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    『オリエント急行殺人事件』 ブルーレイ&DVD発売記念 スペシャルインタビュー
    何度でも見返したくなる極上のミステリー ― 宮本亜門

    • みやもと・あもん 1958年、東京都生まれ。日本を代表する舞台演出家。ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎など国内外で幅広く活躍中。10月に黒澤明監督の代表作の舞台化、ミュージカル「生きる」の演出を手掛ける。

     アガサ・クリスティーの名作小説を、オールスターキャストでスタイリッシュに映画化した『オリエント急行殺人事件』のブルーレイ&DVDが本日発売された。数々の舞台作品を手掛けてきた宮本亜門さんが演出家ならではの目線から本作の見どころを語る。

    細部にまでこだわった豪華で重厚な映像美

     アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』はミステリー史上最高の名作と言われる小説ですが、今回の新たな映画化は期待以上の出来栄えでした。映像美やストーリー展開のリズムはもちろん、画面に映るあらゆるものに徹底的にこだわり、舞台となる列車内の装飾、衣装、食器など、すべてが計算し尽くされている。オリエント急行の豪華さを重厚に表現していますね。

     これはハリウッド映画ですが、英国的な要素が入り交じったミステリーだと思いました。英国人は論理的な謎解きを好むんです。クリスティーの小説はまさしくそうで、明確に筋を通して殺人事件の犯人を解き明かし、最後に「なるほど、そう来たか!」と思わせる。まさに、英国流ミステリーの醍醐味(だいごみ)が味わえる良質な作品です。

     監督・主演のケネス・ブラナーは、英国では誰もが知る演劇人であり、16・17世紀のシェイクスピア劇や18世紀のオペラの映画化も手掛けています。彼は古典を尊重しつつ、その本質を現代的に描く術を知っている。今回もカメラワークなどを工夫し、演劇的な演出や新しい視点を盛り込んでいるから、原作を知る人もまったく飽きさせません。

    名優陣の華麗な競演に“騙される”楽しみ

     これは善と悪を単純に色分けできるミステリーではありません。名探偵ポアロが事件の真相を探れば探るほど翻弄され、感情をあらわにしてもがく葛藤が描かれています。そのポアロを監督のブラナーが自ら演じているわけですが、演出家の僕が思うに“役者の目”と“監督の目”は別物なんです。おそらくブラナーは苦悩の名探偵を演じながら、監督として共演者の演技のことも考えている。役者と監督のふたつの目がだぶって見える一瞬に、演技の域を超えた生(なま)の表情が垣間見えたところがとても興味深かったですね。

     ブラナーを囲むキャストの顔ぶれもよくぞ揃(そろ)ったという感じです。ジョニー・デップは殺害される富豪役で、これまでのイメージを裏切る役どころだし、英国でトップクラスのシェイクスピア俳優でもあるジュディ・デンチ、デレク・ジャコビ、さらにミシェル・ファイファー、デイジー・リドリーらが脇を固める豪華さ! 次々に登場する名優たちの演技がどこまで“嘘(うそ)”なのか、目を凝らしつつ騙(だま)される楽しみが尽きない作品です。

     そして最後に真相が判明すると、登場人物があのときなぜ嘘を言ったのかと思わず見返したくなる。見直すたびに新たな発見があるこの作品は、まさにブルーレイやDVDで何度も楽しみたい、大人のための贅沢(ぜいたく)なエンターテインメントです。

    アガサ・クリスティー

     1890年、英国生まれ。『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』など数々の名作を発表し、ポアロやミス・マープルといった名探偵を誕生させた20世紀を代表する〝ミステリーの女王〟。この春、日本でもテレビドラマ化が続くなど再び注目を集めている。ケネス・ブラナー監督・主演で『ナイル殺人事件』の映画化も予定されている。

    STORY

     エルサレムで起こった盗難事件を鮮やかに解決した名探偵ポアロが、トルコ・イスタンブール発の豪華寝台列車、オリエント急行に乗車した。ところが列車が雪崩で立ち往生した夜、米国人富豪ラチェットが何者かに殺される事件が発生。捜査に乗り出したポアロは乗客の誰かが犯人だとにらむが、国籍も身分も異なる彼らには全員アリバイがあった……。

    取材・文/高橋諭治 撮影/平田貴章
    ©2017Twentieth Century Fox Film Corporation