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健考カルテ最新の医療や健康管理の秘訣などについて専門家がわかりやすく解説します。

心臓がだんだん悪くなり、生命を縮める心不全 早めの治療で悪化を予防


九州大学大学院医学研究院
循環器内科学 教授
筒井 裕之(つつい・ひろゆき)先生

 心不全患者は増え続け、団塊の世代が80代を迎える2030年には130万人に達すると推計されています。心不全で命を落とさないためには、どうすればよいのでしょうか。心不全の治療に取り組む九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授の筒井裕之先生は「心不全の患者さんが増えている一方で、病気についての正しい知識をもっていない人が多いのが現状です。まずは病気について正しく理解して、予防に取り組んでいただくことが大切です」とアドバイスします。

Q心不全とはどんな病気ですか?
A心臓がだんだん悪くなり、生命を縮める

 心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。

 これは、昨年10月に日本循環器学会と日本心不全学会が共同で発表した心不全の定義です。あらためて定義を発表した背景には、日本の深刻な心不全患者の増加の実態があります。心不全を含む循環器疾患の死亡数は、がんに次ぐ第2位と大変多く、今後さらに急増することが予測されています。しかし、一般的には心不全について正しく理解していない人が多いのが現状です。「心不全とは心臓が止まりそうな状態」などと誤解している人が多いのですが、心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、だんだん悪くなっていく病気です。適切な治療を継続し、生活習慣を改善していけば、悪化は防げるということを、多くの人に知っていただきたいと思います。

Q心臓が悪くなる原因は?
A高血圧、心筋症など

 心不全の原因で代表的なのは、高血圧、糖尿病など生活習慣病が関連した心筋梗塞など血管の病気です。このほか心臓の筋肉の収縮が低下したり、心肥大が起こる心筋症、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)、僧帽弁閉鎖不全(そうぼうべんへいさふぜん)など心臓の弁に不具合が起きる弁膜症、脈が乱れる不整脈、先天性心疾患などがあげられます。これらの病気のコントロールがうまくいかなくなると、血液を全身に送り出すポンプ機能が十分に発揮できなくなり、心不全に至ります。

Qどんな場合に医療機関にかかるべきですか?
A血圧、脈、体重に注意

 心不全の患者さんは、原因となる心臓やその他の病気の治療のために医療機関を受診している人も多いのですが、自覚症状がないと、つい通院が遠のいてしまいがちです。一時的に症状がなくなったからといって、病気が治ったわけではありませんから、油断は禁物です。また、定期的に通院していても、次の通院までの間に心不全が悪化してしまう場合があります。次に示すような症状が出た場合には、がまんをして通院日を待たずに早めに通院先に連絡してください。

 息切れやむくみなどの症状に気づいたときのほか、血圧が高いとき、脈が乱れるとき、体重が2~3日で2キロ増えるなど急激に増えたときは、心不全が悪化している可能性があります。体重の急増は、体内に水分がたまったために起こります。早めに医療機関を受診しましょう。

Qどんな治療を行いますか?
A薬物療法とセルフケアが重要

 医療機関では原因となる病気に応じて、薬物療法を基本とした治療を行います。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬などを標準治療薬として、臓器うっ血がある場合は、利尿薬で調整します。心筋梗塞のリスクが高い場合、予防のために抗血栓薬も使用します。

 症状がよくなると心不全の原因になっている基礎疾患もよくなったと思って、薬をやめてしまう人も多いのですが、心不全が悪くなる原因で最も多いのが薬の中断です。いったん治療を開始したら、症状が落ち着いても自己判断で薬をやめないことが極めて重要です。

 薬物療法だけでなく、生活習慣の改善を中心としたセルフケアが不可欠です。食事は塩分を控え、水分を過剰に取りすぎないよう注意します。また、主治医と相談して無理のない程度の運動習慣をもちましょう。1回30分程度のウォーキングなど軽い運動を週3回程度行うのが理想です。

Doctor's Advice

「心不全のおもな原因になる生活習慣病を予防し、心不全にならないようにすることが最も重要。日々の健康状態を記録して、客観的に把握することが第一歩になります」

 心不全はほとんどの方が、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病から進展していきます。まずは、これらの病気にならないよう、生活習慣の改善を行うことが大切です。生活習慣病にはいずれも自覚症状がないので、毎年の健康診断で異常がないかどうかチェックしておくことが必要です。すでに何らかの生活習慣病がある場合は、きちんと治療して、命を落とす心不全に進行しないようにしていただきたいと思います。

 心不全になってしまった患者さんも、きちんと治療を受けていただければ、悪化を防ぐことはできます。体調管理の第一歩として、日々の体重や血圧、脈拍を記録しておくと役に立ちます。心不全手帳などを活用するのもおすすめです。

 心不全と診断されたからといって、この世の終わりであるかのように落胆しないでほしいと思います。心不全は治療しなければ、命を縮めることがある病気ですが、予防可能な病気だということを理解してください。我々、医療従事者と一緒になって、病気にきちんと向き合い、前向きに治療に取り組んでいただけたらと思います。

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