インタビュー17

グローバル化時代の
進路選択を考える

近藤 治氏(河合塾 教育研究開発本部副本部長/教育情報部部長)
竹村 牧男(東洋大学 学長)

将来、グローバル企業や国際機関などで世界を舞台にした活躍を目指す若者は、どんな視点で大学を選び、何を学べばいいのだろうか。グローバル化時代の進路選択に必要な視点や、そうした時代に東洋大学が果たす役割について、大学受験の予備校 学校法人河合塾で教育情報部を統括する近藤治氏と、東洋大学の竹村牧男学長が意見を交換した。

安定した人気を誇る国際系学部

河合塾 教育研究開発本部副本部長/教育情報部部長
近藤 治氏

近藤 本塾の調査では、2016年度入試は文系学部、中でも社会科学系や国際系が人気でした。文系、理系の人気は5~6年ごとに入れ替わる傾向があります。以前はこのサイクルが7~8年だったので、近年は変化が激しくなっていますね。ただ、このサイクルに関係なく、国際系学部の志願者数はあまり変わらずに人気なので、グローバル化時代の潮流を感じます。

竹村 今はヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて自由に行き来する時代ですから、国際系学部はもちろん他の学部の学生も、そうした時代を生き抜く力を身につける必要があります。本学の創立者・井上円了は、明治期の渡航が困難な時代に三度の世界視察を行うなど、早くから海外に目を向け、世界を舞台に活躍できる人財を育てるべきだと提言していました。その意味で、「グローバル人財」の育成は本学の伝統であり、使命であると言えるでしょう。

近藤 今は高校生も、経済・社会のあらゆる分野が国際化しているという認識を持っています。そのため、国際系学部を志願する受験生も、昔のように「海外で活躍するぞ!」と構えることなく、日本でも海外でも、将来のためにグローバルな感覚を身につけたいと考えているようです。そして、どの大学で学ぶかという点ではカリキュラムの内容や留学制度の充実度を重視する傾向があります。東洋大学には非常に手厚い支援制度がありますね。

竹村 本学は、2014年度に文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援(タイプB)」に採択されており、留学生の派遣・受入の促進をはじめ、国際編入制度の確立などに取り組み、キャンパスの国際化を実現するよう努めています。また、学生の海外経験を支援する制度として、充実した「東洋大学海外留学促進奨学金」などの多様な経済的支援も行っています。

主体性を持って進路を選び、グローバル人財に

東洋大学 学長 竹村 牧男

近藤 国際系の学部は数十年前からありましたが、学びの内容はその頃と今とでは大きく異なるようですね。高校生も、学校での国際教育やマスメディアからの情報などで以前よりも海外を身近に捉えていますから、単に海外への憧れから国際系を選択する人は少ないでしょう。現代社会でグローバルな感覚を備えた人財が求められていることを肌で感じ、大学にそうした学びを期待する若者が増えているのを実感しています。

竹村 そうだと思います。本学では、「グローバル人財」とは専門知識や語学力などの基礎力と、リーダーシップや問題発見能力といった人間力を兼ね備えた人財だと捉えています。加えて、様々な文化・価値観の人と協働し、良い部分を取り入れて新たな価値を創造する「異文化理解活用力」も必要でしょう。そして、最も重要なのは自国の文化を理解し発信できる「自文化理解発信力」です。この力を養うため、本学ではカリキュラムの土台となる基盤教育に日本文化に関する科目も数多く取り入れています。

近藤 そうした学びを修得するには主体性も大切ですね。受験生には、周りの意見やトレンドに流されることなく、「自分が本当にやりたいことは何か」をよく考え、自分なりの哲学を持って進路を選んでほしいと思います。最近の受験生を見ていると、大学に期待する一方で主体性が少し足りない印象を受けます。

竹村 そうですね。本学の基盤教育は主体性の確立を一つの目的としています。高校生のうちに人生の目標を見出すのは難しいかもしれませんが、それでも自分なりに考えて進路を選択し、大学では人生の基軸を得ることを目指してほしいですね。これは社会に出てからも同じで、自ら考え、判断し、行動する力はとても大切です。学生には、大学での学びを通じて「社会が何を与えてくれるか」ではなく「自分が社会にどう貢献できるか」を考え、行動できる人になってほしいと思います。

近藤 進路選択の際に目標を持っておけば、大学生活もより有意義なものになりますね。学ぶ中でやりたいことが変わったとしても、それもまた意義のあることでしょう。例えば、東洋大学では学科・専攻ごとにアドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)を謳われていますが、これは他大学ではあまり見られない素晴らしい点だと思います。こうしたきめ細かい情報発信を、受験生にもしっかり活用してほしいですね。アドミッション・ポリシーを読むと、その学科・専攻で求められている資質や学生像がわかるので、入学後の学びの参考になるはずです。

グローバル社会で必要とされる人財を育成する新たな学部・学科

竹村 自分のやりたいことがその大学で、その学部・学科でできるかどうかをよく比較検討するといいですね。本学では、2017年度に新たな学部・学科の開設を構想しています。世界を舞台に活躍し、地球社会の発展に貢献するグローバルリーダーを育成する「グローバル・イノベーション学科※」と、現場主義の視点でアジアを中心とした各地域の抱える問題の解決を図る「国際地域学科※」の2学科を擁する「国際学部※」。グローバル市場化する観光業界をリードしていく即戦力人財を育成する「国際観光学部※」。情報通信技術を活用し、異分野の人々やシステムを連携させてアイデアを素早く形にする力を身につける「情報連携学部※」の3学部に加え、文学部では英語コミュニケーション学科を発展させ、国や価値観の違いを越えて信頼関係を築くコミュニケーション力を身につける「国際文化コミュニケーション学科※」を設置します。時代のニーズに合わせ、グローバル社会で必要とされる人財を育成する本学の学びに、ぜひ注目してください。

近藤 今は、海外だけでなく自国にいても国際感覚が必要な時代です。相手の文化や価値観を理解した上で、自ら能力を発揮できることが求められています。自分の利益を追求するだけでなく、他者に配慮し、国際社会の発展に貢献することができる──東洋大学の新学部・学科は、まさにそういう人財を育成する場所になりそうですね。私自身も期待していますし、受験生にもこのような視点も持った進路選択を積極的にしてほしいと思います。

竹村 現代社会には様々な問題が横たわっています。それをいかに解決するか、自分がどう貢献できるか、そして、そのためには何を学べばよいのかを考えて進路を選択してほしいですね。近藤さんが言われた「他者に配慮する」精神を持ち、少しでも多くの人々を幸せにしていけることに学びの意義を見出せる──そんな若者が東洋大学を選んでくれることを願っています。

※2017年度に新設される学部・学科の名称は仮称であり、計画内容は変更になる可能性があります。

学校法人河合塾 教育研究開発本部副本部長/教育情報部部長
近藤 治(こんどう・おさむ)氏
1985年、河合塾に入塾。長年にわたり、同塾の教育情報部門において、全国統一模試(全統模試)のデータをもとにした大学入試動向分析・進学情報誌の編集に携わる。進学情報の分析・発信の統括のほか、高校営業、営業統括部門なども経験し、2008年1月より現職。雑誌や新聞などのメディアで、教育・入試に関するコメントも多数発信している。
東洋大学 学長
竹村 牧男(たけむら・まきお)
1948年生まれ、東京都出身。博士(文学)。東京大学大学院人文科学研究科(印度哲学)修士課程修了。同大文学部助手、三重大学人文学部助教授、筑波大学教授(哲学・思想学系)、東洋大学文学部長などを経て2009年から現職。専門領域は仏教学および宗教哲学。主な著書に『入門 哲学としての仏教』(講談社現代新書)、『日本仏教 思想のあゆみ』(講談社学術文庫)など。受賞歴に日本宗教学会賞、第17回中村元東方学術賞など。