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※掲載の肩書は取材当時のものです。

【日本の今】 部活動と教員の働き方改革

長沼 豊 (学習院大学 文学部教育学科 教授)

 2014年発表のOECDの国際教員指導環境調査(TALIS)によると、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は参加国最長(日本53.9時間、参加国平均38.3時間)で、このうち教員が授業の指導に使ったと回答した時間は参加国平均と同程度である一方、課外活動の指導時間が特に長い(日本7.7時間、参加国平均2.1時間)という結果が出た。

 また2017年4月に文部科学省が発表した「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」では、平日1日当たりの中学校教員の勤務時間は11時間32分、これは10年前と比較して32分増加し、土日は3時間22分で10年前より1時間49分長く、倍増していることがわかった(あくまでも平均値)。1週間の総勤務時間で見ると週60時間以上勤務している中学校教員は57.6%、これは6割近い教員が過労死ラインを超えて勤務していることを意味している。この要因の第一は部活動の指導である。実際、筆者が関与している「部活問題対策プロジェクト」には次のような声も寄せられているほどである。

「初任で中学教員をしています。野球部顧問です。毎日ある朝練習や放課後の午後練習などが本来の業務の圧迫となり平日では、学校から帰宅するのは午後11時を過ぎます。毎日15時間労働です。また、毎週末の土日は一日中部活に拘束され、休養がとれないまま月曜日を迎え、今にも倒れそうです。日本にある学校の部活動の体制を統一して変えていただくことを希望します。助けてください。明日にも倒れそうです。」

 ところが、部活動というのは学習指導要領によれば、学校教育の一環という位置づけではあるものの教育課程外の活動、つまりオプションなのである。各学校で実施するかどうかは自由であり、教員の全員顧問制や生徒の全員加入制は本来の姿ではないのである。ところが実態はどうかと言えば、2016年12月のスポーツ庁の調査では、部活動の顧問を原則全教員が務めることにしている学校が87.5%、希望者が務めることにしている学校はわずか5.3%だった。

 異常である。日本の学校だから当然と思うかもしれない。しかし、この今まで当たり前だと思ってきたことに疑いの目を向けてみると、新しい世界が開けて見える。詳細は拙著『部活動の不思議を語り合おう』(ひつじ書房、2017年8月出版)に詳しいが、改善策も考えていかなければならない。例として、部活動の顧問就任を選択制にすること、必ず休養日を設けること、外部指導員や企業等の助力を得て活動を行うこと、教員の所定の退勤時刻以降は地域が担うこと、小学校のクラブ活動で見られる児童による主体的な参画を参考にすることなどを拙著では述べている。

 2016年は部活動改革元年だった。2017年になって教員の働き方改革の議論も部活動改革と連動して活発になってきており、文部科学省の中央教育審議会やスポーツ庁でも解決策の検討が始まっている。そのような状況で、筆者は設立発起人代表となって日本部活動学会を立ち上げる準備をしており、今後も理論と実践の往還を重視した部活動のあり方の検討・研究を進めるつもりである。

[2017.11.13]
プロフィール

長沼 豊 (学習院大学 国際社会科学部)

長沼 豊 (学習院大学 文学部教育学科 教授)
学習院大学文学部教育学科教授。教育学科主任。
学習院中等科教諭を経て1999年4月から学習院大学教職課程助教授。その後准教授・教授を経て2013年4月から教育学科教授。教育学科立ち上げにかかわる。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。部活動、特別活動、ボランティア学習、シティズンシップ教育を中心に研究を進める。

日本特別活動学会会長、日本部活動学会設立発起人代表、部活問題対策プロジェクト顧問、日本ボランティア学習協会理事、日本シティズンシップ教育フォーラム監事などを務める。

著書は『部活動の不思議を語り合おう』(ひつじ書房、単著)、『改訂第2版 特別活動概論』(久美出版、編著)、『社会を変える教育 Citizenship Education -英国のシティズンシップ教育とクリック・レポートから-』(キーステージ21、編著)、『実践に役立つボランティア学習の基礎理論』(大学図書出版、単著)、『学校ボランティアコーディネーション』(筒井書房、編著)、『新しいボランティア学習の創造』(ミネルヴァ書房、単著)、『市民教育とは何か -ボランティア学習がひらく-』(ひつじ書房、単著)、『親子ではじめるボランティア』(金子書房、編著)など多数。

全国各地で講演やワークショップを行う。趣味は水泳、鎌倉歩き、特撮番組。特技は姓名占い。似ているといわれる有名人は多数。

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