菱木 貞夫(ひしき・さだお)氏
「染めQ」の微粒子吸着技術が環境に優しい新商品を生む
菱木 貞夫氏
株式会社テロソン コーポレーション代表
「人のやれないことをする」をスローガンに、コーティング剤分野で新技術開発を続けるテロソン コーポレーション。暮らしに役立つ革新的な商品の提供を目指す菱木貞夫代表に、今後の経営戦略を聞いた。(聞き手・読売新聞編集委員 近藤和行)
「何でもくっつく微粒子」を幅広い生活用品に応用

ベストセラーの「染めQ」シリーズ
――主力商品「染めQ」シリーズが好調ですが、商品の特長を教えて下さい。
「何でもくっつく」がポイントです。革靴、タイヤ、ジーンズから浴槽に至るまで、きれいに色が付く染料のほか、靴の消臭・防臭剤、防カビ剤など、商品ラインナップは広範囲に渡ります。
最先端のナノテクノロジーで、吸着する微粒子を極小化することに成功しました。微粒子は、物質に張り付いて強固な膜を作ります。その中に色素や防臭剤、防カビ剤などを入れるので、幅広い生活用品への応用が可能です。
――開発には時間と費用がかかったでしょう。
1972年に塗料会社を起こしました。当時のペイント業界は、大手企業による寡占状態で新たな参入の余地はありませんでした。ならば、他社のやらないことだけをやろうと研究を続けてきたのが功を奏したのでしょうか。2001年に、会社挙げての取り組みで「何でもくっつく微粒子」開発に成功しました。年商はまだ11億円ですが、この3年で倍になりました。
――起業家としては順調だったのですね。
実は大きな挫折をしています。開業後まもなく、下地塗料の開発に成功し、会社が軌道に乗ったのに気が緩んだのでしょう。80年代に不動産投資やレストラン経営、海外投資などに手を出し、バブル崩壊で無一文になってしまいました。それでも新会社で再出発するに当たり、前の会社から約30人が付いてきてくれました。これはうれしかった。その意味では恵まれていると思っています。
人にも環境にも優しい商品で大手メーカーに対抗

――日用品の分野では、競争相手に強敵の大手メーカーがいます。どうやって対抗したのですか。
日用品は、どうしても名の通ったメーカーが安心で、新規参入者には不利です。ホームセンターなどの棚にも置いてもらえません。そこで、わが社製品の特長である「健康」「環境」「衛生」を全面に出してアピールしてきました。
例えば、通常のカビ取り剤は、カビを一瞬にして"抹殺"しますが、一方で、その強力さゆえに毒性が問題になる場合があります。耐性菌を生む可能性もある。取り扱いには、マスクや手袋が不可欠です。これに対し、うちの製品はカビを殺すのではなく、カビの細胞壁・細胞膜だけを破壊します。そうすると、死滅に向かうカビ菌は危険信号を発し、周囲のカビ菌は退避してしまいます。このように、人にも環境にも優しい防カビ剤を密着させることでカビが寄りつかなくなるので、耐性菌を生む心配もありません。そんな工夫で毒性の問題をクリアしました。
技術と独創性で今後も革新的な商品を提供

新発売「家ん中どこでもなんでも除菌」
――若い人が多い会社ですね。経営方針を教えて下さい。
「染めQ」シリーズのヒットでここ数年、業務が増え人を増やしています。未だ100人足らずですが、平均年齢は約29歳です。経営方針では、徹底した「未来志向」を説いています。たとえ収益に結びついても持続性がないと意味がない。会社をつぶした経験からそう思うのです。例えば、生産量が増えると廃液を処理しきれず、垂れ流したりする企業がありますが、社会的にも環境的にも「収奪型」の企業では明日はないと思います。
――将来の目標を教えて下さい。
密着技術と抗菌効果の組み合わせで、今問題になっている病院の院内感染に対応できないかと研究を進めています。関心を示す海外企業があって、韓国企業と昨夏から取引が始まり、近くアメリカの量販店とも始まります。国内でも船舶や大手電機メーカーとの関係ができたので、ビジネスは最終消費者向けの商品に加え、多用なセグメントに広がり始めています。
また今秋には新社屋が完成し、供給能力も拡大します。独創性をフルに発揮し、多くの人が驚くような新商品を提供し続けられたらと考えています。
