタートしました。はからずも世界経済を襲った激動が、先取りしたはずの近未来をぐっと現在に引き寄せたといえるかもしれません。

対談中の清水教授

専門性のベースに現代の「読み・書き・そろばん」

 もともと、人間の頭には文系・理系の区別などありません。小学校か中学校のどこかで芽ばえた苦手意識がもとで、自分は文系だ、理系だと思い込んでいる学生は多いと思いますが、やる気と訓練次第で脳は本来のバランスのとれた力を発揮するようになる。そのことを、本学部の第一期生たちが、まさに証明しつつあります。

 本学部の入学試験は、文系科目・理系科目のいずれでも受験できますが、とくに文系受験の学生たちは、前期の半年間「基礎数学入門」の授業に悲鳴をあげていたかもしれません。しかし、教員側も、手弁当の補講や質問受付を含む万全の態勢でサポートしたところ、彼らもそれによく応えてくれ、予想以上の成果を上げることができました。なお理系の学生は、代わりにより進んだ科目を履修することもでき、ムダのないようカリキュラムに工夫がなされています。

 一方、英語に関しては日本語を一切使わない厳しい環境のもと、社会で通用するコミュニケーション能力を、徹底的に身につけさせています。こちらもTOEICに向けた補講を行なったところ、予想以上の学生が集まり彼らの意識の高さを実感しました。こうした基礎能力は、いわば現代社会を生き抜くための「読み・書き・そろばん」です。これをしっかり身につけた学生たちは、社会のどの分野に進んでも、適応していくでしょう。

 その土台の上に、彼らは、情報処理、経済学、経営学、社会学といった、より専門的かつ総合的な知識を獲得していくことになります。文系の目で数字を読み、理系の目で経営理念を考える新しいタイプの若者が、数年後には実社会で活躍し始める。それが今から楽しみです。

生きた経済を学ぶ課外活動へのチャレンジ

清水教授と学生

 一つは「日経STOCKリーグ」への参加です。これは、インターネットを活用したバーチャル株取引の体験や、各自のテーマに沿った投資戦略(ポートフォリオ)づくりなどを通じて、生きた経済をコンテスト形式のゲーム感覚で学べる場。文理混合の五名のチームが、八月の100万円の株式投資体験を経て、現在は、500万円を資金とするポートフォリオ構築に挑戦しています。パソコンを駆使した数値分析に明るい理系の頭脳と、CSR(企業の社会的責任)などにも配慮して企業を見極める文系の頭脳が合体して、どのような成果をつくり出すか、大いに期待しています。

 もう一つはFP(ファイナンシャルプランナー)勉強会です。FPについて学ぶことは、社会経験のない学生たちが経済の仕組みやそれを取り巻く様々な制度を知り、将来そこに積極的にかかわっていくモティベーションの向上のためにも、大変有効な手段。夏に1名から始まった勉強会は、現在は10名ほどに増え、FP3級取得の準備を各自意欲的に進めています。

 社会情報学部は、そんな学生たちとわれわれ教員が、協力してつくっていく学部だと、私は考えています。

社会情報学部の学生

学生の声

S.Tさん(社会情報学部1年)

 高校時代から数学は好きでしたが、それをツールとして生かせるような勉強がしたいと、この学部を選びました。苦手だった英語にも、ネイティブの先生による日本語禁止のスパルタ授業で逆に興味がわき、今は英語を英語で理解する勉強を結構楽しんでいます。

 夢はあの有名な投資家、ウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)。その第一歩として、この課外活動に参加しました。投資先の企業選定にあたっては収益性など表面的な数字だけでなく、顧客も従業員もみんながハッピーになれる会社かどうか、そんな視点で考えています。

N.Sさん(社会情報学部1年)

 経済学を本当に理解するにはやはり数学の知識が不可欠と聞いて、この学部に。文系だったので、毎日のように数学の先生を質問攻めにあわせています。でもおかげでなにごとも理詰めで考えていく習慣まで身についてきたみたいです。

 勉強会は私が第一号。人の相談にのるのが好きなので、経済の知識も生かせるFPに興味を持っていたところ、清水先生に誘われました。1月の3級受験に向けて勉強中ですが、新しい科目にとりかかるたびに難しくなっていく気がして(笑)。将来はもちろん、FPを目指します。