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▼スポーツ評

間野 義之/早稲田大学スポーツ科学学術院教授  略歴はこちらから

学校運動部活動のあり方

間野 義之/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

 日本の学校運動部活動のあり方が問われている。

 これまで我が国のスポーツは学校運動部活動に支えられてきた。学校運動部活動は学校教育の一環として、教員が生徒に対して、学校体育施設を用いて、様々なスポーツ指導を行う。平成24 年度から実施された新中学校学習指導要領では、部活動について、「スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」と規定している。

 学校運動部活動で培った成果を発揮する場として、地区大会・都道府県大会・ブロック大会、全国大会などの競技会があり、それらを取りまとめる組織として、公益財団法人全国高等学校体育連盟(高体連)と公益財団法人日本中学校体育連盟(中体連)が存在する。

 競技会には学校単位での出場が不可欠であり、そのためには運動部活動に加入した生徒は両団体に登録することになる。平成24年では、高体連には121万人の生徒が、中体連には229万人の生徒が登録しており、両者を合わせると350万人となり、多くの子どもたちが運動部活動に励んでいる(図1)。

図1.高体連と中体連の登録生徒数

 運動部活動には活動場所が必要となるが、学校にはグラウンド、体育館、水泳プール、テニスコート、武道場などが整備されている。公立中学校10,104校、公立高校3,906校に対して、グラウンドであれば、中学校10,167カ所、高校7,628カ所が整備されており、体育館でも中学校9,690カ所、高校6,323カ所であり、ほぼすべての学校に整備されている。わが国の学校制度に慣れ親しんだ人々からすれば、当たり前のようであるが、世界のなかでも最も学校体育施設が充実している国のひとつは日本なのである。欧州の学校ではグラウンドや体育館の整備率は低く、学校運動部活動は非常に限られており、一般には生徒たちは地域のスポーツクラブでスポーツを行っている。

 つまり、インフラとしてのスポーツ施設が学校敷地内に充実していることも、わが国の運動部活動の促進要因なのだ。

 

図2.市町村・都道府県立の中学校・高校の体育施設数(平成20年度、文部科学省)
注1)グラウンドは陸上競技場、野球・ソフトボール場、球技場、多目的運動広場の合計
注2)水泳プールは、屋内と屋外の合計
注3)武道場は、柔道場、剣道場、柔剣道場、空手・合気道場、すもう場(屋内外)の合計

 学校体育施設に加えて、マンパワーとしての教員の存在も、学校運動部活動の発展には極めて大きい役割を果たしてきた。中体連に加盟している校数は116,998校(部)、高体連の加盟校数は86,833校(部)となり、約20万人の教員が運動部活動を支えている。学校運動部活動は教育課程外の活動であるため、教員が主体的に行っているが、平成18年の教員勤務実態調査によると、中学校で58.5%の教員が運動部活動に関与している。生徒が平日にスポーツを指導してもらうとなると、夕方に時間がとれる大人は少ない。しかし、学校教員であれば、職場である学校で、職務としてスポーツ指導を行うことができる。保護者にとっても、思春期の子どもたちを安心して預けられる大人である教員免許取得者は最適といえる。

 このように、生徒が学校で放課後にスポーツを行えることは、移動時間もなく、月謝や会費等も不要で、また信頼できる大人が面倒をみてくれることからも、学校運動部活動は非常に効率的なシステムといえる。

 しかし、その一方で、教員負担の増大、行き過ぎた勝利至上主義、体罰やしごきなどのも問題も存在する。先述の教員勤務実態調査によれば、運動部活動の顧問教員は、平日で1時間38分(11月)、休日では5時間56分(11月)を費やしている。教材研究、成績処理、生徒指導などに追われるなか、運動部活動の負担は大きい。また、甲子園をめざした野球留学や特待生問題に象徴されるように、行き過ぎた勝利至上主義についても顕在化してきている。さらには、教員による異常な体罰や理不尽なしごきなどによる事件も発生している。

 一方、公共スポーツ施設が少ない我が国においては、学校体育施設は地域住民にとっても最も身近で利用したいスポーツ施設でもある。明治5年の学制発布により、全国各地で子どもたちが通いやすい場所に学校がつくられた。子どもたちが歩いて行ける場所は、大人たちにとっても便利な場所である。つまり、地域住民にとっても学校は貴重な資源なのである。

 他方で、開かれた学校づくりがいわれて久しい。学社融合、コミュニティスクールなど地域社会と家庭と学校とが協働で子どもたちの学習環境の保障を目指す動きも活発化してきている。地域のお祭り、地域清掃、文化祭、体育祭、防災など様々な取り組みを通じて、学校と地域等との連携を進められているが、実はスポーツが最も連携をしやすいのではないかと筆者は考えている。コミュニティスクールを推進するためにも、学校運動部活動を学校と地域とで協働で運営してはどうだろうか。学校運動部活動を地域に開くことで、教員負担の軽減、資格を持つ専門的な指導者、教員以外の大人との交流、地域の人々のスポーツ機会の拡充などが進むのではないだろうか。

 愛知県半田市の成岩中学校では、1995年から同種の取り組みを展開し、地域と学校とでNPO法人を設立し、学校敷地内の体育館をNPO法人が管理運営している。それにより、学校教員だけでは担えなかった様々な活動に広がり、また地域住民のスポーツ機会も広がった。トップアスリートを招いてのクリニックなども行えるようになった。

 これまでの百年は我が国のスポーツは学校運動部活動が支えてきたが、これからの百年は学校施設を活用した地域スポーツクラブの時代に向かうべきではないだろうか。

間野 義之(まの・よしゆき)/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

1963年横浜市生まれ。1991年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。博士(スポーツ科学)。株式会社三菱総合研究所勤務の後、2002年早稲田大学人間科学部助教授、スポーツ科学部助教授を経て2009年よりスポーツ科学学術院教授。日本アスリート会議代表理事、Vリーグ機構理事、日本バスケットボールリーク機構理事など、スポーツ組織の役員・アドバイザーなどを多数務める。著書に『公共スポーツ施設のマネジメント』、共著に『スポーツの経済学』など。

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