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※掲載の肩書は取材当時のものです。

【cultura animi】「永遠の光(アルカディア)―― 辻邦生『夏の砦』を書いた頃」展

冨田 ゆり (学習院大学史料館 学芸員)

昭和50年(1975)夏 ドイツTEE内にて 辻 邦生

 『背教者ユリアヌス』や『春の戴冠』、『嵯峨野明月記』などの長篇歴史小説を得意とし、また絵画や音楽、映画や演劇に関する批評やエッセイなど幅広いジャンルの作品を多数残した辻邦生(1925-1999)が急逝して18年になります。

 小説家としての印象が強い辻ですが、教師として昭和31年(1956)から35年間、教鞭を執り続けたことをご存知でしょうか?

 小説家として数々の作品を世の中に送り出す一方、学習院大学でフランス文学科教師という職業に魅力を見出した辻は、学生と意見を交換し語り合うことをモットーとしました。辻の講義は他学科の学生にも人気があったと言います。

「夏の砦」第一稿から第三稿(決定稿)

 明治42年(1909)に建てられた学習院大学史料館(国登録有形文化財:旧制学習院時代の図書館)は、辻のお気に入りの場所のひとつでした。青春時代を送った旧制松本高等学校とよく似た雰囲気を持っていたからかもしれません。

 当館では、辻から寄贈された直筆資料や書簡、写真など約4万点の資料を所蔵し、毎年展覧会や講演会などを開催しています。

 本年は、「永遠の光(アルカディア)―― 辻邦生『夏の砦』を書いた頃」と題し、辻が北八ヶ岳の稲子村で過ごした〈アルカディアの夏〉に苦しくも「幸福な狂気の状態」で書きためた初期代表作『夏の砦』を紹介します。

坂本一亀

 本作は、河出書房社の名編集長 坂本一亀(1921~2002年、作曲家坂本龍一の父)にダメ出しされて、三年半かけて書き上げられました。膨大な数の原稿からは、編集者と小説家が真剣勝負で対峙し作品を作りあげていく、その緊張感がひしひしと伝ってきます。

 また、本展示では、自筆原稿、創作メモ、日記、愛用品のほか、作品のモデルとなった妻・佐保子の一家(後藤家)ゆかりの資料なども初出品いたします。

『夏の砦』刊本

●「永遠の光(アルカディア)―― 辻邦生『夏の砦』を書いた頃」展
会  期:2017年7月18日(水)- 8月11日(金・祝)
    :10時~17時 *閉室:日曜日(7月30日は開室)
会  場:学習院大学史料館(北別館)内 *入場無料

●関連イベント
①講演会 「辻邦生の出発―『夏の砦』」
昭和32年(1957)のフランス留学時代からの友人 加賀乙彦氏(小説家 精神科医)に、辻作品の魅力と交流を語っていただきます。
日  時:2017年7月22日(土)
    :14時~15時30分  ※入場無料 事前申込不要
講  師:加賀乙彦氏(小説家・精神科医/軽井沢高原文庫館長・文京区立森鴎外記念館名誉館長)
会  場:学習院創立百周年記念会館

②朗読 「声でつむぐ辻文学」
辻邦生の命日を偲び、高校放送局員による朗読会を開催いたします。
日  時:2017年7月28日(金)
     2回上演 各回30名 先着順30名
会  場:学習院大学史料館(北別館)内 ※入場無料 事前申込不要

[2017.7.18]
プロフィール

冨田 ゆり (学習院大学史料館 学芸員)

冨田 ゆり (学習院大学史料館 学芸員)
学習院大学文学部史学科卒業。学習院大学史料館学芸員として文学関係資料と学習院の建物の調査研究を行なっている。

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