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Vol.112JAGUAR X-TYPE ESTATE

至福の時のエステート
ジャガーにとって初のエステートとなるXタイプエステーは、さすがにラグジュアリーな仕上がりとなった

ジャガーにとって初のエステートとなるXタイプエステーは、さすがにラグジュアリーな仕上がりとなった

 イギリスの高級車、ジャガーに、初めてのエステートが誕生した。

 これまで、ドイツ車やイタリア車などの上級セダンにエステートは存在したが、ジャガーのように優雅で高級なイメージの強いクルマでのエステート投入は、冒険でもある。エステートとは荷物を運ぶという実用性を重視したクルマであり、果たして高級車に似つかわしいものであるのかどうか?

 イギリス流でいえば、日常の用事にはジャガーに乗り、郊外に出掛けるなどにはレンジローバーに乗るといった使い分けが、上流社会の人々にとってのクルマ事情であると聞いたことがある。

 とはいえ、ジャガーのもっとも小さなモデルとなるXタイプは、フォードグループ内のモンデオをベースに作られており、身近なジャガーとしてエステートの誕生はマーケットを広げることにつながる可能性もある。

 いずれにしても、まずは乗ってみることだ。

 ジャガーXタイプエステートの開発の狙いは、「ラグジュアリーなエステート」であるという。

 世の中に、スポーティであったり、お洒落であったり、安全であったりというエステートはあっても、ラグジュアリーを謳えるエステートはない。そこに、ジャガーがあえて今ごろエステートを出すに当たっての面目躍如たる想いが込められている。

リアハッチのガラスだけ開閉できるラゲッジスペースは、買い物に便利だ

リアハッチのガラスだけ開閉できるラゲッジスペースは、買い物に便利だ

 ジャガーXタイプとしての顔つきは、4ドアサルーンと同じで、後席から後ろの部分がエステート専用開発となる。オーソドックスなスタイルだが、それがかえって高級さを損なわずにすんでいるともいえるだろう。そして、要所要所に、クロームメッキの飾りがさりげなく配置されている。

 それは外観だけでなく、ラゲッジルームのリアハッチゲートを開ければ、荷物の出し入れの際に傷が着かないよう、クロームのプレートが床の縁に取り付けられ、また、脱着式ローラーカバーを備えている。こうした気遣いが、ラグジュアリーなエステートを大切に扱いたいというオーナーの気持ちをたくみに汲み取っている。

 実用的機能としては、リアハッチのガラス部分だけを開けることのできるようになっており、実際にジャガーXタイプエステートで買い物に行こうというときの心配りが伝わる。

革を扱いなれたジャガーらしく、シートは走行中に体がずれない形状に作りこまれている

革を扱いなれたジャガーらしく、シートは走行中に体がずれない形状に作りこまれている

 運転席に座れば、そこはまさにジャガーの世界が広がる。

 柔らかな革の手触りが目に見ても感じられる、ぬくもりの伝わるダッシュボードやシートのデザイン、そして、豪華さを与える木目のパネル……ジャガーとともにある至福の時が待っている。

 本革のシートは、前後の席ともにたっぷりとした大きさがあり、また、永年にわたり革を扱いなれたジャガーらしく、走行中に体のずれない、腰を落ち着かせられるシート形状に作りこまれているあたりはさすがだ。

 豪華さの中に秘められた、ジャガーならではの優れた機能性が感じられた。

 Xタイプエステートは、V6エンジンを搭載しており、その排気量は、2000ccと、2500ccの2種類である。

 また、2000ccエンジンのほうはFFで、2500ccでは4WDという、駆動方式の使い分けがある。

エンジンは、2000cc、2500ccをラインナップ。それぞれに個性が感じられる

エンジンは、2000cc、2500ccをラインナップ。それぞれに個性が感じられる

 車両重量が1.5トンを超えるため、2000ccエンジンでの走行性能はどうか、運転する前には少し気になったが、それが単なる危惧であることはすぐに判明した。

 ピストンストロークの短いこのエンジンは、出だしの動きも悪くなく、また3000回転以上での伸びのよさを備え、軽快で、カジュアルな雰囲気の快い走りを見せた。パンチ力もあって、ラゲッジルームを持つエステートであることを忘れさせるほど走行感覚はスポーティでもある。

 2500ccエンジンのほうは、4WD機能の追加などさらに車両重量が重くなるため、走行感覚全般に亘って重厚さが加わっている。ジャガーという高級車の趣を実感させずにはおかない。2500ccエンジンは、低い回転でのトルクに厚みがあり、底力を感じさせる加速をするため、4WDであることによる重量増の悪影響を意識させることはない。そして、4輪で駆動することによる前後タイヤでスピードに乗せて行く感覚が、ドライバーに安心を与える。加えて、ジャガー伝統のフラットな乗り心地が、明らかに他のエステートとは違う味わいを伝えてくる。

 2000ccエンジンと、2500ccエンジンと、この2種類のジャガーXタイプエステートはそれぞれ、個性ある走りを楽しませてくれた。一方どちらも、運転に夢中にさせるクルマであることが、クルマ好きを嬉しくさせる。

室内の豪華さとスポーティな走り。ジャガーらしさがあふれるエステートだ

室内の豪華さとスポーティな走り。ジャガーらしさがあふれるエステートだ

 メルセデスベンツCクラスや、BMW3シリーズ、アウディA4、アルファ156スポーツワゴンなど、競合他車のエステートと価格比較においても、ジャガーXタイプエステートは十分な競争力を備える設定となっている。そして、室内の豪華さと、スポーティな走行感覚との融合が、ジャガーならではのエステートの存在理由を明らかにする。まさに、ジャガーの狙い通りの仕上がりだ。

 「欲しい!」

 と、いう衝動を起こさせる、強い魅力を感じることのできるエステートの登場であり、エステートの選択肢を大きく広げる新車の誕生である。