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河合 隆史/早稲田大学理工学術院教授  略歴はこちらから

大学教育におけるバーチャルリアリティコンテンツ制作

河合 隆史/早稲田大学理工学術院教授

VR元年を迎えて

 バーチャルリアリティ(Virtual Reality:VR)という言葉を見聞きする機会が、近年、増加しています。コンシューマ向けVRヘッドセットの発売が開始された2016年は「VR元年」と呼ばれ、現在もその動向が国際的に活発化しているためです。

 VRを構成するシステムは、スマートフォンからPC、ゲームコンソールまで多岐に渡りますが、共通する特徴として以下の2点をあげることができます。

・コンピュータシステム上に表現された現実であること

・人間に対して臨場感や現実感、存在感を呈示すること

 換言すれば、VRは感覚・体験の技術であり、筆者の専門分野である人間工学とも深い関係があります。

VRと人間工学

 VRを取り巻く動向の活発化の背景には、ヘッドセットの小型・軽量化や高解像度化をはじめとするハードやソフトの成熟があげられますが、一方で、体験に伴う酔いや疲労、高品質なコンテンツの不足などが、普及の阻害要因として指摘されています。

 これまで筆者らは、立体視映像(3D)やVRの生体影響について継続的な研究を行っており、人間工学の観点から安全で快適なシステムやコンテンツについて検討しています。そうした研究成果の一環として、3D / VRコンテンツの制作手法に関する入門書を、2003年に執筆・刊行しています(図1)。

図1 次世代メディアクリエータ入門(カットシステム,2003年)

VRと大学教育

 筆者は所属学科において、3D / VRコンテンツ制作にかかる教育活動を実践しています。筆者の所属する基幹理工学部 表現工学科は、科学技術と芸術表現の融合・横断によるイノベーションの創出を理念として、2007年に新設されました。ここでは設立当初から、3D / VRコンテンツの制作手法を学ぶ科目として「立体映像表現」と「バーチャルリアリティ制作」を設置しています。

「立体映像表現」

 本科目は、表現工学科の専門必修科目であり、VRにおける特徴的な視覚表現の一つである3Dの原理と制作手法について、講義と実習を通して理解することが目標です。実習では、2D映像に両眼視差を付加して3Dで表現する、2D/3D変換を学びます。現在、ハリウッドの3D映画のほとんどが、2D/3D変換を用いて制作されています。2D映像に含まれる奥行き情報から、デプスマップと呼ばれるグレースケールの画像を作成することで3Dに変換します(図2)。本科目の課題では、3Dに適した素材を選択してデプスマップを作成し、その結果を講評することで、3Dの特性や効果的な表現について考察します。

図2 素材となる2D映像(左)とそのデプスマップ(右)

「バーチャルリアリティ制作」

 本科目は、表現工学科の専門選択科目であり、CGをベースとしたVRの基本技術や特性を、講義と実習により理解することが目標です。実習では、国産のVR空間の開発環境である「オメガスペース(ソリッドレイ研究所)」を用いて、VR空間の構成要素やインタラクションの設計・実装を学び、課題を通してVR体験の効果を検討します。

図3 VR空間におけるインタラクションの実装

新たな教育環境への展開

 上記科目を開設して10年が経過し、VR元年も迎えました。そこで当該分野のトレンドに対応するために、サムスン電子ジャパンの協力を得て、新たな展開を図ることとなりました。これまで3D表示に対応したPCモニタを用いていた実習に、同社のVRヘッドセットを導入し、教育環境を刷新します。これにより、例えば「立体映像表現」では、360度の3Dを対象として講義や実習を再構築しています。

図4 360度映像(エクイレクタングラー形式)の例

 2018年度春学期から予定している新たな展開では、当該分野のコンテンツやアプリケーションの創出に寄与する大学教育のロールモデルについて、産学連携による実証的な取り組みを行っていきます。

河合 隆史(かわい たかし)/早稲田大学理工学術院教授

 1993年 早稲田大学 人間科学部 卒業、1998年 同大学 大学院人間科学研究科博士後期課程 修了。同年 早稲田大学 人間科学部 助手、その後、同大学 専任講師、准教授を経て、2008年より現職、現在に至る。

 人間工学を専門として、3DやVR、クロスモダリティなど、人間と先進映像システムのインタラクションに関する研究に従事。博士(人間科学)。認定人間工学専門家。

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