知っておきたい! 糖尿病の合併症、網膜症を防ぐには? 年に1回眼科を受信して網膜症検査を受けよう

 2017年9月に厚生労働省が公表した「平成28年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない人は約1000万人と推計されています。糖尿病は国民病とも称される身近に起こりうる疾患です。
 糖尿病がなぜ問題なのか? それは生命や人生を左右する重大な合併症を引き起こすからです。中でも網膜症は、長い間、成人後の失明原因の第1位となっていました。治療法が発達した今でも、糖尿病の人のおよそ4人に1人が網膜症の有病者と言われており、いまだ失明原因の上位です。

糖尿病の治療を受けているのに眼科で網膜症検査を受けていない

東京大学大学院医学系研究科 小林 廉毅(こばやし・やすき)教授

 糖尿病治療の指針である日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2016』では、少なくとも年に1回、眼科で定期的に網膜症検査を受けることを推奨しています。しかし、検査を受けていない糖尿病患者が非常に多いのが現状です。
 東京大学大学院公衆衛生学分野の田中宏和(たなか・ひろかず) 氏らの研究グループは、定期的に医療機関で糖尿病の治療を受けている糖尿病患者でも、網膜症検査の実施率がわずか36%にとどまると報告しました。同教授の小林廉毅(こばやし・やすき) 氏は「網膜症検査を受けていない人は20~50歳代の働き盛りの男性に多いです※1。網膜症は、自覚症状が表れた時には既に重症化していることが問題。多忙とはいえ網膜症検査は欠かすべきではありません。糖尿病患者の眼科受診を促すためには、広くその必要性を周知することも重要」と言います。

網膜症などの合併症を起こす確率が予測可能に

新潟大学大学院血液・内分泌・代謝内科学 曽根 博仁(そね・ひろひと)教授

 自覚症状がほとんどなく、症状が出た段階ではすでにかなり重症化しているという網膜症。糖尿病の人に、どれくらいの確率で起きる可能性があるのでしょうか。新潟大学大学院血液・内分泌・代謝内科学教授の曽根博仁(そね・ひろひと)氏らは、日本人の糖尿病患者の大規模な臨床研究結果から、網膜症などの合併症の発生を予測できるツール「糖尿病合併症リスクエンジン(JJリスクエンジン)」を開発し、インターネット上で公開しています。性別、年齢、身長、体重、糖尿病を発症してからの期間、血糖コントロールの指標であるHbA1c、血圧、コレステロール値などを入力すれば、5~10年以内に網膜症の悪化などが生じる確率を算出できる仕組みです。「医療者向けのツールで、2型糖尿病と診断された中年以降の患者のみを対象としたものですが、主治医と相談しながら利用してください。糖尿病の治療は長く続けていくものなので、自分がどのくらいのリスクを抱えているのかを自覚する機会を持つのも意義があります。網膜症などの合併症は、予防と早期発見が重要であることも併せて知ってもらいたいです」(曽根氏)。

果物を適量取る人では網膜症の発症リスクが半減

 網膜症の予防には、生活習慣の改善も大切です。日本の1人当たりの果物の平均摂取量は、先進国中最低クラスで、欧米の約半分。曽根氏によると、糖尿病患者の中で果物を適量(1日250g程度:例えばバナナなら2本、ミカンなら3個、リンゴなら1個程度)食べていた人では、ほとんど食べていなかった人に比べて網膜症を発症するリスクが半減していたという研究結果※2も。「果物を過剰に食べれば血糖のコントロールに悪影響を及ぼす可能性があるので、たくさん食べれば食べるほどよいというわけではない点に注意してください」

網膜症は軽視しても怖がりすぎてもNG

 長期間続く糖尿病の治療は、医師とのパートナーシップがとても重要です。兵庫医科大学病院の難波光義(なんば・みつよし)病院長は「一口に糖尿病患者と言っても千差万別、ライフスタイルも違えば志向性も異なり、注意すべきところも違います」と指摘。「身近にいいかげんに治療を受けて生活習慣の改善をしなくても問題なく過ごしている“糖尿病の反面教師”がいる患者は、糖尿病を甘く見て合併症を引き起こしてしまいます。一方、かつては有効な治療法がなく、残念なことに失明した糖尿病の身内がいる患者では、網膜症への恐怖心が強く、とにかく血糖値を下げなければと無理をして、低血糖を起こし、血糖値の過度な変動によってむしろ網膜症を悪化させてしまいます。糖尿病は、軽視しても怖がりすぎても問題」。どのように血糖値をコントロールするのが一番か、医師と治療目標や方針を話し合ってきちんと理解することが大切なのです。

正しい知識と定期的な眼科受診が網膜症を防ぐ近道

兵庫医科大学病院 難波 光義(なんば・みつよし)病院長

 「薬をきちんと飲んでいるか、それとも飲み忘れたか、食事内容の変化など、正直に話してもらわないと、治療効果を確認できなくなってしまいます。また、仮にHbA1cなどの検査値が改善すると、日頃の治療による効果だとは考えず、サプリメントの使用など自己流の取り組みが効いたと捉えがち。あくまでも標準的な治療を続けることが大事で、治療を中断してむやみな血糖値の変動を起こしては、網膜症を防げなくなります」と難波氏は注意を促します。
 網膜症を防ぐためには、正しい知識を持って適切な治療を受けること、そして定期的な眼科受診が最も近道のよう。 「視力に問題が出て初めて糖尿病が見つかり、治療を始めるケースはいまだにあります。まずは眼科を受診して網膜症検査を受けること。幸い問題がなかったとしても、放っておくのは禁物。血糖コントロールが良好な人でも年1回、軽度の網膜症が見つかった人は3~6か月に1回と、定期的な検査の必要性を広く知ってもらいたいです」(難波氏)。

※1 東京大学大学院公衆衛生学分野の研究グループが、株式会社日本医療データセンターが保有するレセプトデータベースを用いて分析

※2 Tanaka S, et. al. Epidemiology 2013; 24: 204-211.

L.JP.MKT.OP.11.2017.1177
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