アメリカ同時多発テロ事件と、関連映画作品を振り返ります。
テロ事件としては史上最大の被害を生み出した、アメリカ同時多発テロ事件。その悲劇は、2001年9月11日、ニューヨークのマンハッタンから始まった。
午前8時40分過ぎ(日本時間21時40分過ぎ)、イスラム過激派にハイジャックされた2機の旅客機が、世界貿易センタービルの2つのタワー、北棟と南棟に激突。機体はビルにめり込んだ形で爆発炎上し、それに誘発されてビル内でも大火災が発生した。
この時点で既に世界中が「テロ事件」との疑いを持ってニュース中継を始めており、現地の警察や消防も、ビル内部に残された遭難者の救助に当たっていた。さらに他の地域でも、1機がワシントンD.C.のペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)に激突、もう1機がその郊外で墜落する。
午前10時頃には、世界貿易センタービルの南棟がビル上部から崩壊し始める。約30分後に北棟も崩壊を始め、やがて2つのタワーと敷地内の他のビルがすべて崩落。出勤時間に起きた事件とあって人的被害も大きく、ニューヨークでは、ビル内部および周辺にいた人々、救助に当たった人々など衝突した2機の乗客・乗員を含めて2800人を超す犠牲になった。
事件から5年が過ぎた今、世界貿易センタービルの跡地では超高層ビルの建設が進んでおり、惨劇の跡は消えつつある、しかし、その場所は今も「グラウンド・ゼロ(爆心地)」と呼ばれ、毎年犠牲者を追悼する大規模な式典が行われている。
昨年、その世界貿易センタービルで起こった実話を基に、救助に当たった港湾局警察官を主人公にした映画「ワールド・トレード・センター」が日本で公開された。監督はベトナム戦争やケネディ暗殺も描いたオリバー・ストーン、主演はアカデミー賞受賞歴を持つニコラス・ケイジ。
世界貿易センタービルに旅客機が激突したとの連絡を受け、現場に向かった主人公は、ビルの崩壊により同僚とともにがれきの下敷きになってしまう。しかし2人は、暗闇の中で身動きもできない状態にありながら生還への希望を失わず、静かに励まし合い、家族との生活に思いをはせる。
テロ被害を題材にした映画と聞けば、被害者の悲しみや政治的なメッセージを中心に描いた作品を連想するが、この映画は「信じ合うこと」「助け合うこと」といった人間が本来持っているべき大切な感情を、シンプルに力強く伝えることに徹している。
悲惨な事件の真っ只中ですら、かすかな希望を見出すことができた人々の「心の力」──。アメリカ同時多発テロ事件は、多くの人々に悲しみや怒りの記憶を残した。しかし、今、本当に語り継いでいくべきことは何なのか。この映画は、その答えの1つを提示してくれているのかもしれない。