
2003カンヌ国際映画祭 〜中間報告
−「地味」覆す注目作 日本製アニメも評判−
◇ラース・フォン・トリアー監督「ドッグビル」、アンドレ・テシネ監督「ストレイド」ほか。
第五十六回カンヌ国際映画祭が、十四日から南仏カンヌで開かれている。十八世紀のフランスを舞台に、奔放な青年が活躍する歴史活劇「ファンファン・ラ・チューリップ」(ジェラール・クラブジック監督)で華やかに幕を開けた映画祭も、中盤にさしかかり、賞レースの行方もささやかれ始めた。後半には、コンペ部門に出品された日本映画二作品も正式上映される。(原田康久)
◆コンペ部門
最高賞のパルムドールを競うのは二十作品。開幕当初はジャーナリストの間から「例年に比べて地味」という声が聞かれたが、十九日にプレス用に上映されたラース・フォン・トリアー監督の「ドッグビル」が、その声をかき消した。
マフィアに追われる女性(ニコール・キッドマン)が、陸の孤島のような村にたどり着く。村人は彼女をかくまい、やがてそれが悲劇につながる……。体育館のような空間に線を引いただけで家と街を表すセットで、トリアー監督は人間の業と運命を描き出す。「これが映画と言えるのか」という論争を招くだろうが、問題作には違いない。
また、アンドレ・テシネ監督の「ストレイド」は、戦火を逃れてパリを脱出した若い母親と二人の子供、途中で知り合った少年との、戦争から隔絶された不思議な共同生活を描く。ガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」は、徹底したリアリズム描写で米国のハイスクール乱射事件を活写している。
別荘での殺人を、前々作「まぼろし」と似た雰囲気で描くフランソワ・オゾン監督のミステリアスな作品「スイミング・プール」も評価が高い。ラウル・ルイズ監督が描く「あの日」の狂気を推す声もある。
後半には、クリント・イーストウッド監督の作品や、日本からの「アカルイミライ」(黒沢清監督)、「沙羅双樹(しゃらそうじゅ)」(河瀬直美監督)などが上映される予定だ。賞の発表は二十五日。
◆監督週間
宮崎駿作品を筆頭に、今や世界が注目している日本製アニメ。カンヌでも、宮崎監督の「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」で作画監督を務めた高坂(こうさか)希太郎監督の「茄子(なす)/アンダルシアの夏」が、「監督週間」に出品されて話題になっている。
スペインの自転車レースに出場する弟と、弟の元恋人と結婚式を挙げる兄の一日を、「故郷」をテーマに描く。評判も上々で、高坂監督は「結果だけがすべてではないことを、自転車レースを通じて描きたかった。観客の反応が心配だったが、理解してもらえたと思う」と話していた。
また、フランスの人気テクノバンド「ダフトパンク」の音楽に合わせて、松本零士が監修した未来の物語「インターステラ5555」(竹之内和久監督)も特別上映された。
実写では、三池崇史監督の「牛頭(ごづ)」が、熱狂的に支持された。
◆審査員
コンペの審査委員長は、フランスのパトリス・シェロー監督。米国人女優のメグ・ライアンや、二〇〇〇年に「鬼が来た!」でグランプリに輝いた中国のチアン・ウェン監督らが審査員に名を連ねる。
「イラク戦争前後の米仏の関係は、審査にも影響するのか」といった質問が記者会見で出たが、シェロー委員長は「議論を尽くし、私たちも知り合うことが重要だ」と強調した。
(5月21日付読売新聞夕刊より転載)
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