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運動部経験ゼロからデビュー2戦目で優勝! 女子ボクサー美桜

略歴はこちらから

富山 美桜/社会科学部 3年

格上相手にTKO(テクニカルノックアウト)

 早稲田大学ボクシング部でただ一人の女子部員、富山美桜さん。高校ではESS(英会話サークル)で活躍し、大学に入学するまで「特にスポーツの経験はなかった」という富山さんが、昨年7月、「元持杯女子ボクシング大会(以下、元持杯)(※)」シニア部門ライト級で見事優勝を果たしました。初勝利を目指して臨んだ、デビュー2戦目での快挙です。今後の活躍が期待される富山さんに、ボクシングとの出会いや、厳しい練習を続ける原動力、今後の目標などを伺いました。

※毎年7月に岩手県で行われる、女子ボクシング界屈指の全国大会。

――ボクシングを始めたきっかけは何だったのですか。

 入学後の新歓で、サークルの見学をしていたときに、ボクシング部員に「五輪に行けるチャンスがある!」と言われたことです。女子ボクシングはロンドン五輪から正式種目になりました。東京五輪開催も決まっていたので、「未経験でも努力すれば可能性がある」と言われ、やる気になりました。

 入部したことは両親には事後報告でした(笑)。危険なスポーツなので、特に母は心配していましたが、私は小さいころから人と違ったことに引かれるタイプ。「また変なことを始めたな」という感じで、すぐに納得してくれました。

2016年4月のデビュー戦(東京大学にて)。手も足も出せず、力の差を思い知らされた(写真提供:富山美桜)

――優勝された「元持杯」は、東日本の強豪選手が集結する大会だそうですね。どのような気持ちで臨んだのですか?

 緊張もしましたが、自分を限界まで追い込んで練習をしていたので、自信はあったというか…。直前になったら、「やるしかないんだ! 」という気持ちでリングに上がりました。私にとって試合の相手はいつも格上ばかり。自分には失うものは何もないので、「やれることをやってこよう」「自分の爪痕(つめあと)を残してこよう」という気持ちで臨みました。

 もともと私は気が強い性格で、プレースタイルは前に出ていく「ファイト型」と言われています。「元持杯」では、決勝戦の最終ラウンドで格上相手にTKO(※)で勝つことができました。そのときは本当に気持ちよくて…。先輩にすぐに電話して、「最高です!」と報告しました。

※テクニカルノックアウト。レフェリーやドクターが試合続行不可能と判断して勝敗が決まること。

初勝利を目指して臨んだ「元持杯」で見事優勝!遠藤寛治OB会長(中央)とジュニア部門ピン級Aで優勝した石田真央選手(右)。
石田選手とは「ワセダクラブ」(※)の仲間(写真提供:富山美桜)※早大OB・現役部員が競技指導を行うNPO法人

――日頃の練習はどのようにされているのですか?

井上稜介主将(スポーツ科学部4年)に打ち込みの基本を指導してもらう

 練習は週6日です。朝練は各自でロードワークを中心に走り込みます。午後は、16時40分から19時ごろまで集中して行います。ボクシングは無酸素運動で、長くやると危険と言われているので、2時間ぐらいが限度です。

 入部後1カ月くらいは、毎日鏡の前で構えとワンツー(※1)をずっとやっていました。普段の練習は、先輩に基本の技を教えてもらったり、男子部員と一緒にジャブ(※2)、ストレート(※3)、ワンツー、フック(※4)など、打ち込みを繰り返します。スパーリング(試合形式で行う練習)だけは男子と行うと危ないので、女子プロボクサーに来てもらったり、ジムへ行ったりして相手になってもらいます。

※1:2回連続してパンチを打つこと。一般的にはまずジャブを打ち、次にストレートパンチを打つことが多い。

※2:最も基本的な、力をあまり入れずに放つパンチのこと。

※3:狙いを定めて真っすぐ打ち抜くパンチ。 体全体をひねり、脚、腰の回転の力を腕に伝えて相手にダメージを与える。

※4:自分の体の外側から内側へ、曲線的な軌道を描く横からのパンチ。

――試合前の減量も大変ですよね。

社会科学部がある14号館前で

 減量は、そのときの体重にもよりますが、試合の2週間ぐらい前から摂取カロリーを減らしていきます。むくみを取るために、ナトリウム濃度を気にして塩抜きしたものを食べたり、1週間ぐらい前になるとグラム単位の調整が必要なので、ナッツなど重量の軽いものだけを口にして、水分も抜きます。私は少しでも食べると体重に表れるタイプなので、先輩からは「何も食べなきゃ、飲まなきゃ、自然に落ちるよ」と言われています。

――ところで、早稲田大学本庄高等学院から社会科学部へ入学されたのですよね。早稲田を選んだのはなぜですか?

 中学のときにたまたま成績が良くて(笑)、先生に勧められて早大本庄へ入学しました。他の一般的な高校と違って、ホームルームもないし校則も少ない。でも留年は普通にあって…大学みたいで面白かったです。早大生の性格かもしれませんが、常識にとらわれず、自由なところがいいと思います。社会科学部は校舎もきれいですし、専修科目がなく自由に学べます。私は経済学、商学を中心に履修していて、今は金融商品に興味があります。昨年末から公認会計士を目指して専門学校にも通い始めました。卒業後は監査法人で実務経験を積みたいと考えています。

――男子部員との厳しい練習とダブルスクール…。そこまで頑張ることができるモチベーションは何ですか?

馬場友成(スポーツ科学部3年)、岸本拓也(スポーツ科学部3年/左)、土田大輔(教育学部3年/右)の3人の同期部員は、心置きなく何でも話せる、かけがえのない存在(写真提供:富山美桜)

 始めたときから「厳しくて当然」と考えていたので、辞めたいと思ったことはありません。私はボクシングを「自分が精神的に強くなるための手段」と捉えているので、つらい練習にも耐えられます。でも、続けられるのは周囲の環境が大きいです。女子選手としてみんな気遣ってくれますし、同期の3人は何でも話せる、頼りになる存在です。トレーナーでもある遠藤寛治OB会長の存在もとても大きいです。試合前にプロボクサーとのスパーリングをあっせんしてくれたり、「元持杯」にはご夫婦で岩手まで激励に来てくれました。そのときは、「関東大学トーナメント」の決勝戦があって、部員はみんなそっちに行っていたので本当に心強かったです。遠藤会長は銀行員なので、ボクシングだけではなく、経済のことを教えてくれたり、公認会計士の話をしたときも「頑張れ」と応援してくれました。

 あと、親元を離れてから両親への思いも変わりました。「私は随分恵まれた環境にいるな」と思うようになって、両親の愛を感じるというか…。健康で、大学に通えるのは、共働きをして高い学費を払ってくれる両親のおかげです。昨年12月の「全日本選手権大会」は、減量もきつくて、肩にけがもしていたので、出場が難しいと思っていた試合でしたが、両親の励ましもあってリングに上がることができました。この恵まれた環境の中で、どれだけ成果を出せるかが自分の使命だと思いますし、単純に「両親を喜ばせたい」という思いもあります。

――選手として3年目を迎えますね。目標を聞かせてください。

 今年は国体(国民体育大会)出場を目標に置いています。本選は秋ですが、春から東京予選が始まります。7月には「元持杯」もありますし、その間に関東女子大学トーナメント戦もあるので、どの試合でも成果を出したいです。自分の限界まで練習を頑張れば、結果はついてくると思います。

 あとは、公認会計士の勉強も頑張りたいです。専門学校へ通うようになって、「資格を取るのは甘いもんじゃないな」と思っているので、うまく両立できるようにしていきたいです。

撮影:時永大吾

(提供:早稲田ウィークリー

富山 美桜(とみやま・みお)/社会科学部 3年

【プロフィール】
 埼玉県出身。早稲田大学本庄高等学院卒業。趣味は映画や音楽鑑賞。好きな映画監督はグザヴィエ・ドラン。知的障害児を抱えたシングルマザーと周りの人たちとの交流を描いた『Mommy/マミー』がお勧めだという。音楽はエレクトロミュージックを中心に、ジャンルごとに網羅的に聴く。移動はいつもマウンテンバイク。約60㎞離れた埼玉の実家まで、自転車で帰ったこともある。

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