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キャンパスナウ

▼2014 新年号

SPECIAL REPORT

人とロボットの幸せな未来へ

創立150周年(2032年)に向けた“Waseda Vision 150”の中で掲げる「国際研究大学」を目指し、日々、その活動を広く世界へ発信し、人類社会に還元している早稲田大学。
中でも人間型ロボットの研究は1970年に理工学部内の学科横断プロジェクトとしてWABOTプロジェクトを開始して以来40年以上の歴史を誇り、世界最先端の技術が日々開発されています。
人とロボットの共生を目指した早稲田の研究・技術の成果と課題をレポートします。

WASEDAロボット研究の記憶

1963年、「世界のロボット開発の父」と称された故加藤一郎教授により早稲田のロボット研究が始まります。
早稲田が牽引してきた人間型ロボット研究の歴史をひもときます。

世界初人間型ロボット「WABOT-1」。人間と簡単な会話をし、眼で対象物を認識して方向と距離を測定、2足歩行で移動し、触覚を有する両手で対象物の把持や操作が行えた。人間に例えると1歳半の幼児の能力に相当。学科・研究室の壁を越えて協力し合うことで、世界に誇るロボットの完成を実現した。

1970
故加藤一郎教授を中心とした「WABOTプロジェクト」スタート
1973
世界初!フルスケール人間型ロボット「WABOT-1」
1978
世界初の前腕筋電ロボット義手「WIMEハンド」が今仙電機(愛知)より発売
1984
  • 楽器演奏ロボット「WABOT-2」
  • 1978年より癌研との共同研究で開始した「乳がん触診ロボット」でロボットによる触診を実現しニュースリリース
1985
つくば科学万博政府館で2足歩行ロボット「WL10」を基本にした「WHL11」を日立製作所が制作し期間中に60kmの歩行を実現

「WABOT-2」をベースにつくられた楽器演奏ロボットがつくば科学万博の開会式でNHK交響楽団と協演(指揮:外山雄三)

 1985年のつくば科学万博では、「WABOT-2」をベースに住友電気工業株式会社が科学万博用に開発した楽器演奏ロボット「WASUBOT」が展示され約半年にわたり実演し、世界に日本のロボット技術を強烈にアピール。開会式ではNHK交響楽団と協演し、両手足を使い電子オルガンで「G線上のアリア」を演奏しました。

1992
「ヒューマノイドプロジェクト」スタート
1995
人間共存ロボット「Hadaly-1」
1996
ネットワークと接続可能な2足歩行ロボット「WABIAN」
1997
人間共存ロボット「Hadaly-2」
1998
情動表出ヒューマノイド「WE-3RⅡ」
1999
柔軟性や巧みなハンドを供えた「WENDY」

「WABIAN」は視聴覚情報取得および腕部を持つ2足歩行ロボット。双腕による荷物運搬作業、人間が振る指揮棒のリズムに合わせての可変速ダンス、人間とのジェスチャー交換などが可能。

人間共存ロボット「Hadaly-2」は人間共存のための安全性を重視し、安全かつ柔軟な人間との協調作業が可能。

「Hadaly-2」をベースに開発された人間共存ロボット「WENDY」。ヒューマンミメティックな指先の導入により、卵をきれいに割ることに世界で初めて成功した。

筋電制御義手「WH-1」(1964年)

ゴム人工筋導入
「WAP-1」(1969年)

「WL-5」
(1971年)

「WAM-4」(1972年)

人間とロボットの自然なコミュニケーションのあり方を研究するために開発された自律型コミュニケーションロボット「iSHA」。(橋本研究室)

複数の人と対話ができるロボット「ROBISUKE」(知覚情報システム研究室)。うなずきや表情、発話のニュアンスなどの非言語情報も理解し、人間に近い対話を実現。

2000
  • ヒューマノイド研究所(HRI)設立
  • 「WABIAN-RV」
2001
  • WABOT-HOUSE研究所設立(岐阜県内)
  • 自律型コミュニケーションロボット「iSHA」
2002
人間型フルート演奏ロボット「WF-3RIX」
2003
  • 21世紀COEプログラム「超高齢社会における人とロボット技術の共生」スタート
  • 理工学総合研究センター内に日伊の国際共同研究室「ロボ・カーサ」を開設
  • 人と自然な会話ができるロボット「ROBISUKE」
2004
  • 情動表出ヒューマノイド「WE-4RⅡ」
  • 岐阜県とのロボット共同研究プロジェクト
  • 「知的クラスター」開始
2005
高西研究室と株式会社テムザックが、汎用2足歩行ロボットを開発

人間型フルート演奏ロボット「WF-3RIX」(高西研究室)。

情動表出ヒューマノイド「WE-3RⅡ」(写真左)。人間の知覚・認識機能を工学的観点から解明することで、人間とロボットの円滑なコミュニケーションの実現を目指した。写真右は2004年に開発した「WE-4R II」(高西研究室)。

人とロボットが共生する家WABOT-HOUSE研究所(岐阜)

 21世紀に入り、早稲田のロボット研究はさらに学際的なものへと展開します。2001年には建築や情報通信関係の研究室が加わり、人とロボットが共生する家「WABOTHOUSE」を岐阜県に建設。2003年にはイタリアの大学院大学との国際共同研究「ロボ・カーサ」やCOEプログラム「超高齢社会における人とロボットの共生研究拠点」がスタートしました。

人間のパートナーとして、また人体運動シミュレータとして開発された2足歩行ロボット「WABIAN-Ⅱ」(高西研究室)。
詳細はこちらを参照

2006
  • 汎用移動モジュール「WL-16RⅢ」
  • 「WABIAN-Ⅱ」
  • 低侵襲手術支援ロボット
2007
  • 安全安心な介護ロボット「TWENDY-ONE」
  • 全身で喜怒哀楽を表現する2足歩行ロボット「KOBIAN」
2008
文科省グローバルCOEに採択され「グローバルロボットアカデミア」研究所設立

世界一雅(みやび)なロボットの舞

 2008年、理工学部創設100周年記念式典の舞台で、早稲田が誇る2足歩行ロボット「WABIAN-2R」と介助ロボット「TWENDYONE」による雅楽の舞が披露され、来場者を魅了しました。

2009
  • RT(Robot Technology)フロンティア開設
  • 複数の人とコミュニケーションできるロボット「SCHEMA」
2010
人間型フルート演奏ロボット「WF-4RV」
2011
国際医療福祉展に、青梅商工会議所が菊池製作所と早稲田の共同研究の本態性振戦抑制筋電制御ロボット装具を出展。横浜市ヨッテク見本市・国際ロボット展にも展示
2013
  • 「SCHEMA」2号機
  • 文科省科研費「人間共存型ロボットの能動的な働きかけによる人間協調技術の研究」採択
  • 文科省、博士課程教育リーディングプログラム「実体情報学」採択

全身に搭載した接触検知機能や高度なセンシング性能で安全性を重視した介護ロボット「TWENDY-ONE」(菅野研究室)。
詳細はこちらを参照

全身で喜怒哀楽を表現する2足歩行ロボット「KOBIAN」(高西研究室)。
詳細はこちらを参照

楽器を演奏するときの人間の各器官の働きを機械モデルにより再現した人間型フルート演奏ロボット「WF-4RV」(高西研究室)。

知覚情報システム研究室が開発した複数の人とコミュニケーションできるロボット「SCHEMA」。
詳細はこちらを参照

物理的な距離を越えた治療ができる未来を目指して

岩田 浩康
理工学術院准教授

2002年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。早稲田大学高等研究所などを経て、2012年より創造理工学部総合機械工学科准教授。2003~2007年「TWENDY-ONE」の開発リーダーを務める。2011年最先端・次世代研究開発支援プログラムに採択。

 携帯電話、パソコン、エアコン、エレベータ、自動改札機、自動車など、私たちの生活は多くの機械に支えられて成立しています。他方、ロボットは機能の優れた機械として、21世紀中盤にかけてさらに私たちの生活に入り込んでくることは間違いありません。今後期待されるロボットの種類は“超人的な機械”、“人の機能を代替する機械”“、人の機能を援助・拡張する機械”の3つに大別されます。

遠隔地から検診・診断ができる超音波エコーロボット

 私は診断・治療ロボットなど“人の機能を援助・拡張する機械”を研究していて、いまは妊婦の検診に必要な超音波エコー映像を妊婦のお腹の上から自動取得し、それを遠隔地の産婦人科医に遠隔伝送できる「遠隔エコーロボット」の開発に取り組んでいます。妊婦は自宅や近所の診療所で定期検診ができ、産婦人科医は空き時間にロボットから送られたエコー映像で赤ちゃんの健康チェックを行えるようになります。最新版では、携帯端末から機械の位置や角度を遠隔操作でき、羊水量や赤ちゃんの心臓の動きなど気になる部分へのフォーカスも可能です。また、僻地診療や救急車で搬送中の外傷患者の内出血の状況を遠隔から診断する救急診療にも応用できます。

 ロボット技術により、2020年頃には遠方にいる医師の手が遠くまで伸びてきて、診断や治療をしてくれる夢のような未来がやってくるに違いないと考えています。

[2009]
感情を込めて本の読み聞かせができるロボット「二宮くん」
(鎌田研究室)
[2010]
乳がん治療支援ロボットシステム

乳がんの治療法として注目されている穿刺(せんし)治療を支援する手術支援ロボットで、藤江研究室が開発。こちらでも解説しています

[2011]
歯科患者ロボット「デンタロイド」

人間の患者のような反応を示し、臨床実習や試験で活用されている。高西研究室と昭和大学、工学院大学などとの共同研究がベースとなっている。

[2011]
睡眠時無呼吸症候群サポートロボット「じゅくすい君」(人間科学学術院 可部研究室)

いびき音や呼吸の状態を感知し、利用者の睡眠姿勢の矯正を支援することで呼吸の改善を行う画期的なまくら型ロボット。

[2012]
セキュリティロボット「ミタ郎くん」(鎌田研究室)

頭部に搭載されたカメラで周囲を撮影。人物の顔を認識し、特定人物を追跡できる。鎌田研究室と北京大学との海外共同研究。

[2013]
ロコモティブ・シンドローム用トレーニング支援ロボット(人間科学学術院 可部研究室)
「Locomoちゃん(在宅用)」(左)
「Toccoちゃん(医療機関用)」(右)

※ロコモティブシンドローム:骨、関節、筋肉などの働きが衰え、要介護になるリスクが高い状態。