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生命科学と芸術を融合
バイオマテリアル・アートの試み

Mobile Composition IV ©Hideo Iwasaki

 エッシャーの版画と数学、雪の結晶に魅せられた中谷宇吉郎博士の研究など、古くから、科学と芸術には接点がある。現代においては、計算科学を駆使したフラクタル・アートや、建築、工業デザインなどの分野で、科学と芸術の融合がみられる。ここTWInsには、生命科学と現代美術を融合あるいは対峙させるというユニークな活動を進める研究者がいる。理工学術院 電気・情報生命工学科 准教授の岩崎秀雄博士である。

 岩崎博士の専門は微生物学・時間生物学。シアノバクテリアを対象に、生体内でリズムを刻む時計遺伝子の探索や、細胞の形や菌のコロニーが時間を追うごとにどのような空間パターンをみせるかといったことの解明を行ってきた。その一方で、芸術にも並々ならぬ興味を抱き、作家として切り絵造形を続けている。今回は、自らの研究材料であるシアノバクテリアを媒体に、現代アートの新たな表現に挑戦。その動機について、「アートの世界には、古くから生物や生命をモチーフにした表現があり、その経緯や表現に興味をもつようになった」と話す。

 岩崎博士の試みは、バイオマテリアルを用いて近代絵画や現代的なコンピューター・アート様の作品を創作する「バイオアート」の範疇に属する。バイオマテリアルというと医療用の生物素材を思い浮かべるが、シアノバクテリアのような微生物,培養細胞、遺伝子工学なども含まれるという。岩崎博士はまず、早稲田大学のキャンパス内にある池で、さまざまなシアノバクテリアを採取することから始めた。次に、それらを系統ごとに分離したうえで培養し、寒天プレート上でコロニーが形成される様子を観察。その中から「寒天プレート上に描かれたパターン」が視覚的に美しいもの・印象深いものを選び出した。

Metamorphorest II (スナップショット) / 寒天プレート上のシアノバクテリアコロニーパターン

 シアノバクテリアは、地球上ではじめて光合成を行えるようになったとされる微生物で、植物の祖先だと考えられている。その形態や代謝システムは実に多様性に富んでおり、培養や遺伝子組み換えが容易、嫌な匂いを出すことがないといった多くの利点をもつことから、実験生物として多用されている。

 「今回は約20系統を集めたが、なかでもLyngbia属とPseudoanabaena属の2つが、きわだっておもしろい運動パターンをみせた」。そう話す岩崎博士は、これらのコロニーがパターンを作る過程を最先端の顕微鏡技術を駆使して動画撮影し、岩崎博士が製作した切絵造形と組み合わせたかたちで、3月下旬から開催されるハバナ国際ビエンナーレ(キューバ・ハバナ市)に出展され、5月には東京の青山(Spiral Independent Creators Festival)でも展示される予定だ(作品名はMetamorphorest II, III)。

 「科学と芸術の境界面はかなり入り組んでいるように思う。私の作品によって、一筋縄ではいかない物事や生命や科学やアートの多面性を感じてもらえると嬉しい」と岩崎博士。現在は、作品に用いたシアノバクテリアのパターン形成に関わるダイナミクスを解き明かすべく、アトリエと化した研究室で新たな解析の準備を始めている。

文:西村尚子/サイエンスライター
研究者:岩崎秀雄(いわさき・ひでお)/早稲田大学理工学術院准教授(電気・情報生命専攻)

TWIns×Invents
http://www.waseda.jp/advmed/english/invents/index.html(英語版のみ)

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