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▼東日本大震災特集

西條 剛央(さいじょう・たけお)早稲田大学商学学術院講師(ビジネススクール) 略歴はこちらから

「ふんばろう東日本支援プロジェクト」
―行政を介さない画期的支援システム

西條 剛央/早稲田大学商学学術院講師(ビジネススクール)

 僕は仙台出身で実家も被災しました。大好きな伯父さんは津波で行方不明になり1ヶ月後に発見されました。今回、自分のできることはすべてすると決めました。

 東京では哀しみは過ぎ去ったかのように思われていますが、現地では今もまだ何万人、何十万人という人が家族や友人を捜しています。僕のいとこや家族も1ヶ月探し続けていました。見つかっただけよかった、といわなければならない哀しみの中にいるのです。また五月中旬に至っても南三陸町の水道復旧率はわずか1%というのが被災地の過酷な現状なのです(5/18の河北新聞)。

 また物資は県の倉庫や大きな避難所にはたくさん積み上げられていますが、末端の小さな避難所や個人避難宅には届いてません。個人避難宅と聞くと、家があるからよいだろうと思われる人もいることでしょう。しかし、そのような生やさしい状況ではありません。津波は屋根まで達しており、かなりの人が逃げ遅れて亡くなっています。車は家と家の間に転がり、1階は壊滅して家電も家具もなくなった中、2階で身を寄せ合って生きています。信じがたいかもしれませんが、2ヶ月が経過した現在も、石巻市の渡波地区をはじめとした海岸線沿いには、いまだにライフラインもまったく回復せず、車もないため買い物にも行けないにもかかわらず食料配給も打ち切られ、仮設トイレの一つもない瓦礫の中の個人非難宅で困窮している人も沢山いるのです(先日もこの目で確かめ被災者の声を聞いてきています)。

 そうした困窮している被災者に物資は届きません。上(県)に上げてから自治体、避難所、個人避難宅と降ろしていくという従来の仕組みは、この有事において機能していません。どこかで詰まったら終わりであり、また被災者のニーズは驚くほどの速さで日々変化していきますので、届くまでのタイムラグが大きいことによって必要のないものが大量に届いてしまったりしているのです。また公平性という呪いに囚われ、300枚の布団があるのに500人全員に配れないから一人にも配らないといった不条理があちこちで起きています。

 こうした状況を打開するために「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げました。現地に支援物資を持って行った際に、各避難所や個人避難宅エリアごとに周囲の人に配ってくれる人に窓口になってもらいます。何がどのぐらい必要かを電話で聞き、それをサイト(http://fumbaro.org/)に掲載します。それをTwitter(アドレス:saijotakeo)で拡散して、それを見た人が自分が送れるものを直接送り、必要な物資が行き渡り次第募集を打ち切るというシステムです。Amazonと連携しているのでアマゾン経由で送ることも可能です。これによって必要としている人に必要な物を必要な分スムーズに送ることが可能になります。仕分けをするのも必要ありません。

 この画期的システムによって、このプロジェクトは瞬く間に広まり、数百の避難所や個人避難宅に支援を行ってきました。

 現在、家電や家具のニーズは急速に高まっています。現在も送っていますが十万個という家電が必要です。そこで新たに自治体に呼びかけ各家庭で使わない家電を大量に集めてもらい、それを被災者のもとに直接送る「使わない家電を被災者に送ろうプロジェクト」を立ち上げました。ぜひご自宅のある各町内会、マンションなどで呼びかけてください(現在、無料で運送できるロジスティックスを構築しています。近日中にHPにフォームを開設します)。

 また今被災者が最も求めているものは仕事です。生き残った人の中でわかっているだけでも1万人もの人が仕事を失いました。わずかばかりの義援金で生きていくことはできません。そこで「被災者に重機免許をプロジェクト」を立ち上げました。今後被災地で間違いなく需要があるのは、膨大な瓦礫の撤去と建築です。瓦礫と化した街をマイナスからすべて建築していく必要があるのです。そこで避難所で時間のあるうちに被災者に無料で免許をとっていただこうというのが本プロジェクトです。

 これによって被災者が自立して新たな生活のスタートを切るための“力”を与えることになります。また故郷の復興に自らの手で携わることができるのです。重機の免許は数日で取ることができ、またその費用も数万円とコストパフォーマンスよく取得することができます。お金を与えるだけでは生活費ですぐに無くなってしまいます(それも必要ですが)。しかし同じ数万円で重機免許を取得してもらうことで、自力で何百万と稼ぐことができるようになります。

 すでに陸前高田市で本プロジェクトは始動しています。チラシを撒いた現地の消防団の方が「被災者の目が今までにないほど輝いた」といっていたように、その反響は大きく、応募者が殺到したため支援金が足りません。支援金が集まるほど多くの被災者に重機免許を取っていただくことが可能になります。集めた義援金をどこに使うべきか迷っているという方はぜひ「被災者に重機免許をプロジェクト」をご支援ください(http://fumbaro.org/about/project/heavy-machinery/post.html )。

 今後はガイガーカウンターを大量に集め、放射線測定方法を統一した上で、情報を集約するサイトを構築し、現地で危険度を自己判断できるようにし、支援の基礎を作ります「ガイガーカウンタープロジェクト」(http://fumbaro.org/about/project/geiger-counter/ )や「職業訓練プロジェクト」をはじめとして次々と構想を実現していきます。急拡大する本プロジェクトの運営スタッフは昼夜を問わず尽力してくださっていますが、人材が必要です。新プロジェクトの立ち上げに際して「ふんばろう東日本支援プロジェクト」では運営スタッフを大募集しております。ぜひHPの「ボランティア申し込み」からご登録ください(http://fumbaro.org/)。

 地震は止められません。津波も止められませんでした。しかし物資が届かないといった人災は止めることができます。家電や家具、仕事といった生活の基盤を準備することで、被災者に“希望”を与えることは僕らの手でできるはずです。

 この悲惨すぎる出来事を肯定することは決してできませんが、将来こうした出来事を乗り越えたからこそ、僕らはこんな風になることができたと思えるようになること。それが僕らの目指すべき未来です。

 今こそ立ち上がりましょう。

西條 剛央(さいじょう・たけお)/早稲田大学商学学術院講師(ビジネススクール)

【略歴】
1974年、宮城県仙台市生まれ。早稲田大学人間科学部卒業後、早稲田大学大学院人間科学研究科にて博士号(人間科学)を取得。日本学術振興会特別研究員を経て、2009年から早稲田大学大学院商学研究科専門職学位過程(MBA)専任講師。専門は、心理学、哲学。2005年に構造構成主義を体系化。

【主な著書】
『母子間の抱きの人間科学的研究』『構造構成主義とは何か』『構造構成的発達研究法の理論と実践』、『科学の剣 哲学の魔法』『エマージェンス人間科学』『なぜいま医療でメタ理論なのか』『現代思想のレボリューション』『持続可能な社会をどう構想するか』『よい教育とは何か』(いずれも北大路書房)、『ライブ講義・質的研究とは何か(ベーシック編/アドバンス編)(新潮社)、『看護研究で迷わないための超入門講座』他多数。

構築した新支援システムがツイッターを中心に広がり、被災者と支援者を直接つなぐ活動につながっている。
http://fumbaro.org/
http://fumbaro.org/news/2011/05/cm.html

【関連動画】
岩上安身インタビューによる対談「津波被災地の支援について 西條剛央&岩上安身対談」
http://www.ustream.tv/recorded/13788982
西條剛央×GACKT×川崎麻世鼎談:「今ぼくらに何ができるのか?-みんなの思いをつなげる新たな支援システムの提案」
http://www.ustream.tv/recorded/13965863
「支援物資を被災者へ」2011.05.12 中部日本放送(CBC)イッポウ
http://www.youtube.com/watch?v=Y3vdc3QUtso
PRIMENEWS ふんばろう東日本ダイジェストPRIMENEWS ふんばろう東日本ダイジェスト
http://www.youtube.com/watch?v=5q03EVtJxXk

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