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第61回日本糖尿病学会年次学術集会 開催特別対談
糖尿病と食
和食の価値を見直す

 「第61回日本糖尿病学会年次学術集会」は、会長の宇都宮一典氏と日本料理店「分とく山」総料理長の野﨑洋光氏が登壇する市民公開講座「糖尿病と食―和食からみるサイエンスとアート」を5月26日(土)に開催する。そのねらいを語る特別対談を「分とく山」(東京都港区)で行った。

和食の主役はおいしいご飯

宇都宮 わが国の糖尿病患者数は、予備軍も含めると約2千万人。その増加の背景には、生活習慣の多様化、特に日本人の食の変化が深く関わっており、これを「和食離れ」に象徴される現象と考えています。

野﨑 「和食離れ」はつまり「ご飯離れ」ともいえます。和食の代表的な献立として知られる一汁三菜は、ご飯に加えて汁物一品とおかず三品という組み合わせ。長寿食として世界から注目されている和食の基本は、ご飯なのです。それなのに、日本人の米の消費量はここ50年で半分程度にまで減っています。

宇都宮 日本人の栄養摂取状況をみると、炭水化物と総エネルギー摂取量は減ってきていますが、脂質は増加傾向です。和食は健康食とされてユネスコ無形文化遺産にもなりましたが、一方で日本人の食の変化の中に、糖尿病増加の原因がある。これには、ひとつの栄養素では説明できないさまざまな問題があり、食文化の在り方全体を見直す必要があると考えています。

野﨑 日本の米食文化は3千年にもわたり、ご飯は我々の健康に欠かせないもののはずです。江戸時代に入って砂糖やみりんが調味料として一般化すると、ご飯の味よりもはるかに濃い味のおかずが好まれるようになりました。味には、苦味、酸味、辛味、塩味、甘味の五味(ごみ)がありますが、そのほかに近年世界的にも認知されるようになったうま味や、逆に失われつつある淡味(たんみ)などもあります。淡味というのは、素材そのものの味。旬の素材の淡味とご飯の自然なうま味。このシンプルな味を楽しむのが本来の和食だと思います。

ゆとりのない食生活が、糖尿病の温床となる

第61回日本糖尿病学会年次学術集会 会長
東京慈恵会医科大学
糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授

宇都宮 一典(うつのみやかずのり)氏
日本糖尿病学会理事。糖尿病全般の診療、特に糖尿病性腎症を中心とする合併症の診療、食事療法の研究を専門とする。

宇都宮 糖尿病の患者さんを調べると、食べている食材の品目が極端に少ないことがあります。同じような食品ばかりを食べているのです。また、「これさえ食べればいい」という安易なダイエットの流行も、これに拍車をかけています。本来の和食は、使う食材の豊富さも魅力のひとつですね。

野﨑 自然豊かな日本は、食材の宝庫。近くの山や里、川や海でさまざまな食材を手に入れ、新鮮なまま味わうことができました。現在では、物流の発達により都会のスーパーマーケットでも、新鮮な食材を買えるようになりました。だからこそ、新鮮な食材をたくさん使って、もっと家で料理をしていただきたいです。

宇都宮 高度経済成長期以降、ファストフードが定着し、食事を早く安く済ませるようになりました。生活のゆとりがないために、食が犠牲にされてしまった。その弊害として、糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加をきたしたと言えます。

野﨑 豊かさが生んだ貧しさといえるでしょう。和食というと、料理店のプロがつくるものを連想されることが多いですが、家庭料理もまぎれもなく和食です。プロの料理技法を家庭で用いる必要はありません。手のかかる調理をしなくても、素材の味だけで、十分においしい食事がつくれることを、もっと多くの人に知っていただきたいのです。

五感で楽しむ豊かさが和食文化

日本料理店「分(わけ)とく山(やま)」総料理長
野﨑 洋光(のざきひろみつ)氏
東京グランドホテル(和食部)、八芳園を経て、1980年から「とく山」料理長に。1989年から現職。2004年アテネオリンピックでは、野球日本代表チームの総料理長を務める。

宇都宮 野﨑さんの料理は、味にはもちろん、食器や盛り付けの美しさにもこだわっておられます。目と舌で味わって、家族や友人との会話の中で、ゆっくり食事を楽しむという和食本来の文化が、現在の日本人の食卓から失われているように感じます。

野﨑 季節を表す絵が描かれた器に、自然の葉っぱと一緒に料理を盛り付けたり、同じ鯛でも〝桜鯛〟と呼んだり〝紅葉鯛〟と呼んだり、いかに四季を取り入れて楽しむか、遊びを取り入れるかも和食ならではの醍醐(だいご)味です。和食にもっと興味を持つこと、ひいては食べることを楽しむこと、それが年をとっても病気にならない体をつくることにつながるのではないでしょうか。

宇都宮 5月26日(土)の市民公開講座では、和食を通して日本人の食のあり方を見直し、糖尿病の予防・治療のための食事について、考えてみたいと思います。

第61回日本糖尿病学会年次学術集会「市民公開講座」
「糖尿病と食―和食からみるサイエンスとアート」【参加費 無料(事前登録)】

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