インタビュー12

自分の好きなことを通じて
日本社会に貢献したい。

矢野 拓洋さん(建築家/研究者・デンマーク在住)

世界を舞台に活躍する人材を育てる東洋大学。日本を飛び立ったその卒業生たちは、今どんな舞台に立っているのだろうか。ここでは、海外で働く卒業生たちのインタビューを連載。国境を越えて活躍する彼らの軌跡や思いを追うとともに、後輩へのメッセージも紹介する。

デンマークでの経験を糧に日本社会に貢献したい

デンマーク短期留学プログラム中(右)

 今、私はデンマークに拠点を置くコンサルティング企業「北欧研究所」の一員として働いています。日本人のみで運営している小さな企業ですが、日本の政府機関やグローバル企業の依頼で北欧に関する事柄を調査したり、こちらの医療制度や医療建築について日本の機関誌に論文を寄稿したりと、自分の研究を深めながら日本社会とも関われる、やりがいのある日々を送っています。

 デンマークは、環境デザインや建築デザインの分野で先端を行く国の一つ。その設計思想をアカデミック(学術)とプラクティカル(実践)の両面から学ぶため、設計事務所と研究機関という別の職種を行き来しています。建築分野に限らず、日本ではまだ学術界とそれを実践する現場との間であまり交流が進んでいないようですが、この二つの領域が協働すれば日本社会はもっとよい方向へ変われるはず。ここでの仕事や研究を通して両方の視点を身につけ、将来的には日本で双方の橋渡しをできる建築家になりたいと思っています。

二人の先生の姿勢に大きな影響を受けて

デンマーク短期留学プログラム中(右から3番目)

 こうした思いを持てるようになったのは、大学で出会った二人の先生のおかげです。一人は建築家の工藤和美先生(理工学部建築学科教授)です。建築家の生き方というものを知りたくて3年生のとき研究室の門をたたきました。先生の姿勢や学生への接し方などを見るにつけ尊敬の念が高まり、自分もこの職業に就きたい、こんな建築家になりたいと強く思うようになったのです。

 もう一人も同じく建築家の藤村龍至先生(理工学部建築学科専任講師)で、建築デザインの専門家として前述の学術と実践二つの領域の協働を実践されていました。4年生のとき、研究室の一員としてその姿勢を間近で見て大きな影響を受けたものです。さらに、その思いを持って留学したイギリスでは、日本を外から見たことでその長所と短所に改めて気づかされました。今後、日本の子どもたちが「この国に生まれてよかった」と思えるよう、建築を通して日本社会に貢献していきたい──。今はその実現のために自分を成長させる期間だと捉えています。

目標達成を目指して一つずつ行動を

藤村研究室時代の展示会にて(中央)

 その一環として今夏、日本で建築を学ぶ学生を対象とした3週間のデンマーク短期留学プログラムを個人で実施しました。参加してくれたのは東洋大学生2名を含む8名の学生で、デンマークの学生とともに実施設計を前提としたデザイン案を制作し、デンマークのNGOなどへ実際に提案も行いました。個人での主催は大変でしたが、学生の皆さんに多くのことを学んでもらえたのではと思っています。

 私自身も、プログラムの運営ノウハウをはじめ、北欧と日本の設計文化の違いやその統合方法など多くのことを学びました。この経験をまた次のステップへとつなげていくつもりです。まだまだ学ぶべきことが多く、早く日本に貢献できるようになりたいという焦りもありますが、一つ一つ行動していけばいつか必ず達成できると信じています。学生の皆さんも、夢や目標があればぜひ行動してください。そうすれば、自分も周りの世界も一つずつ変わっていくと思います。

建築家/北欧研究所 アシスタントマネージャー
矢野 拓洋(やの・たくみ)
1988年生まれ、埼玉県出身。2011年、東洋大学工学部建築学科卒業。卒業後にイギリスへ留学し、バース大学修士課程建築工学環境デザインコースで学ぶ。環境建築デザイン修士を取得したのちデンマークに渡り、14年春から15年6月まで建築事務所に勤務。14年秋からは、日本人からなる北欧諸国の調査・ビジネスコンサルティング企業「北欧研究所」にも勤務。北欧諸国の環境建築デザインや都市政策の研究を担当し、日本に発信する役割を担っている。