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世界初、アミノ酸配列の相同性より遺伝子の位置関係を重視したタンパク質機能推定の有用性を実証

見かけより周りに注目?!

 木野邦器 早稲田大学大学院先進理工学研究科教授、原良太郎 早稲田大学理工学研究所次席研究員(研究院講師)、渡辺誠也 愛媛大学大学院農学研究科教授(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)、田嶋邦彦 京都工芸繊維大学教授、藤井敏司 甲南大学教授、福森文康 東洋大学教授、福田梨緒 愛媛大学農学部4年生、宮崎真帆 同左、渡部保夫 愛媛大学大学院農学研究科教授らの研究グループは、アコニターゼファミリーのタンパク質の中で唯一機能が不明だったアコニターゼX(※1)が、シス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(C3LHyp)脱水酵素(※2)として働くことを世界で初めて明らかにしました。その際、アコニターゼX と既知のアコニターゼのアミノ酸配列との相同性(“見かけ”)よりも、その遺伝子が細菌ゲノム上でL-ヒドロキシプロリン代謝酵素群をコードする遺伝子クラスター内に見られること(“周り”)に注目しました。C3LHyp脱水酵素の基質ならびに触媒する化学反応は既知のアコニターゼファミリーの酵素とは全く似ていないことから、本法は現在のタンパク質の機能推定に新たな一石を投じるものです。

 今回の研究成果は、英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に、12月8日10時(日本時間12月8日19時)に掲載されました。

掲載論文:Functional characterization of aconitase X as a cis-3-hydroxy-L-proline dehydratase.

研究成果の概要

 アミノ酸配列に相同性があるタンパク質(酵素)は、タンパク質ファミリーを形成します。さらにその中では、類似した機能や反応様式を持つメンバーがサブファミリーを形成しています。これは、進化の過程で遺伝子が重複することによってタンパク質ファミリーが生じたためと考えられており(リクルート仮説)、生命の進化や多様性の原動力になっているともいわれています。

 アコニターゼファミリーには、4つのサブファミリーが存在しています。このうち、アコニターゼ、ホモアコニターゼ、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼの3つについては、類似した構造を持つ基質のヒドロキシ基と特定の水素原子を取り出し立体化学的に異性化する反応を触媒します。すなわち、このタンパク質ファミリーの進化はリクルート仮説で説明できる典型例であるといえます。これに対し、アコニターゼX(サブファミリー)には既知の活性が見られないことから、これまで機能未知タンパク質に分類されてきました。

 一方、原次席研究員と木野教授らはこれまでにL-プロリンを位置立体特異的に水酸化する酵素を根粒菌などの微生物から見出しており(「cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン合成酵素」を発見)、多数のL-ヒドロキシプロリンの効率的生産に成功しています。さらに、それら酵素遺伝子周辺の解析を通して当該遺伝子のゲノム上の配置とL-ヒドロキシプロリン代謝との関係を検討してきました。また、愛媛大学の渡辺教授らは細菌のトランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(T4LHyp)やトランス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(T3LHyp)の代謝経路の解明を行ってきました。その過程で、アコニターゼX遺伝子がこうしたL-ヒドロキシプロリン代謝酵素群をコードする遺伝子が集まったクラスター内にしばしば位置することに気がつきました。そこで、共同研究を推進して、T4LHypやT3LHyp以外の多数のL-ヒドロキシプロリン化合物をアコニターゼXの基質候補として検討したところ、シス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(C3LHyp)のみが速やかに消費されました。さらにその反応生成物の分析から、アコニターゼXがC3LHyp脱水酵素として機能することがわかりました。

研究成果のポイント

 アミノ酸配列との相同性を重視する従来の研究手法では、機能未知のアコニターゼXの基質としてC3LHypを選択する必然性は皆無であり、その機能解明にはさらに長い時間を要するか、あるいは困難であったことは間違いありません。今後は、ターゲットタンパク質の立体構造情報に基づく活性部位の形(空間)も考慮することで、さらに正確かつ迅速な機能推定が可能になると考えています。本研究は、機能未知タンパク質の機能解明にとどまらず、代謝経路など生体システムがどのように構築されてきたのか、生命の進化の解明につながる可能性もあります。

用語説明

^ ※1 アコニターゼX アコニターゼXは、アコニット酸、ホモアコニット酸、イソプロピルリンゴ酸などの構造が類似する有機酸の代謝に関わるアコニターゼファミリーに属する酵素であるが、このファミリーの中でアコニターゼXだけ他の酵素に共通する代謝活性を示さず、生理的な機能も明らかではなかった。

^ ※2 シス-3-ヒドロキシ-L-プロリン(C3LHyp)脱水酵素 C3LHypを脱水し、Δ1-ピロリン-2-カルボン酸を生成するL-ヒドロキシプロリン代謝に関わる酵素のひとつ。今回の研究で、これまで機能がわからなかったアコニターゼXが、この酵素活性を有していることを初めて明らかにした。

論文情報

掲載誌:Scientific Reports 6:38720 (2016), DOI: 10.1038/srep38720
題名:Functional characterization of aconitase X as a cis-3-hydroxy-L-proline dehydratase.
著者:Seiya Watanabe1,2,3, Kunihiko Tajima4, Satoshi Fujii5, Fumiyasu Fukumori6, Ryotaro Hara7, Rio Fukuda2, Mao Miyazaki2, Kuniki Kino7,8 Yasuo Watanabe2, Kuniki Kino1,2

^ 1)Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University, Ehime, Japan
^ 2)Faculty of Agriculture, Ehime University, Ehime, Japan
^ 3)Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, Ehime, Japan
^ 4)Department of Bio-molecular Engineering, Graduate School of Science and Technology, Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan
^ 5)Faculty of Frontiers of Innovative Research in Science and Technology (FIRST), Konan University, Kobe, Japan
^ 6)Faculty of Food and Nutritional Sciences, Toyo University, Gunma, Japan
^ 7)Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, Japan
^ 8)Department of Applied Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Waseda University, Tokyo, Japan

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