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※掲載の肩書は取材当時のものです。

【世界の今】 中国共産党大会を終えて これからの中国経済はどうなるのか?

趙 萌 (学習院大学国際社会科学部 准教授)

 中国共産党第19回全国代表大会(第19回党大会)が2017年10月18日から24日まで北京で開催され、国際社会の注目を集めた。中国は世界第2位の経済力を持ち、「一帯一路」構想の提唱やアジアインフラ投資銀行の設立などによって国際影響力をますます強めている。中国共産党の全国党大会は5年ごとに開催され、党の政策方針の決議や中央委員会のメンバーの選挙などを行い、今後の中国政府の政策及び中国経済の発展に重要な影響を与える。

 第19回党大会では高い経済成長率を今後も追求し、持続可能な経済・社会の発展に主眼を置く中国共産党の姿勢がより鮮明になった。具体的には、教育格差や貧困問題の早急な解決、全ライフサイクルをカバーするヘルスケアサービスの構築、グリーン生産・消費の促進、法に基づく国家管理の推進、腐敗撲滅キャンペーンの継続等が主な方針となることが、習近平氏によって大会初日に言明された。経済面では、市場の統一と公平な競争を妨げる規定や慣行を廃止しながら、貿易と投資の自由度と利便性を高めることで、健全な市場経済を目指すことが示された。

 従来、中国の経済成長は資本投資と輸出にけん引されてきた。しかし、非効率な地方政府主導の投資による過剰生産問題や、沿岸地域の賃金上昇による輸出の伸び悩みなどにより、新たな経済成長モデルへの移行が必要になっている。そこで中国共産党は国内の消費需要と産業構造に目を付けた。まず、家計消費が国内総生産(GDP)に占める割合は、中国では従来投資重視で非常に低く、2010年時点では中国の家計消費はGDPの35%しか占めていなかったが、経済力の近い日本は59%、アメリカは65%だった(データ出典:CEIC)。しかし、近年の中間所得階層の人口増加に伴って、特に高品質の商品とサービスを求める国内消費が上昇しており、経済成長の新しい原動力になる可能性がある。また、産業構造を転換し、生産性を高めていく方針は第19回党大会でこれまでと同様に重ねて強調された。過剰生産問題を抱える産業や環境に悪影響を与える産業を減らす一方、高い付加価値を創造できる産業を発展させる戦略である。

 これらの戦略は、国内の消費者需要を満たしながら、産業の国際競争力を高め、持続的な経済成長につながる可能性がある。中国の経済成長は減速しつつあり、地方政府の債務の拡大や人口の高齢化などの問題も顕在化する中で、どのように経済戦略の転換を成し遂げるのかが今後の課題である。 そこで、今は中国で盛んになっている科学技術イノベーションの役割が期待されている。消費者向けの新商品開発や企業の新技術開発などを通して着実に産業をアップグレードするには、労働者の技術と教育(いわゆる人的資本)を一層向上する必要がある。

[2017.12.04]
プロフィール

趙 萌 (学習院大学 国際社会科学部)

趙 萌 (学習院大学国際社会科学部 准教授)
2002年中国武漢大学経済学部 卒業。2005年世界銀行・人的資本開発部 コンサルタント。2007年ミネソタ人口問題研究所 研究助手。2008年国際食糧政策研究所 研究助手。2009年米国マサチューセッツ・リベラルアーツ大学経済学部 非常勤講師。2010年米国ウィリアムズ大学経済学部非常勤講師。2010年米国ミネソタ大学大学院応用経済学専攻博士課程 修了(応用経済学博士号取得)。2010年早稲田大学高等研究所 助教。2013年東京大学経済学研究科 助教。2016年学習院大学国際社会科学部 准教授。
専門領域は中国経済 医療経済学 教育経済学 開発経済学 応用経済学。

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