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森川 友義(もりかわ・とものり)/早稲田大学国際教養学部教授  略歴はこちらから

大学生の恋愛事情と「恋愛学」のすすめ

森川 友義/早稲田大学国際教養学部教授

 2008年春学期、早稲田大学125年の歴史初の試みと銘打って「恋愛学入門」なる講座をオープン教育センターに設置し講義を行った。本稿では、この講座において実施したアンケート調査結果をもとに、早大生という限られたサンプルではあるものの、大学生の恋愛事情、昨今言われている「婚活」時代の到来の予兆なるものに言及してゆきたい。

 この講座への応募者を当初150人前後と想定していたが、実際には800人以上の学生が応募した。書類審査の結果、553人を受講者として受け入れたところ、学生が「恋愛」という、一見、情動や感情に強く左右されると思いがちな現象に対して、科学的に研究することに興味を持っていることがうかがえた。早稲田大学全体の男女比率が2:1にも関わらず、応募者の比率は1:2と女子学生の関心が圧倒的に多く、いわゆる「ワセジョ」の恋愛および結婚の難しさに、自らが危機意識を持っていることも理解できた。

 そもそも「恋愛学」とは、子供を産ませるために進化させた男女間の恋愛感情を科学的に分析するもので、進化生物学や進化心理学の分野においては、恋愛及び配偶者選択をテーマにした研究が21世紀に入ってから特に盛んに行われているが、社会学、経済学、政治学等の見地から統合すると一つの講座として体系的に学ぶに充分な域まで到達してきた学問であると言える。

 このような観点から、2単位科目として講座を開講し、十数回の講義を行ったところ、その経験を通じて、現代の大学生の恋愛事情の特徴として主に次の3点が顕著であった。(前提となるデータのいくつかをご参考までに図表1に掲げた。)

図表1 恋愛に関する男女比較

  男子学生平均 女子学生平均
現在、恋人がいる学生 40.4% 47.0%
今までに交際した人数 2.5人 2.7人
その内自分がふられた人数 1.16人 0.82人
失恋から立ち直る日数 57日 58日
自分の魅力度(100点満点) 45点 41点
自分の性格の良さ(100点満点) 57点 51点
大学生は「視覚」重視

 第一に、学生には、恋愛は「視覚」(見かけ)と「性格の相性」が重要であると認識しているようである。そのために他の五感、つまり、嗅覚、聴覚、味覚、触覚の重要性への理解に至っていない。たとえば、衣服等への投資は充分に行われているが、歯を矯正したり(3分の1を下回る)、口臭に気をつけたり(喫煙者の存在)、自分の魅力の効果的なプレゼンを行うことが不十分であったりする。初夏(Tシャツ等軽装の学生がほとんどの季節)に行ったアンケートで、当日着ていた衣服等の値段を訊いたところ、男性が平均6万4千円、女性が8万8千円であった。男女ともに視覚重視、我々の時代とは比較にならないほど高額のものを身につけているようである。

大学生は自分の市場価値を知らない

 第二に、恋愛および結婚とは、経済学的に言えば、自分自身の(商品)価値を前提として、価値の高い異性を求める行為という一種の物々交換であるが、このような市場経済メカニズムが働いているという点を理解していない学生が多いことが挙げられる。多くの学生が恋愛は自分の熱意が重要であるかの発言を行うし、自分の資産価値を上げようとする努力はおろそかにしているようである。たとえば、男性の場合、より良い恋愛をしたいと思うならば、高度の安定した経済力を持つ努力をしたり、身体を鍛えたりすることによって自分の資産価値を上げるべきなのであるが、実際には、アンケート調査の結果では、「女性への優しさ」や既に手に入れた「学歴」を自分の魅力としてアピールしていて、それ以上の努力を行なわない男子像が浮かび上がってきた(自分の性格を過大評価する傾向は図表1から覗える)。就職活動でも良く言われるように、相手に気に入られるためには「want」ではなく「can」の部分が重要であることを認識すべきであろう。

「3高」女性の苦悩

 第三に、高学歴、高収入の女子学生の恋愛および結婚の難しさである。早大生の場合、多くが大企業に就職し、生涯年収も4億円に迫ろうとすることを踏まえて、女子学生が結婚相手に求める年収の条件が、自分を上回ってほしい学生が6割近く存在するとの結果が出た(図表2、ご参照)。他方、学歴の条件として大卒以上であってほしいと願う女性が9割、そのうち早慶上智以上の偏差値の高い大学であってほしいと願う女性は半分を超している。実際には、自分より年収を多くもらい、一流と呼ばれる大学を卒業している男性もいなくはないだろうが、そのような男性と首尾よく出会い、気に入られ、恋愛関係に入る確率は、条件をふさない場合に比べて、相当低いことが予想される。

 一昔前に、男性の魅力の要素として使われた言葉に「3高」(高収入、高学歴、高身長)がある。確かに男性にとっては「3高」ではあろうが、女性にとってはむしろ逆に作用する可能性が高い。「3高」の女性が、自分より収入、学歴、身長の面で上回る男性を探そうとすると、人数が極端に少なくなることは自明である。したがって、その条件に見合う男性と知り合いたいと思うならば、特別の戦略が必要となり、たとえば、条件に合う男性が多く集まる恋愛市場(および結婚市場)に意図的に参入する必要性が出てくるのである。女子学生の5人に1人は「待てば白馬の王子様はきっと現れる」と思っているが、ただ単に待つだけの姿勢では、理想の恋愛はほぼ不可能な時代である。

図表2 女子学生の結婚相手の年収希望

 女性と向き合うのが不得手な男性の増加と、ビジネスの分野で活躍する女性の増加によって「男性がプロポーズするのを女性が待つ」とのパターンでは、男女がマッチングすることが難しい時代になっている。かかる観点から、いわゆる結婚活動を意味する「婚活」、あるいは恋愛活動ならぬ「恋活」時代が到来したようである。

 というわけで、「恋愛学」とは、自分を離れて第三者として自分を知り、自分にとって最高の恋人・配偶者を見つける目的をも持つ学問であるが、特別の戦略が必要となる時代を生きる大学生にとっては、早稲田大学のみならず、他の大学でも「恋愛学」が教えられるべきであると考える。

森川 友義(もりかわ・とものり)/早稲田大学国際教養学部教授

【略歴】

早稲田大学国際教養学部教授。政治学博士(Ph.D)。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、ボストン大学政治学部修士号、オレゴン大学政治学部博士号取得。国連開発計画、国際農業開発基金等の国連専門機関に勤務。アイダホ州立ルイス・クラーク大学助教授、オレゴン大学客員准教授を経て、現職に至る。専門分野は進化政治学、国際機構論、日本政治。恋愛学に関する著書に「なぜ、その人に惹かれてしまうのか?―ヒトとしての恋愛学入門」、「なぜ日本にはいい男がいないのか? 21の理由」(両者ともディスカヴァー21社)等がある。

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