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健考カルテ最新の医療や健康管理の秘訣などについて専門家がわかりやすく解説します。

生活習慣が影響する高血圧 将来のリスクを知って早めの対策を


大分大学医学部
内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 教授
柴田 洋孝(しばた・ひろたか)先生

 健診などで高血圧を指摘されても自覚症状がないからと、そのままにしていませんか? 治療を開始しても中断してしまう人も多いようです。長年、高血圧の治療に取り組む大分大学医学部内分泌代謝・膠原病(こうげんびょう)・腎臓内科学講座教授の柴田洋孝先生は「高血圧を放置すると、将来的には心筋梗塞や脳梗塞などのリスクにつながります。早めに治療に取り組んで、健康寿命を延ばしましょう」と呼びかけます。

Q高血圧は治療すれば治りますか?
A治療で完治するタイプもあります

 高血圧には遺伝や生活習慣の影響が考えられるものの、原因がはっきりしない本態性高血圧と、原因が特定できる二次性高血圧の2つのタイプがあります。前者が約9割を占め、通常は長期間の治療が必要です。後者は1割程度ですが、治療すれば完治する可能性があります。年齢が若いのに血圧が非常に高い、心筋梗塞を発症した、降圧薬を3種類以上服用し続けているのに血圧が下がらない、などの場合は二次性高血圧の可能性を考えて検査を受けたほうがいいでしょう。

Q二次性高血圧の原因には、どんな病気がありますか?
Aホルモン過剰が原因の場合も

 最近注目されているのが原発性アルドステロン症という病気です。副腎に良性の腺腫ができてアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されることでおこります。アルドステロンには体内の塩分が過剰にならないよう調整する働きがありますが、この病気では調整機能が働かなくなり、塩分摂取に応じてすぐに血圧が高くなってしまいます。

 高血圧の薬にアルドステロンを抑える薬を併用したり、副腎にできた腺腫を手術で切除すると、長年治療しても変わらなかった血圧が下がることが多いです。血圧の数値が同じでも、原発性アルドステロン症があると、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが3~5倍高いといわれます。血液検査でアルドステロンとレニンの2種類のホルモンの値を測定すると、この病気の可能性がわかります。

Q生活習慣と高血圧は関係がありますか?
A最も大切なのは減塩

 塩分のとりすぎはどちらのタイプの高血圧にも大きく影響します。血圧を適正範囲内に保つために日本高血圧学会が推奨する1日の塩分摂取量は6グラム未満ですが、日本人は平均約10グラムと非常に多いことが問題となっています。また、肥満の人は食べる量が多く、加工食品や外食で味の濃いものを多くとる傾向があるため、塩分の摂取量も増えてしまいます。塩分をたくさん摂ると、のどが渇いて水分をとるようになります。すると、体内の血液の量が増えて心臓が血液を送り出す力が増え、血管にかかる圧力、血圧が高くなってしまうのです。

Q減塩も減量もなかなか続きません。効果的な方法はありますか?
A数値でわかると実行しやすい

 生活習慣を改善するのは大変ですが、結果を数値化してわかるようにすると効果が現れやすくなります。定期的に尿検査で減塩ができているかどうかチェックして、数値に変化がない場合は、食べた物の写真からその原因をつきとめるなどの対策もできるでしょう。

 仕事で夜は外食になりがちな人は、自分で調節できる朝と昼は手作りのお弁当で減塩するなどメリハリをつけましょう。

 肥満対策では1日1回時間を決めて体重計に乗る習慣をもつことをおすすめしています。体重が増えたとき、「食べすぎたかな」と自分で考え、食欲に不思議なブレーキがかかるようになってきます。

 たとえば3カ月に一度、外来診察のときにしか測定しないとなると、あっという間に5キログラムくらい増えてしまうことはよくあります。5キログラムの体重を減らすのは大変ですが、1日で増えた分を減らすだけなら減量もそれほど大変ではないのではないでしょうか。行動を変えるためには、日々の生活習慣で何がいけなかったのか、自分で気づくことが大切です。

Doctor's Advice

「自覚症状がなく、元気なうちに高血圧のコントロールをしておきましょう。
早い段階で治療を開始し、生活習慣の改善に取り組むことで、将来も健康でいられる可能性が高くなります」

 高血圧の治療の目標は生涯を通じて心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患を発症させないことです。高血圧はこれらの病気の最初の根っこの部分にあたるので、早めに対処することが大切です。

 ところが、血圧が高くても皆さんとてもお元気で何も困ったことはないとおっしゃいます。確かに自覚症状がない病気は、なかなか治療継続が難しいのもよくわかります。

 しかし、年齢が高くなるにつれ、動脈硬化が進み、脂質異常症、肥満、糖尿病などの合併症が増えてくると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが一段と高くなってきます。合併症が多くなると血圧を下げただけで心疾患の発症を抑えることは難しくなってきます。

 血糖値も正常、脂質異常もないけれど血圧だけが高いという結果が出たら、その段階で早めに血圧をコントロールしましょう。いまは元気だから治療しなくてよいのではなく、元気なうちだからこそ、治療するチャンスと考えてほしいと思います。何もせずに放置すれば、脳梗塞、心筋梗塞にむかって着実に進んでいってしまいます。自分がいまどの位置にいるのかを知って、早めに対策をとりましょう。何も困っていない段階でアクションを起こせば、十分に引き返すことができるのです。

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