第7回「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」コンテスト受賞作品

コンテスト受賞者作品発表

「おいしい記憶」を多くの人に伝え、食の幸せを共有できますように―― 読売新聞社と中央公論新社が主催する「第7回 あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」コンテスト(キッコーマン株式会社協賛、読売KODOMO新聞協力)では、笑顔や優しさ、活力などを与えてくれるエッセーと作文を募集しました。全国から3388点の作品が寄せられ、作家の山本一力さんをはじめ7人の審査員により、受賞作品が決定いたしました。多くの方とこの「おいしい記憶」が共有できますよう、ここにキッコーマン賞、読売新聞社賞、および優秀賞作品の全文を紹介いたします。ぜひお楽しみください。※応募作品は誤字・脱字も含めてオリジナルのまま掲載しております。
第7回

一般の部(エッセー)

キッコーマン賞
「ふたつのお弁当箱」
和田 佑美子さん(茨城県・34歳)
読売新聞社賞
「力うどんのチカラ」
加藤 パトリシアさん(千葉県・59歳)
優秀賞
「高野豆腐」
堀内 貴美子さん(大阪府・59歳)
「おばあちゃんの味の肉じゃが」
木谷 美穂さん(広島県・33歳)
「母の野菜ジュース」
衛藤 緒利恵さん(東京都・20歳)
「モツ焼き」
門田 弘さん(千葉県・61歳)
「父の味」
岩槻 淳さん(宮城県・60歳)
「祖母の味噌結び」
草野 恵美子さん(福島県・50歳)
「祖母のおにぎり」
大塚 りょう子さん(茨城県・34歳)
「イカとわたくし」
谷口 治子さん(東京都・49歳)
「祖母の味」
富岡 奏美さん(静岡県・16歳)
「寄り添うおいしさ」
阿久戸 嘉彦さん(埼玉県・54歳)

小学校低学年の部(作文)

キッコーマン賞
「2ピースのたび」
山本 千陽さん(秋田県・8歳)
優秀賞
「はじめてのみそ作り」
佐々木 真瑚さん(静岡県・9歳)
「まんまるつくね」
川上 真央さん(東京都・8歳)

小学校高学年の部(作文)

読売新聞社賞
「ハッピーカード」
瀬戸 俊介さん(埼玉県・10歳)
優秀賞
「思い出のちらし寿司」
金城 渚紗さん(岐阜県・12歳)
「さめていてそっと温かいおにぎり」
行田 有希さん(岐阜県・12歳)

※年齢は応募時

第7回
■一般の部(エッセー)キッコーマン賞「ふたつのお弁当箱」和田 佑美子さん(茨城県)

 高校生の時、私は毎日母にお弁当を作ってもらっていた。家族の中で一番早く起きて、家族の朝食と私のお弁当を毎日作るという事は、今思えば大変な作業であったに違いない。それを文句のひとつも言わず、毎日作り続けてくれた母には頭の下がる思いである。

 お弁当の中身は鮭や卵焼きなどが定番であるが、テレビ番組などでこの食材が健康にいいという情報を仕入れると、すぐさまその食材を使ったおかずが仲間入りし、次の健康にいいとされる食材がテレビ番組で紹介されるまで連日おかずの一員として加わるのであった。だから今何が健康にいいと言われているのかは、テレビ番組を見なくても母の作ったお弁当を見れば、大体察しがついた。

 毎日作っていても失敗することもあるようで、卵焼きの味が濃かったり、ご飯の水加減に失敗したりした時には、「今日の卵焼きはしょっぱいかも」とか「今日のご飯は固いかも」など私がお昼の時間になる頃を見計らって、私の携帯にそんなメールが送られてきたりもした。

 またけんかをした時には、お弁当のふたを開けるのに少し勇気が必要だった。そういう時には必ず私の苦手なものが入っていたからだ。しかし、そんな時の私も意地があるため「何が何でも食べてやる。食べられないなんて弱みを見せてたまるものか」の精神のもときれいに完食してみせるのだった。そのおかげで苦手なものはほとんど無くなり、今となっては母に感謝している。

 試験や体育祭などの特別な行事のある時には、私の大好物が総動員された。午前中の試験や競技の結果がうまくいかなくても、そのお弁当を食べると午後も頑張ろうと気分を一新する事が出来た。

 高校を卒業してから数年が経ち、ある時台所の片付けをしていると、私が高校生の時に使っていたお弁当箱と、色の違う同じ形のお弁当箱が出て来た。なぜ二つの色違いのお弁当箱があるのだろうと不思議に思い、母に聞いてみると、その二つのお弁当箱を懐かしそうに手に取り、

「実はね、あなたのお弁当を作る時、お母さんの分も時々一緒に作っていたの」

 なんと母は私のお弁当を作る時に、同じお弁当を自分用としても作っていたのだ。そして母はお昼時になるとそのお弁当を食べ、お弁当の出来映えについてメールしてきたのである。

 その話を聞いた時には母は面白い事をしていたんだなくらいにしか考えていなかったが今思えば母なりの娘との交流だったのかもしれない。当時帰りも遅く話す機会の少なかった私がどんな気持ちでお弁当を食べているのか。自分も同じお弁当を食べれば少しでも娘の気持ちが分かるのではないか。そんな母なりの気持ちがあったのかもしれない。

 今度は私がこのお弁当箱に二人分のお弁当を作ってみよう。母はどんな顔をするだろう。

[広告]企画・制作 読売新聞社広告局