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太田 正孝(おおた・まさたか)/早稲田大学商学学術院教授  略歴はこちらから

ブレンディピティが生み出す「知のグローバル楽市楽座」

太田 正孝/早稲田大学商学学術院教授

 早稲田大学は今秋、VUCA(volatility, uncertainty, complexity, ambiguity)と称される21世紀のグローバル環境をリードするための先進的社会人教育の拠点であるWASEDA NEOをコレド日本橋5階に起ち上げた。WASEDA NEOとは文字通り、グローバル社会の諸課題を先取りする「新しい早稲田」の意であると同時に、日本橋(Nihonbashi)から世界に向けて創造的な価値提起を自由闊達に発信するNihonbashi Educational Outreach(NEO)の意味が込められている。社会のニーズにリアルタイムに応える「知の刺激」「知のネットワーキング」「知の融合」からなる「時空間」を多様なステークホルダーと共有しながら、先進的かつ高品質なNon-Degreeプログラムを提供していく。具体的なプログラム内容についてはWEB(http://wasedaneo.jp)をご覧頂くこととし、本稿ではこうした仕組みが今なぜ必要なのかについて、社会人教育における3つの新潮流の観点から述べてみたい。

社会人教育の新潮流1:社会イノベーションを創出するブレンディピティ

 WASEDA NEOの最大のミッションは、刻々と変化する社会のニーズと早稲田大学に蓄積されている学術資産をダイレクトに結びつけることで、高品質なNon-Degreeプログラムを国や文化の枠を超えて共同開発していくことにある。WASEDA NEOに集う様々な企業/個人との間にセレンディピティ(serendipity)を巻き起こすことで社会イノベーションを創造していく。グローバル社会においては、セレンディピティに対する高い感性がきわめて重要となる。慣れ親しんだローカル環境の人間同士であれば、好機のすれ違いは未然に防ぐことができるが、世界のどこにいるか分からない未知のパートナーとの遭遇は、自らの行動範囲が広くなればなるほど、すれ違いのリスクが高まるからである。グローバル化が内包するこの不都合な真実に対応するには、社会的にフェアな立ち位置にある大学が高品質なグローバルネットワークを時空を超えて提供することが求められる。こうしたビジョンに基づきWASEDA NEOは、SerendipityをBlendする意味の造語である”Blendipity(ブレンディピティ)”を中心理念においている。

社会人教育の新潮流2:長寿社会への対応能力をボーダーレスに追及する

 London Business SchoolのProf. Linda Grattonの近著“The 100 Year Life(100年時代の人生戦略)”に代表されるように、21世紀のグローバル社会が直面している最大の課題の一つは、長寿社会(longevity)がもたらす個人の生活のあり方、働き方の変化である。これは定年退職者が余生をどう過ごすかといった老後問題とは本質的に異なる。次のシニア世代である現在の働き盛り世代、さらにはその子供たちの社会的役割にも大きく波及するという意味において、まさしく時空を超えるグローバル・イシューだからである。WASEDA NEOが種々のプログラムで交流しているOxford, Wharton School(University of Pennsylvania), IMD, MITなどの世界のトップスクールはFuture of Workというより大きな枠組みを提起して、いち早く先進的な取り組みをしている。Non-Degree Programに特化しているWASEDA NEOが、世界のトップスクールと連携してFuture of Workに機動的に取り組むならば、なぜ日本の企業社会は長時間労働を前提としなければ生産性を維持できないのか、という日本社会の本源的病巣にもメスを入れることが可能となる。

社会人教育の新潮流3:トップBSとの連携を通じた国際オープンプログラムの展開

 WASEDA NEOが展開する「知のグローバル楽市楽座」には、早稲田大学のすべての専門領域が関わりうるが、現実問題としては、初期段階における推進役はビジネス分野が担うことになる。現在、世界のトップBS(Business School)が目指している社会人教育の最前線は、国や文化の枠を超えてエグゼクティブ・プログラムを競争力ある海外BSとの戦略的パートナーシップに基づいて共同運営することにある。現在のグローバル社会は20世紀に支配的だった単純グローバル化の力学で動いているわけではない。むしろ、各国の枠を超えて、多様な海外市場がもつパワー(現地集客力、競争力ある現地のプラクティスや提供物 etc.)を求めて複雑にグローバル展開している。WASEDA NEOも、未来志向を持つビジネスパーソンたちがイノベーションを追求する“共創の場”を強化するために、世界のトップBSとの連携プログラムを展開している。その際の選択肢として効果的なのが、特定企業の社内教育向けカスタムプログラムではなく、多様なバックグラウンドを持つ参加者が集う“オープンプログラム”である。数日間といった比較的短いカリキュラムでスキルやマインドセットを学べる参加者側の利点だけではなく、カリキュラムを構築するBS側にとっても自由度が高く、挑戦的なプログラムを創造できる利点がある。実際にカルロス・ゴーン氏、志賀俊之氏の要請を受けてWASEDA NEOが企画・運営を担当しているオープンプログラム“Global Resilient Leadership Program(http://grlp.nissan-zaidan.or.jp/ を参照)”では、Wharton School, IMDといった世界最高峰のビジネススクールと日産・ルノー・三菱自動車とのイノベーティブな連携が実現している。

「進取の精神」をもって時代の要請に応え続ける

 西側先進諸国がリードした20世紀の単純グローバル化からBRICSなど多くの新興国が台頭した21世紀の複雑系グローバル化へのパラダイムシフト、さらには人生100年時代というグローバル・イシューの出現に鑑みるならば、大学が果たす社会的役割が学部、大学院といった一定の年齢層(おおよそ18~30歳)に限定されないことは明らかである。まさしく欧米の大学が長年に亘りExtension School, Continuing Educationなどの名称のもとに展開してきた「全世代向け教育プログラム」が日本においても本格的に求められる時代となった。人間が知的刺激を求めて生涯学び続けることが重要な時代の到来である。

太田 正孝(おおた・まさたか)/早稲田大学商学学術院教授

WASEDA NEO マネジングディレクター、早稲田社会人教育事業室長、早稲田エクステンションセンター所長を兼務。早稲田大学商学学術院教授、博士(商学)、専門は国際ビジネス、異文化マネジメント。University of Pennsylvania Wharton SchoolならびにIMDとの共同開催で、日産・ルノー・三菱連合のカルロス・ゴーン会長を講師としたGlobal Resilient Leadership Programの企画・運営の責任者でもある。
早稲田大学第一商学部卒業。同大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。Academy of International Business日本支部代表幹事、国際ビジネス研究学会常任理事、大学基準協会経営系専門職大学院認証評価委員長・同基準委員長、日本経済学会連合事務局長、マサチューセッツ工科大学客員研究員、IMD客員教授、ケンブリッジ大学客員研究員、早稲田大学大学院商学研究科長(Waseda Business Schoolを含む)、早稲田大学常任理事(教務、国際担当)等を歴任。
最近の著書などに、『カルロス・ゴーンの経営論』(日本経済新聞出版社 2017)、『文化を超えるグローバルリーダーシップ』(中央経済社 2016)、『異文化マネジメントの理論と実践』(同文舘出版 2016)、『インド・ウェイ 飛躍の経営』(英治出版 2011)、『国際ビジネス入門』(中央経済出版社 2009)『多国籍企業と異文化マネジメント』(同文舘出版 2008)がある。

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