SUGOI JAPAN

今の日本を代表する作品が今年も決定! SUGOI JAPAN Award2017 贈賞式レポート
 3月16日に贈賞式が行われた「SUGOI JAPAN Award2017」。「毎回感じるのはファンの盛り上がりとパワーのすごさ」と、実行委員長の松田陽三氏(読売新聞東京本社 常務取締役)が述べたように、その投票総数は6万8411票と昨年を上回る結果となった。
 当日の司会は、昨年に続き、アニメ部門ノミネート作品の選定にも関わったニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さん。各部門受賞作品の発表とともに関係者が登壇し、受賞の胸中を語った。
 各部門1位は以下のとおり。マンガ部門『僕のヒーローアカデミア』、アニメ部門『Re:ゼロから始める異世界生活』、ラノベ部門『Re:ゼロから始める異世界生活』、エンタメ小説部門『小説 君の名は。』。
 アニメ部門とラノベ部門は、『Re:ゼロ』のW受賞。『僕のヒーローアカデミア』もまたアニメ化が人気を押し上げたひとつであり、『君の名は。』は2016年に一大旋風を巻き起こしたアニメーション映画の小説版。各ジャンル、アニメと絡むメディアミックスの力を見せつける結果となった。

1位受賞者によるサイン色紙

マンガ部門

吉田尚記さん

 受賞の連絡を受けたときは、嘘だ、と疑ったという著者の堀越耕平さん。「国民投票で、読者の皆様に選んでいただけたことが何より嬉しいです」と緊張を見せながらも謝辞を述べた。年間数百冊のマンガを読むという司会の吉田尚記さんの指摘のように、本作は力強いアメコミ調の作風が特徴。最初は一般的なジャンプマンガの作風に寄せていたと語る堀越さんだが、思うような反応が得られず、だったら自分の好きなものを好きなように描いてみようと決めた。さらにヒーローマンガを描いていくうちに、線は自然と太く力強くなっていったのだという。
 表の世界を生きる、明るく強い人間に憧れがあるという堀越さん。「その憧れがあるからこそ、何とか一歩を踏み出したいけれど踏み出しきれない人たちを描くことができるのではないか?」という吉田さんの問いにもうなずき、「“弱い人”に寄り添いたくて描いている作品」と想いを語った。

【選定委員 総評】
『僕のヒーローアカデミア』は2014年に連載開始されてすぐ人気作品となり、異例の早さでアニメ化されたことも話題になりました。そうした作品が、改めて今回ベスト1となるのには、原作に対するファンの支持の厚さを感じます。長い連載の中で面白さを増しながら、ますます読者の心をつかんで続いていく、マンガというジャンルの良さが表れた結果だと言えるでしょう。またマンガならではという点では、5位まで並んだ各作品は、いずれも個性に満ちた想像力が開花しているのが魅力です。北海道を舞台にした伝奇ロマンでありつつ、民俗文化の詳細な描かれ方も魅力の『ゴールデンカムイ』、潔癖症のカウンセリングを扱ったBL『テンカウント』、ひたすら駄菓子をテーマにしたコメディ作品『だがしかし』、そして濃密なファンタジーと繊細な愛情物語が融合する『魔法使いの嫁』と、ざっと眺めただけでも唯一無二の作品ばかりというのがわかります。こうした発想の大胆さと新鮮さが、他ジャンル以上の自由さで広がるのがマンガのいいところです。手にとっていただければその発想に驚き、またこれらの作品を支えた多くのファンと同じく夢中になってしまうに違いありません。

マンガ部門ノミネート作品選定委員 さやわか(ライター/物語批評)

アニメ部門

田中翔さん

 吉田さんが「2016年のシンデレラ作品」と評した本作。放送開始時の知名度はそれほどでもなかった作品が、話数を重ねるごとに話題を集め、やがて強力な支持を呼び、放送終了時には「Re:ゼロ」という略称が世間に定着した。まさに「ファンとともにつくりあげられた作品」だ。
 原作の担当編集者との雑談から、「おもしろそうだから」と会社の正式な承認もとらないままアニメ制作を決め、企画を進めてしまった、と驚きのエピソードを語ったのは、KADOKAWA映像事業局アニメ企画部のプロデューサー・田中翔さん。順序は逆になったものの、原作のおもしろさを信じて「大丈夫だ」と突き進んだという。「原作は続いており、アニメもこのままでは終われません。今後に期待してください」との田中さんコメントにつづき、アニメ制作会社・WHITE FOXのアニメーションプロデューサー・吉川綱樹さんもまた、「スタッフ全員で作りあげた手応えを感じた作品。ファンのため益々精進します」と期待に応えていく姿勢を述べた。

【選定委員 総評】
今、秋葉原を歩くと、『Re:ゼロ』のヒロインの一人であるレムが、そこかしこの店頭のポスターやPOP、画面に躍っています。この間開催されたフィギュアと模型の祭典、ワンダーフェスティバルでも、数多くのレムのフィギュアが出展されていました。今回の投票で、アニメとラノベの双方の部門で『Re:ゼロから始める異世界生活』が1位を獲得した、おそらく最大の理由はレムの魅力にあり、レムこそが今回の真の受賞者だと、私は思います。作品の魅力の柱としてキャラクターが掲げられることは、「脚本」や「映像表現」などと比べ、何やら一段低く見られることがあります。しかし、とりわけ日本のマンガやアニメ、ラノベでは、キャラクターこそがメディアミックスを支える構造そのものを担ってきました。そのようにメディアを横断する存在であるだけでなく、脚本や映像表現、声優の演技を統合する依代でもあり、さらにはファンの愛情や共感の器でもあります。今回のアニメ部門の結果はそのことを再確認させてくれる、魅力的なキャラクターがひしめくラインアップになっています。受賞された皆様、おめでとうございます。

アニメ部門ノミネート作品選定委員 森川嘉一郎(意匠論/明治大学准教授)

ラノベ部門

長月達平さん

 ウェブ投稿サイトで連載していた小説が、編集者の目に留まって書籍化されたという本作。アニメ部門の発表を受け、「2016年のシンデレラです」と自己紹介をして会場の笑いを誘った著者の長月達平さん。さまざまな作品に“心をぶん殴られて”育ち、その積み重ねの結果が本作であるという。「アニメとの相乗効果で広く読まれW受賞、ありがたいです」と、アニメ制作関係者への謝辞を述べるとともに、みずからも読者の心を震わせる――心をぶん殴っていく作品を生み出していきたいと今後の意欲を語った。
 そしてラノベには欠かせないのがイラスト。担当の大塚真一郎さんは「中学校の皆勤賞以来の受賞です」と笑いながら、関係者やファンへの深い感謝を示した。また長月さんは、第1巻刊行前、最初にイラストを目にしたときの感動をふりかえるとともに、キャラクターを具現化するイラストの存在は執筆のモチベーションを高め、作品を深めていく一因にもなったと述べた。期待には応えたいが予想は裏切りたいという長月さんが紡ぐ、さらなる展開にも期待したい。

【選定委員 総評】
去年に引き続き、ウェブ小説発の作品が人気を集めました。死とともに時間が巻き戻るという能力以外はまるで無力な少年が、それでも必死で運命を変えようとする1位の『Re:ゼロから始める異世界生活』、異世界に転生したのに華々しい活躍ではなく、ただただ安定した暮らしを求めようとする2位『この素晴らしい世界に祝福を!』と両者共に「異世界転生もの」という定番ジャンルに独自の発想を加え、オリジナリティを獲得した作品です。流行ジャンルが生まれると即座にそれにヒネリを加えたりパロディにしたりする作品が生まれてくる。そうしたライトノベルならではの楽しさが味わえると思います。続いて、BL小説からははじめてのランクインとなった『イエスかノーか半分か』、複数の作者による共作である『クオリディア・コード』シリーズ、そしてキャラノベやラノベ文芸と呼ばれる、ライトノベルと一般文芸の中間的ジャンルから『神様の御用人』といった作品が名を連ね、実に多彩なランキングとなりました。ライトノベルというくくりの中だけでも、これだけの広がりと多様性があるということを知って頂くよい機会になったのではないかと思います。

ラノベ部門ノミネート作品選定委員 前島賢(ライター/評論)

エンタメ小説部門

吉田さん(左)と新海さん(右)

新海誠さん

 2017年3月20日時点で興行収入が247億円を突破したオリジナルアニメーション映画『君の名は。』。日本の興行収入ランキングでは、『千と千尋の神隠し』『タイタニック』『アナと雪の女王』に続き第4位となっている。SUGOI JAPAN Award2017 アニメ部門の選考対象期間は、2016年7月31日までの約1年間のため、8月公開の映画は惜しくも対象外となったが、新海誠監督みずから映画制作と並行して書き下ろした小説が見事1位受賞となった。
 映画製作スタッフを代表した監督としてではなく、一人の小説家として壇上に立つのは、新海さんにとっても新鮮な体験だったに違いない。累計発行部数は150万部を超え、文庫部門で2016年年間1位獲得という快挙をなしとげ、映画とともに人々の心を揺さぶった本作について、「映画公開前に40万部超えたこの小説が、ヒットに繋がる第一歩でした。小説にも目に留めていただけて幸せです」とふりかえった。
 実は、映画制作と同時進行の執筆に最初はとまどったという新海さん。同じく監督であり小説執筆も手掛ける細田守さんへの対抗心もあったことを明かしながら、結果として小説執筆が映画をより深めることにもつながったと語った(※)。次のアニメーション映画制作もすでに始まっているといい、小説執筆のスケジュールも組み込まれていることを明言した。
 ※『小説 君の名は。』の制作の裏側を語ったインタビューはこちら

【選定委員 総評】
SUGOI JAPANの特色は、単純なヒットチャートにならない選考方法にあります。とりわけエンタメ小説部門は、「エンターテインメント」の多様性を表すように、様々なジャンルの作品が入り乱れてきました。昨年の第2回の投票結果でも、圧倒的ベストセラーだった又吉直樹『火花』をしのぐ作品が続出するなど、投票者の年代や傾向を反映しつつ、単なる売り上げにとどまらない「投票」の熱意が、幾多の波乱を巻き起こしてきました。その傾向は、リーダブルなライトノベルと文学的な芥川賞受賞作と人気の本屋大賞受賞作とが並ぶ今年のベスト5にも現れています。にもかかわらず、2016年の圧倒的ヒット映画だった『君の名は。』の小説版が番狂わせなく1位を得たことは、映画と小説を並行して手がけた新海氏の多才を示すとともに、同作への広範な支持を映し出しています。昨年の『屍者の帝国』もそうでしたが、映画・テレビ・本(そしてもちろんネット)と、作品にも宣伝にもシナジーを駆使したメディアミックス作品こそが社会現象たりうるという、2016年の「JAPAN」をよく表しています。そうした仕組みこそが、日本が世界に誇れるいちばんの「SUGOI」かもしれません。

エンタメ小説部門ノミネート作品選定委員 市川真人(評論/早稲田大学准教授)




(取材・文=立花もも/よみうり大手町ホールにて)
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