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※掲載の肩書は取材当時のものです。

【cultura animi】「意識して歩いてみる」健康のための歩き方

羽田 雄一 (学習院大学 スポーツ・健康科学センター 教授)

 今夏、ロンドンで世界陸上競技選手権大会が開催されました。その男子50㎞競歩において、日本勢は荒井広宙選手が銀メダル、小林快選手が銅メダルを獲得し、丸尾知司選手も5位に入賞するなど、過去最高の成績を収めました。競歩競技は今や日本のお家芸となり、今後の更なる活躍が期待できる種目といえるでしょう。

 さてこの競歩競技ですが、その名の通り決められた距離をいかに速く「歩く」ことができるかを競う競技です。競歩は「両足が同時にグラウンドから離れることなく歩く」ことと定義されていて(※1)、これに反する(両足が地面から離れる)と「走っている」とみなされ、反則となります。競歩選手はこのことを頭に入れながら、速く、そして効率よく進むことができる歩行動作、つまり「歩き方」を追求しているのです。

 ところで皆さんは「歩き方」について、普段どれだけ意識されているでしょうか?競歩選手ほどではないにしろ、フォームを気にしながら歩いているという人は、あまり多くないのではないでしょうか。

 歩行は多くの人が、毎日の生活の中で必ずと言っていいほど行う動作です。毎日行うことだからこそ、歩き方のバランスが悪いと身体に負荷がかかり続け、最終的には膝や腰を痛めてしまう原因となります。歩行をただの移動手段としてだけではなく、健康の保持増進に活かすためにどのような歩き方が良いのか、これから見ていきたいと思います。

図1

 まずは立つ姿勢から見てみましょう。意識するのは骨盤です。図1(※2)の左側のように骨盤が後傾してしまうと背筋が曲がった状態となってしまいます。骨盤を前傾させることで背筋がピンと伸び、見た目にもきれいな姿勢となります。また、これにより歩行の際、進行方向への重心移動がよりスムーズに行えるようになります。次に意識する点は腕振りです。歩行動作では脚ばかりに意識が向きがちですが、腕振りも前方への推進力を獲得するためにとても重要な要因となります。腕全体を振り子のように、肩からしっかり動かすように振ってみましょう。

 そして最後に、接地から重心移動にかけてです。前方に振り出した脚は、踵から足裏全体~拇指球(親指の付け根付近)の順で接地しましょう。これにより、無理なく地面へと力を伝えることができ、身体を前方へスムーズに移動させることができます。また、接地局面の中盤、体幹部分が接地している脚の真上にきたときに、頭から足までが一直線になるよう意識してみましょう(図2)。この状態が作れていると、重心移動がスムーズに行われ、効率よく歩行動作が行えているといえます。ポイントとしては、接地した脚に素早く身体を乗り込ませることです。接地脚の踵から足裏全体への動きを、淀みなく流れるように行ってみてください。

図2

 以上のようなポイントを意識して実際に歩いてみると、最初のうちは慣れないかもしれませんが、繰り返すうちにこれまでよりも前方に無理なく進む感覚がつかめてくると思います。身体にかかる負担も少なくなり、より長い時間歩き続けることができるようになるはずです。その結果、身体活動量(※3)も高まり、健康の保持増進につながることになると思います。

 もうすぐ秋。身体を動かすには最も適した季節となります。少しずつでも、歩く機会を増やしてみてはいかがでしょうか。

※1…競歩にはもう1つ「前脚は接地の瞬間から垂直の位置になるまで、まっすぐに伸びていなければならない」という定義がある。
※2…金哲彦『「体幹」ランニング』、講談社、2007より一部改変
※3…身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての活動を指す。これには、日常生活における労働、家事、通勤・通学のことを指す「生活活動」や、体力の維持・向上を目的とし、計画的・継続的に実施される「運動」などが含まれる。

[2017.9.25]
プロフィール

羽田 雄一 (学習院大学 スポーツ・健康科学センター 教授)

羽田 雄一 (学習院大学 スポーツ・健康科学センター 教授)
2005年、筑波大学大学院博士課程単位取得退学。体育学修士。同年4月より学習院大学スポーツ・健康科学センター着任。助手、講師、准教授を経て2016年10月より教授。専門種目は陸上競技短距離(400m)。2017年より公益社団法人全国大学体育連合常務理事。

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