早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

YOMIURI ONLINE | 読売新聞

  • トップ
  • オピニオン
  • ニュース
  • 研究力
  • 文化
  • 教育
  • キャンパスナウ
  • 早稲田評論
  • English

ホーム > オピニオン > 文化・教育

オピニオン

▼文化・教育

松永 康(まつなが・やすし)/早稲田大学研究戦略センター教授  略歴はこちらから

大学ランキングの見方

松永 康/早稲田大学研究戦略センター教授

教育市場の国際化

 昨今、世界大学ランキングがメディアで話題となっている。国内では、各出版社や予備校による大学ランキングが古くから存在するが、国際比較をした大学ランキングは存在しなかった。国際的な企業の格付けは、経済誌や投資ジャーナルで普及してきたが、それが日本の教育市場にも入ってきたわけで、世界大学ランキングは、教育の国際ビジネス化の流れと捉えて考えるべきである。

 本学は、国際研究大学への躍進を標榜しており、私が所属する研究戦略センターは大学の研究力向上を任務としているため、世界大学ランキングの動向に注目せざるを得ない。もちろん、大学ランキングはひとつの見方であるから、順位自体を上げることが大学の研究教育活動の目的となることはない。しかし、早稲田大学が世界の研究大学と比較してどの点に優位性がありどの点が劣っているかを把握するには良い情報源である。また、大学院への留学を考える国内外の学部生、就職を考える国内外の教員にとっても同様であり、大学の実務としては海外大学との協定締結の判断材料ともなり得る。

・ARWU(Academic Ranking of World Universities): 上海交通大学が中国の大学の研究力を世界の大学と比較することを目的に始めた。客観的評価指標のみを用いて自然科学系の大学の研究力を順位付け。
・QS(Quacquarelli Symons):研究成果の客観的指標より、レピュテーション(評判)や教育環境を重視し、国際化の指標も加えている。地域別、分野別、MBA、雇用者ランキングなど派生型も多い。2009年までTHEと共同していたが2010年より独自運営。
・THE(Times Higher Education):タイムズ紙の増刊号が起源で現在はTES Global社が発行。指標はQSとほぼ同様であるが、産学連携の数字もある。2015年からトムソン・ロイター社との提携を解消し独自運営。
・CWUR(Center for World University Ranking):サウジアラビアの団体が公表。ピアレビューなどの評判の指標を用いず、卒業生の受賞数、CEO輩出数等の客観的な数字を大学の規模で相対化した評価項目が特徴。
・U.S. News:USニューズ&ワールド・レポート社のランキング。米国内の大学の評価を世界版に拡大したもの。

Elsevier:オランダに本拠をおく科学技術系で世界最大規模の出版社。
Clarivate Analytics:トムソン・ロイター社から分離した科学技術情報提供会社。

大学数は2017.6時点

主な世界大学ランキング

 表に示したこれらの世界大学ランキングは、英語圏の大学、理工系の大学、医学部を有する大学が、論文数や被引用数の面で有利であり上位に来る傾向がある。それぞれランク付けの目的が異なるため評価指標が異なっており、また、目的が同じであっても各指標の重み付けや収集方法が異なる。そのため、同じ大学であっても別のランキングで見ると順位が大きく異なることも多分に存在する。また、人文社会科学系の研究科しか有しない大学は、英語圏での特例を除き、総合ランキングでは上位に名前が出ず、教育を重視するリベラルアーツの大学も入ってこない。

 大学ランキングで用いられている評価指標のうち、精度を保証して測れるものは、被引用数などの書誌情報、国際的な受賞数などである。これらの公表された数字のみのランク付けは信用してよい。逆に測れないものは、教育システム、特長、社会貢献、プレステージ等に関わるものである。これらを数値化するために各社はレピュテーションの評価を世界中の研究教育関係者や企業・機関等に投票形式で回答を求めている(ピアレビュー)。

 ピアレビューでも測れないものもまた存在する。国・地域との関係や存在感、図書館・研究教育設備などの大学の資産、キャンパスの雰囲気、スポーツやサークル活動などであるが、これらは実際に入学や就職をしてみなければわからないので、世界の大学を評点化して比較する上では対象外とせざるを得ない。

世界大学ランキングにおける日本の大学の現状

 日本の大学は、一般的にCPF(Citations per Faculty)と国際化の評点が低い。書誌学のデータベースが英語圏のものであるため、日本語を含む英語以外の言語で書かれた人文社会科学を中心とする論文や書籍の学術的・社会的評価が評点化されにくいのである。表に示したように500位以内に入っている大学数から見れば、CWUR> QS>ARWU>News>THEが、日本の大学にとって有利なランキング順と言える。200位以内の上位に限ってもこの順番は変わらない。ピアレビューを指標に含む知名度が高い3社の200位以内の大学数を比較すると、9(QS)>4(News)>2(THE)と大きく差があることに気付く。これらはいずれも広告収入やコンサルティングなどの営利を目的としたランキングであるから、各社によって重視している地域や国が存在し、それらが異なるためと理解できる。実際、QSのピアレビューアーの分布はアジア・中南米などの新興国よりである。

大学ランキングの限界

 ほとんどの世界大学ランキングは、評点化に当たり約1,000の大学で足きりをかけている。これは、書誌情報と投票数に下限を設けて信頼度を確保するためである。世界大学ランキングの総合ランキングは、これらの出場条件をクリアした約1,000校の中で、異種競技を戦っているようなものである。

 研究科構成が同じなら問題はないが、現実の大学間の組織構成の差異を考慮すると、総合でのランク付けによる比較には注意が必要である。芸術、人文科学、社会科学、医学などに特化した専門大学が、総合ランキングで上位に来ることはないからである。QSはその点を考慮して総合大学か専門大学かの度合いを区分した情報を示している。THEではCaltech(California Institute of Technology)が複数年トップだったが、Caltechが世界有数の研究大学であることを十二分に認めた上で、オックフォード大などほぼ全ての研究科を持つ総合大学と、その十分の一の学生規模の専門工科大学を総合ランキングで比較して何が見出せるのか非常に理解に苦しむ。これが現状の総合大学ランキングのMethodology(評価方法)の限界でもある。日本の大学関係者が、各社の世界大学ランキングに不満を持ち批判的な理由のひとつは、このような特性上の限界を一般には十分説明せず盛んに世界標準での順位付けだと喧伝し、また日本の報道もそれにも迎合していることにある。

大学ランキングとの向き合い方

 日本の大学関係者はこれらの世界大学ランキングとどう向かい合えば良いのであろうか。結論から言えば、自身の大学に有利なランキングを大学運営に活用すれば良い、である。知名度の高い3社のランキングは商業用であるから、客観性に問題があることは事実である。一方で、教育ビジネスが一国を超えて展開される潮流を止めることはできないため、何らかの世界比較の基準が必要である。それぞれのランキングの特性を十分踏まえた上で、使えるものを使える時に使うという、ある意味不遜な態度が正しいと考える。

 自身の専門性を高めるために留学を考えている人は、分野別のランキングを参考にすることを薦める。ピアレビューアーの研究教育に関わる投票も自分の専門性を反映したものならば信頼度が高く、また被引用数の評点化も最小限の補正で済み精度が増すからである。その際、評価指標を考慮した上で複数のランキングを自分で比較してみると良い。自然科学系の上位大学は定量的指標が重視されるため分散が比較的小さいが、人文社会科学系はレピュテーションの比率が高く分散が大きいことも認識しておく必要がある。一方で、分野別での比較は、研究教育評価における確度は高まるが、国際化や産学連携の指標は除外されるので、もちろん注意も必要である。

松永 康(まつなが・やすし)/早稲田大学研究戦略センター教授

1990年早稲田大学大学院理工学研究科修了、1997年博士(理学)取得
(株)東芝研究員、早稲田大学助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、早稲田大学助教授・准教授を経て、2013年より現職。
専門:プラズマ科学、ナノ構造科学、研究戦略・評価
委員等:文部科学省科学技術・学術政策局「研究開発評価に関わる人材の現状と育成に関する調査・分析」検討委員会委員、日本学術振興会科学研究費・第1段審査・審査委員表彰、リサーチ・アドミニストレーター協議会監事など

  • 早稲田大学東日本大震災復興支援室 早稲田大学東日本大震災復興支援室
  • 大学体験web もっと動画でワセダを体験したい方はこちら
  • QuonNet まなぶ・つながる・はじまる、くおん。