抗生物質は、感染症を起こす細菌を壊したり増殖を抑えたりする薬です。
でも、不適切な使い方を続けていると、菌に耐性ができて薬が効かなくなることも。
これは「AMR(薬剤耐性)」と呼ばれ、世界で大きな問題になっています。
将来、自分や家族が危険な感染症にかかったとき、もし抗生物質が効かなかったら……。
その対策や予防について、丸石製薬の感染対策コンシェルジュがAMR問題に詳しい大曲貴夫先生に聞きました。

感染症に使える薬がなくなる「AMR問題」

国立国際医療研究センター
AMR臨床リファレンスセンター センター長

大曲貴夫先生
佐賀大学医学部医学科卒業。専門分野は感染症診療一般、医療関連感染症対策、感染症危機管理。2017年より国立国際医療研究センター病院副院長、総合感染症科科長。

後藤
「AMR(薬剤耐性)」とはどんなものなのでしょうか。
大曲
感染症は細菌などの微生物が起こす病気で、治療では一般的に抗生物質が使われます。この抗生物質が効かなくなる問題を「AMR」と言います。もし、このAMRを持った菌、つまり薬に耐性のある菌が増え続けていったら、将来的には感染症に使える薬がなくなるかもしれず、世界各国で大きな問題になっています。
後藤
感染症に使われる薬は「抗菌薬」とも言われますね。抗生物質との違いを教えてください。
大曲
抗菌薬は菌に効く薬のことです。抗生物質は菌をはじめ微生物一般に効く薬を指し、専門用語では「抗微生物薬」と言います。ただ、これらは医学上の厳密な区分なので、私のように両方をひとまとめにして「抗生物質」と呼ぶ医師も多いと思います。
後藤
抗生物質を正しく使わなかった場合、どんなリスクが考えられますか?
大曲
抗生物質に耐性のある菌が増え、引いては薬の効かない感染症が増えてしまいます。危険な感染症の治療や、高度医療に必要な感染症予防も行えなくなる可能性があります。
和田
大きな病気にかかったとき、もし使える薬がなかったら大変ですね。こうしたAMRの問題は、暮らしにどんな影響を与えるのでしょうか。
大曲
身近な問題では、耐性を持った菌による感染症の拡大が考えられます。感染症は人から人へうつるものですから、大勢の人が集まる場ではよりリスクが高くなります。また、お母さんがこうした菌に感染していると、お腹にいる赤ちゃんも同じ菌を持って生まれてくる可能性があります。

抗生物質をむやみに使わないよう心がけて

和田
耐性を持った菌には、誰でも感染する可能性がありますか?
大曲
耐性を持った菌を含め、菌や微生物に感染するかどうかはその人の免疫の強さによって違ってきます。健康な人は感染しにくく、また感染しても発症しにくいのですが、病気やストレス、加齢などで免疫が弱まっている人は感染・発症するリスクが高いとされています。
和田
日本のような高齢社会では、感染リスクが高い人も少なくありませんね。家庭をはじめ病院、高齢者施設などでも、一人ひとりがAMRの問題を考えていく必要がありそうです。
奥西
「耐性を持った菌が原因で治療できない」などという事態は起こってほしくありません。こうしたAMRの問題を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。
大曲
皆さんに、「不必要な抗生物質を使わない」という選択を積極的にしていただきたいと思います。一般的に、かぜなど感染症の多くは時間が経てば治るもので、必ずしも抗生物質が必要なわけではありません。不要なときは使わない、必要なときは指示された期間や量を守って飲む。この二つをぜひ心がけてください。
奥西
実際には、処方された抗生物質を全部飲み切らず、引き出しにしまっている人も多いのではないでしょうか。
大曲
それは避けていただきたいですね。前にもらった薬が次回も効くとは限りませんし、抗生物質にはアレルギーなどの副作用リスクもあります。この点をしっかり知っていただきたいと思います。

丸石製薬 感染対策コンシェルジュ
中村公昭さん(営業本部学術情報部)/ 奥西淳二さん(研究開発本部医薬研究部)/ 後藤潤子さん(営業本部マーケティング部)/ 八木俊和さん(営業本部学術情報部)/ 和田祐爾さん(営業本部学術情報部)

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