パネルディスカッション・2

「私たちを取り巻くエネルギー技術革新」

パネリスト
浅岡 美恵氏 弁護士 気候ネットワーク代表
堀 ちえみ氏 タレント
佐古 猛氏 静岡大学工学部
副学部長
鈴木 嘉彦氏 山梨大学大学院医学工学総合研究部教授
コーディネーター
両角 光男氏 熊本大学工学部長

まずは脱温暖化

浅岡 美恵氏 弁護士 気候ネットワーク代表 「買い替え時が省エネ時」

両角 今なぜ、サステナブルな社会が求められるのか。

浅岡 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告では、現在の生態系を守るには世界の気温の上昇を(産業革命前の水準から)「2度以内」に抑える必要がある。2度は大きな限界点。猛暑だった今夏は平年より約1・7度高いだけだったが、数万人が熱中症で搬送された。

 冷房なしで生活していて熱中症にかかったというニュースを何度も聞いたが、家庭やオフィスがクーラーの温度設定を一斉に下げたら、室外機の熱風で気温はさらに上がる。うちはベランダに樹木を植えて、緑のカーテンにしている。そういう工夫を楽しみながら暮らしている。

堀 ちえみ氏 タレント 「暮らしに工夫楽しんで」

佐古 毎日、コンビニやスーパーから売れ残りの弁当、総菜が廃棄される。これらの生ゴミをプラスチックなどと一緒に「マジックウオーター」という高温の水の中で圧力鍋の原理を使って湯がくと、石炭に近い発熱量を持つ粉末燃料になる。多くの大学が生ゴミを資源化する技術の研究、開発を進めている。

鈴木 持続可能な社会を実現するためのキーワードは地球と地域だ。地域ごとに多様な暮らしがあり、環境、産業も異なる。そうした多様性に適応できる技術が必要だ。大学は脱温暖化につながる産業の創出についても研究している。弘前大では地中熱を利用し、福井大ではリチウムイオン電池を使ってバスを電動化し、新しい地域社会をつくろうとしている。

消費意識変えて

両角 環境教育についての考えを聞かせてほしい。

佐古 猛氏 静岡大学工学部副学部長 「生ゴミ資源化し有効に」

 子供たちは環境問題が自分たちの将来にかかわるものだと、危機感を抱いている。家族で登山した際、子供たちがカップ麺の食べ残しなどゴミが散乱しているのを見て悔しがり、頂上でゴミを拾い集めたこともある。

浅岡 この10年で子供たちの意識はすごく変わった。京都では保育園の多くで太陽光パネルを設置して、発電量が子供たちにも分かるように工夫している。家庭でも、家と発電所がつながっていることを実感できるメーターが、今に出てくる。消費者も住まいづくりや機器選びでCO2削減に貢献できる。

佐古 2008年にはゴミの20%が資源化された。学校給食センターで出た生ゴミをメタン発酵し、水素に変換してから燃料電池で発電して、その電気を生ゴミ処理に再利用する取り組みもある。低炭素化を実現する技術は身近にある。

鈴木 嘉彦氏 山梨大学大学院医学工学総合研究部教授 「地球の多様性に適応を」

鈴木 地域から信頼される社会技術の構築が必要だ。これは信州大の研究だが、用水路に水車を設置して発電する場合、技術力で効率的に作っても、水車がゴミを拾い上げれば産業廃棄物を出すことになってしまう。地域はメリットのあるものしか受け入れられない。そうした問題をどう解決するのか。社会技術の難しい点だ。

佐古 日本では(生ゴミなど)未利用のバイオマスが年間8500万トンも排出される。乾燥バイオマス1キロ・グラムの熱量は原油0・5リットルに相当する。腐りやすいやっかいなものだが、廃棄物とみるのか、資源としてとらえるのかで全く違ってくる。

両角 これからの工学に期待することは。

両角 光男氏 熊本大学工学部長

 工学部が人類の将来のために研究していることに感動した。多くの若者がそうした研究に携わってくれればと思う。一人ひとりの力は小さいかも知れないが、あきらめないで地球に優しい社会を作って行きたい。

浅岡 消費者がエネルギーや温暖化問題についてどう考えるべきか、自問しながら活動している。家庭の冷暖房などの機器は、買い替え時に効率のいいものにすべき。消費者が選択しやすく、いいものが普及する仕組みが必要だ。

鈴木 産業革命以来、化石燃料を掘り出して便利な製品を生産し、廃棄物を出してきた。その結果、温暖化が起きた。資源はやがて枯渇する。持続可能な社会を実現するためには、化石燃料に頼らず、再生可能な資源を利用する仕組みを作る必要がある。

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主催:
国立大学53工学系学部長会議、読売新聞社
後援:
文部科学省、科学技術振興機構