インタビュー18

おもてなしの心を持ち、他国の人々と協働できる人材を
将来への明確な目標を持って、学ぶことが大事

窪田 健一氏(株式会社大戸屋ホールディングス 代表取締役社長)

日本経済の成長戦略の柱として観光立国・日本の実現が期待される中、2013年にユネスコ無形文化遺産に“和食”が登録されるなど、世界的に日本文化への注目が集まっている。こうした動きを受け、増加が見込まれる訪日外国人観光客への高度なホスピタリティの実践と日本文化を世界に発信できる人材の育成を目指し、東洋大学は2017年4月に「国際観光学部※」を開設する。今回は、代表的な日本文化である“和食”を国内外で提供している大戸屋ホールディングスの窪田健一社長に、海外事業における現状や飲食店というホスピタリティ産業にとって必要な人材像を聞いた。

日本の家庭食の味わいを世界に発信

株式会社大戸屋ホールディングス 代表取締役社長
窪田 健一氏

 大戸屋ホールディングスといえば、「大戸屋ごはん処」という定食屋の運営で知られている。日本人の家庭食を中心としたメニュー作りと、セントラル・キッチンを持たずに店内調理にこだわった、作りたてのおいしさが好評を博し、現在国内の店舗数は約330店舗にまで拡大。さらに海外でも、日本の家庭食の味を広めるため約90店舗を展開している。

「当社の海外事業は10数年前、日本の家庭食を世界に伝えていこうという思いから始まりました。当時、和食の認知度はまだ低かったのですが、私たちは現地の人の味覚に合わせて味を変えるようなことはせず、日本人が「旨い」と思える日本の家庭食を提供することに徹底的にこだわりました。最初は受け入れられなかったものの、やがて『本当の日本の家庭の味』という評判が日系人から現地の人へと広まり、徐々に受け入れられ始めたのです」

 同社の最初の海外店舗はタイのバンコク。そこから台湾、香港、シンガポール、インドネシア、上海とアジアを中心に店舗を増やし、2015年にはベトナムにも出店した。また、2012年にはニューヨークに進出。現在マンハッタンに5店舗を展開している。
 2013年には「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、これを機に和食に興味を持つ人々が増え続けているという。

人を思う“おもてなしの心”を持った人とともに働きたい

バンコク・サイアムパラゴン店(大戸屋提供)

 かねてより、海外では寿司や天ぷらは以前からよく知られていた。しかし、焼き魚やうどん、親子丼、味噌汁のような家庭食が和食として認知され始めたのはここ最近のことだ。この認知度の高まりには、10年以上にわたって日本と同じ味を守り続けてきた同社のこだわりも一役買っているのではないだろうか。

「そうであればとうれしいことですね。ただ、認知されたといっても、まだまだ一過性のブームみたいなものだと思っています。私たちとしては、日本の家庭食の本質的な魅力をより多くの方々に伝えていければと願っています。ですから、今後も海外事業を拡大し、将来的には全米、ヨーロッパにも挑戦していきたいですね。
 そのためには、やはり世界を舞台に活躍できる人材が必要となってきます。日本人としての自覚を持った上で異文化を受け入れ、他国の人々と協働できる能力のほか、当社の基本方針である『心のこもった親切さ、優しさ』『心のこもったおいしい料理』、つまり人を思う“おもてなしの心”を持った人とともに働きたいですね」

 17年4月に東洋大学に開設される「国際観光学部※」は、日本文化を世界に正しく発信できる能力を身につけ、グローバル市場化する観光業界をリードしていく即戦力人材を育成する。分野・コース制により、学生は早い段階で将来の明確な目標を持ち、それを実現するために必要な知識・スキルを身につけるカリキュラムを構想しており、窪田氏の言うおもてなしの心を持ったサービス人材を育成するコースも展開する。

国際観光学部※で将来への明確な目標を持って

 コースでは、たとえばホテルやレストランなどで高度なホスピタリティを実践できる人材、金融や不動産、経営分析の知識などを身につけたマネジメント人材、旅行業で新しい観光を創造する人材、観光行政に関わり政策を具体化できる人材など、それぞれの必要な専門性を学び、海外インターンシップや国際企業での実務的研修などを実施する。

「こうした専門性を身につけた人には、ぜひこれからのホスピタリティ産業を牽引していただきたいですね。当社は中国などからも従業員を採用していますが、ほとんどの人が明確な目標とバイタリティーを持ち、日本語の能力も高い。日本の学生も負けないよう、早いうちに目標を見つけ、海外に出て現地を体験してほしいと思います。目標に加えて国際観光学部※で身につけた能力と経験があれば、社会で活躍する上で強みになるでしょう」

※2017年度に開設予定の学部・学科の名称は仮称であり、計画内容は変更になる可能性があります。

株式会社大戸屋ホールディングス 代表取締役社長
窪田 健一(くぼた・けんいち)氏
埼玉県出身。1993年、東洋大学法学部卒業。株式会社ライフコーポレーションを経て96年に大戸屋(現・大戸屋ホールディングス)に入社。FC事業本部長兼FC営業部長、FC事業部長などを経て、2007年に取締役に就任。11年 株式会社大戸屋 代表取締役社長(現任)、12年より現職。日本の家庭食を届ける和食チェーン「大戸屋ごはん処」の直営店・フランチャイズ店を国内で330店舗以上運営するほか、アジアやアメリカにも事業領域を広げている。