
富士登山の期間は通常、山開きの7月1日から閉山の8月末まで。しかし9月中旬まで営業している山小屋もあり、天候さえ安定していれば登山は可能だ。ちなみに昨年は7・8月の2カ月間で約30万人の登山者が富士山頂を目指した。
例年、7月下旬の梅雨明けから本格的登山シーズンが始まり、8月のお盆休みまでが最盛期となる。特にお盆の時期は混雑のピークを迎え、週末は各登山口でマイカー規制が行われるため、マイカー利用者は山麓の臨時駐車場からシャトルバスを利用して五合目へ上る。
富士山にいつ登るか。これは計画の第一歩だ。最盛期の週末は、道路や山小屋、登山道も混雑し、時間帯によっては渋滞することもある。できれば週末を一日ずらす、あるいは平日にプランニングできれば、山小屋も空いているし比較的ゆったりと登れるはずだ。
次にどこから登るか。初めての富士登山ならば、比較的行程の楽な「吉田ルート」「須走ルート」「富士宮ルート」がいい。「御殿場ルート」は登りの距離が長く、初めての人にはおすすめしない。
どのルートにするかは、自宅からの交通の利便性、同行メンバー、ご来光鑑賞、剣ヶ峰(富士山最高地点)登山など、行動予定を勘案して決めよう。なお、電車・バスを利用して行く場合は、登山口と下山口を変えることも可能だ。
プランが決定したら登山用具の準備にとりかかろう。シューズ、ザック、ウエアなど富士登山のための用具を今回初めて購入というのなら、登山・アウトドア専門店に出向いて早目に品定めを開始しよう。種類やサイズが豊富な6月頃までに揃えるのがベターだ。
グループで登る場合は山小屋を事前に予約をしておこう(最盛期や週末は予約なしでは泊まれないこともある)。また、各都市からの高速バス、新幹線などの交通機関も8月お盆休みから予約が埋まっていくため、日程が決まったら早めの予約が賢明だ。いずれもキャンセルや変更の場合の手続きも忘れずに。

登山の前には、『登山計画書』を提出しましょう。
これは、万が一遭難事故が起こってしまった場合、登山者を捜索するための重要な手がかりとなります。提出を怠ると救助遅れの原因にもなりかねませんので、必ず提出するようにしましょう。
●記載内容
登山者の氏名、年齢、連絡先、登山の予定・ルート、携行する装備・食糧の量、緊急連絡先などを記入します。
特に決まった様式はないので、記載内容をきちんと記入してあれば問題ありません。下記からダウンロードすることも可能です。
登山計画書をご覧いただくには、無料の【Adobe Reader】が必要です。
●提出先
入山口を管轄する警察署、登山地域の都道府県警察本部地域課へ郵送してください。または、山域の登山センターや案内所、登山口の登山届ポストへも提出できます。よくわからない場合は、地元の警察署、交番、駐在所でも受け付けてもらえます。
FAXやメールでの受付が可能な場合もありますので、詳しくはそれぞれの提出先へお問い合わせください。
登山計画書は何枚か作成し、家族や友人にも渡しておきましょう。
※登山計画書を提出したところには、必ず下山の報告をしましょう。

富士山の山頂(剣ヶ峰)の標高は3776m。吉田口ルート五合目は2300mだから標高差は実に1400mを超える。富士山が初めての本格的な登山という人にとり、この標高差は驚くべき数字に違いない。しかし富士山への登山道はよく整備されており、途中に休息できる山小屋がいくつもあるので、ゆっくり登れば決して難しい山ではない。
グループで登る場合は遅い人にペースを合わせるのが登山の基本。ただどうしても体力差があるためお互い歩調を合わせにくいこともある。そのような場合、先に登る人は各合目や待機しやすい場所で後続のメンバーの到着を待ち、十分休息を取ってから再び登り始めるよう。登山は競走ではない。相手の立場に立って仲間を労わる気持ちを忘れないように。
また、真夏の炎天下では水分補給も大切。富士山では水は貴重だが、だからといって我慢すると脱水症状を起こして筋肉痙攣を引き起こすことも。喉がカラカラになる前に水分はこまめに摂るようにしよう。汗とともにミネラルも放出されるため、水と一緒に塩分やサプリメントなども飲用するといい。
富士山で用心したいのは「山酔い」と呼ばれる高山病(=低酸素症)だ。高山病は標高が高くなり気圧が下がることで、体内に摂取できる酸素の量が低下することで起こる症状で、頭痛、食欲不振、めまい、睡眠障害などを発症する。発症の程度は人によって違うが、年齢や山の経験に関係ないので油断はできない。ちなみに富士山頂では下界の約70%しかないため、同等の酸素を吸うために呼吸は深く速くなるというわけだ。
この高山病を予防するにはゆっくりと登ること。ゆっくり登って体を気圧に慣らすことが最良の方法だ。そのため途中で山小屋に前泊することは、体力の回復だけでなく高山病を予防するうえでも大きな効果があるのだ。もし症状が重い場合は、登山を中止して早めに下山しよう。

山は晴れた気持ち良い日に登りたいもの。晴れていれば登山道から見下ろすパノラマも素晴らしいし、御来光も美しい。富士登山にあたっては登山一週間前になったら、当日の天候をおおよそ確認する作業に入ろう。
日本の天気は西からやってくる。これは偏西風によって西から低気圧、高気圧、前線が移動してくるためで、天気を予測するためには天気図が鍵となるのだが、一般の人に天気図は読めないはず。そこで、インターネットを活用しよう。
最近はネットから簡単に全国の天気が把握できるようになったが、富士山の天気は必ずしも周辺地域と同じというわけではない。下界が低い雨雲に覆われていても、五合目から上は快晴であることもあるし、好天日でも積乱雲が発生したり強風が吹く日もある。だから高気圧にすっぽりと覆れた快晴日でも、登ってみなければ分からないという不確定な部分もある。
そこで登山にあたっては、いつ雨や風にさらされてもよいように、雨具や防寒の準備はしっかりとしていくことが大切なのだ。8月の富士山でも、明け方の山頂では体感温度が0度以下になることも珍しくない。夏だからと言って富士山をなめてかかってはいけない。
富士山の天候を把握する方法として、おすすめなのが日本気象協会のホームページだ。おおむね一週間先までの天気、富士山頂の気温を確認することができる。また、最新の気象情報は甲府・静岡の地方気象台から音声ガイダンスで入手できる。(日本気象協会ホームページ)
富士登山を予定した日がどうも雨らしい。このような時はどうするか。まず明らかな悪天日は中止。雷雨の危険にさらされることもある。また、台風が近づいているときは絶対に登山はだめ。山頂は嵐のような強風となる。一方、翌日回復に向かう雨日なら好天に恵まれる可能性も高い。いずれにせよ現地に出向いた場合は、天候次第で臨機応変に登山を中止し下山する勇気も必要だ。

初めての山小屋泊は富士登山の楽しみのひとつ。旅館のような快適な設備はないので、時に窮屈な思いをするかもしれないが、山小屋はただ布団にもぐり込むだけの休息所ではない。宿で知り合った登山者と今日一日を語り合うのもいい。夕食後、テラスから眺める夕焼けや満天の星、下界の夜景も感動的だ。
山小屋のチェックインは通常午後3時から。6時前後から夕食が始まり、9時に消灯。2段ベッドか合部屋に布団を並べて寝るのが通常のスタイルで、個室はないと考えていい。翌朝は6時くらいから朝食が始まり、8時がチェックアウト。御来光を山頂でという登山者は、深夜にに出発して行く。
もちろん富士山は夜中でも登山者が登って来るため、午後9時以降に到着というケースでも対応してくれるが、深夜の到着はすでに睡眠を摂っている宿泊者の迷惑にならないようにしたい。山小屋は寝室も食堂もすべて登山者の共有スペース。食事や消燈の時間も決められているため、自分勝手な行動は慎まなければならない。なお、夏の富士山の山小屋では収容定員を超える登山者が泊まるのが日常である事を覚悟しておこう。ハイシーズンは電話・インターネットをつうじて早めに予約を入れておくことが賢明だ。
宿泊料金は宿によって若干異なるが、一泊二食付で大人7500円前後(週末は1000円増)が相場。宿泊形態は登山客のニーズに合わせ、素泊まり、一泊朝食付、一泊夕食付も可能で、料金も曜日によって変わる。なお、一般的に20日以内からキャンセル料がかかるが、台風などで登山が危険な場合は免除される。
初めて富士山に登る場合、山小屋に一泊し翌朝日の出前に出発し山頂で御来光を、というプランを立てる人が多いが、山頂にこだわらないのであれば、小屋の前からでも御来光は見られる。疲れているのなら朝食の時間までしっかり睡眠を摂って、万全の体調で山頂を目指した方がよいだろう。