Data157 長嶋の大記録も消した「幻の本塁打」

 長嶋茂雄の本塁打は、本来なら生涯444本でなく445本だった。

 新人の1958年9月19日の広島戦で左翼本塁打を放ちながら一塁ベースを踏まずに一周したため、取り消されたのが1本あるためだ。

 2回に広島は大和田明が本塁打、これに対し巨人は3回表、長嶋が二塁打を放って同点にした。

 投手は巨人が安原達佳、広島が鵜狩道夫(のち好応、道旺と改名)。

 1-1と同点の5回、巨人は岩本尭が三振、与那嶺要が遊ゴロに倒れた2死後、第二打席も安打と当たっている長嶋が、左翼スタンドぎりぎりに入る勝ち越しの本塁打。

 と、思った瞬間、長嶋は一塁を空過していた。よく「踏み忘れた」というが、それは間違いで「空過した」「踏み越した」というのが正しい。忘れようとして忘れたのではない。うっかり空過してしまったわけだ。

 長嶋は「あのときは左中間ぎりぎりの当たり、三塁打になるな、と直感した。自分自身、三塁打が大好きなので左翼を見ながら走った。踏んでいないとすれば、そのとき、うっかり踏み越してしまったのだろう」と、首を傾げながら述懐する。今でも審判員の判定に不服があるようだ。試合は4-2で広島の勝利。

 長嶋は翌日の阪神戦で28号を打ち直したが、終わってみれば打率.305、29本塁打、37個の盗塁も達成しており、この幻の1本塁打のおかげで、日米合わせて5人(当時)、しかも新人では初めての「3割、30本、30盗塁」の記録を惜しくも逃がしてしまった。

 記録は広島の一塁手、藤井弘のアピールで新球が球審から投手の鵜狩に渡り、再び一塁手がベースを踏んでアウトとしたため、投ゴロと認定され、安打にもならず得点は取り消されてしまった。塁を空過して本塁打を取り消されたケースは初めてで、81年の大洋戦で広島のA・ガードナーが本塁ベースを空過、取り消された2本があるだけだ。




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