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「地域おこし協力隊」で島根県の過疎地へ “地方留学”でつかんだ可能性

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室賀 元伸/教育学部 3年

「津和野町のために何かできたというより、仕事から得た気付きが大きかった」

 過疎化に悩む自治体が、都市住民など地域外の人材を呼び寄せ、地域産業や観光事業などに従事してもらう制度「地域おこし協力隊」。教育学部3年生の室賀元伸さんは、島根県津和野町での地域おこし協力隊に、現役大学生で参加した一人。2016年4月から大学を1年間休学し、海外留学ではなく“地方留学”を選んだ室賀さんに話を聞きました。

――2009年に開始した「地域おこし協力隊」は、若者らによる地域活性化政策の一つですが、大学生は少数派です。もともと町おこしなどに興味があったのですか?

風光明媚(めいび)な津和野の中心街

 高校時代、自分はエッセーコンテストや商社の海外事業を見学する研修ツアーなど、さまざまな課外活動に参加していました。その過程で「教育の場は学校だけじゃない」と実感し、教育の多様化に興味を持ちました。そこで、全国の学校外教育にも注力している事例を調べていたところ、島根県立津和野高校のプロジェクトを知ったんです。

 島根県は「過疎」という言葉の発端にもなった、いわば“過疎の先端地域”。県内のほとんどの高校が定員割れなのですが、統廃合で高校がなくなると、その地域の過疎化がさらに加速してしまうため、生徒数の確保が重要な課題となっています。「山陰の小京都」とも呼ばれる津和野町は観光地として知られていますが、最寄りの県庁所在地から電車で4時間というアクセスの悪さなどから、深刻な人口減少に悩む地域。そこで2011年、生徒数を増やすための「津和野高校魅力化プロジェクト」が立ち上がり、その一貫として町営英語塾「HAN-KOH(ハンコウ)」がスタート。今では各地の教育関係者が視察に訪れるなど、大きく注目を集めています。

町営英語塾「HAN-KOH(ハンコウ)」外観

 全国から高校生に入学してもらうというプロジェクトと、生徒たちの貴重なサードプレイス(※自宅や学校・職場ではない、心地よく過ごせる第3の居場所)となっている公営の学習塾という津和野町の取り組み、そして小藩ながら藩校事業に注力し森?外などの文化人を育て上げた津和野町の教育史など、調べれば調べるほど、とても価値のあることだと思いました。

 もともと在学中に海外留学へ行きたいと思ってアルバイトを頑張っていたのですが、ある時「海外留学より、こっちの方が自分のためになるのでは?」と気付いて、津和野町での「地域おこし協力隊」に応募してみたんです。親に頼み込んで1年間の休学を許してもらいましたが、不安よりやる気の方が大きかったですね。

――具体的にはどのような仕事をしていたのですか?

高校生に英語を教える室賀さん(右)

 町営英語塾「HAN-KOH」の運営スタッフとして、授業のアシスタントや生徒の学習サポートを行いました。津和野高校の生徒なら無料で通えるHAN-KOHは、勉強をするためだけの場所ではなく、地域の中高生たちの居場所にもなっています。町内の農家の方から無償提供いただいたお米が炊いてあり、部活の後でおなかがすいている生徒たちは自分でおにぎりを握って食べることができます。スタッフは、生徒と密にコミュニケーションを取りながら、勉強や進路、時には私生活の悩み相談に乗ります。ほとんどが恋バナでしたが(笑)、仕事を通じて生徒や町の方々と信頼関係を築けたことが自信につながりました。

 また、HAN-KOHや津和野高校の広報として、SNSでの発信、オープンスクールの企画や広報物の制作などに携わりました。前年度履修したオープン科目の授業「パブリック・リレーションズ特論」(尾上玲円奈グローバルエデュケーションセンター非常勤講師担当)でPRの基礎やプレスリリースの書き方を学んでいたので、その知識がとても役立ちましたね。さまざまなメディアにコンタクトしたところ、日経新聞系のWebメディア『College Cafe by NIKKEI』で「津和野から伝えたい言葉」という連載をさせていただくことになり、津和野町のPRにつながりました。

――知り合いが全くいない町に飛び込んでの1年間。学んだことは多そうですね。

高校生たちと田植え体験

 自分が空っぽな人間だと知ることができました。自分は何でもできると思っていたのですが、津和野町では思い描いていたような成果は挙げられず、悩んだ時期も長かった。でも、自分には技術も特別なものも何も持っていないんだと認めることができるようになってからは、まずは知識を身に付けなければと、本を読むようになりました。また、当時の塾長から言われた「仕事で大切なのは、自分の思いを達成することではなく、他者の願いをかなえること」という言葉で、自分の中の仕事観ががらりと変わりましたね。津和野町のために何かできたというより、仕事から得た気付きの方が大きかったです。

 東京に戻ってから、高校を卒業した翌日から続けている寿司屋のアルバイトに復帰しましたが、目の前のお客さんへの気配りを徹底している板長を尊敬しています。忙しい人気店にも関わらず「他者の願い」に淡々と応え続ける姿からは、本当に多くのことを学びます。このように、津和野の経験と今の自分をつなげながら、自分の可能性をもっと広げていきたいです

(提供:早稲田ウィークリー

室賀 元伸(むろが・はるのぶ)/教育学部 3年

編集を担当した広報物

【プロフィール】
 神奈川県出身。桐光学園高等学校卒業。教育学部生涯教育学専修所属。津和野町ではすきま風の入る古民家で生活をしていたため、積雪が4mになることもある厳冬期に体調を崩し、1週間入院したのがつらかったと語る。津和野高校では全校生徒が約50kmの山道を歩くイベントが毎年開催されており、先頭集団で歩き切ったのも、忘れられない思い出の一つ。

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