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Vol.126AUDI S4

狼の走り、羊の手触り
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普通の4ドアセダンに見えるボディーに最高出力344馬力のエンジンを搭載するアウディ S4

 アウディ S4は、一見したところ、変哲のない4ドアセダンである。これが、808万円もすると聞いたら、驚くだろう。ポルシェ 911は無理としても、ボクスターなら十分におつりが出るし、ちょっと頑張ればジャガー XJも買える。なのに、なぜアウディなのか?と思うのが、一般的な反応だと思う。

 しかし、その何の変哲も無さそうに見える4ドアセダンが、344馬力のV8エンジンを積んでいて、200km/hというスピードさえものともしない四輪駆動を駆使した猛然たる走りを披露するところに一つの美学を感じても、それは自己満足としてはかなり中身の濃い話ではないか。

 実際、アウディ S4を運転していると、これほど自慢なことはないと思えてくる。かえって、人知れず世界有数のパフォーマンスを楽しめるというのは、本物を追求する通好みの志向であり、独特の優越感を覚えさせるのだ。

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「S4」のロゴをあしらったステアリングが目を引くインテリア」

 見たところ、アウディ S4は、388万円で手にすることのできるA4と、車体寸法に変わりはない。アウディ A4は、2リッター直列4気筒エンジンを積んだFFの5ナンバーサイズ(実際は、若干の車幅の広さで3ナンバーとなる)に近い、日々乗るのに手ごろな大きさのセダンだ。これに、4.1リッターのV8エンジンを積み込んだら、どれほど前の重いアンバランスなクルマになるかと思うのだが、運転してみると、ハンドル操作に素直で、自在に駆け、ちっともバランスを欠いていないことに驚かされる。逆に、344馬力ものハイパワーエンジンを載せながらバランスを欠く走りであれば、危険な乗り物でしかなくなってしまうだろう。そのようなクルマが自動車メーカーの売り物になるはずもない。

 市街地の道路を運転していると、本当にこのクルマが猛者であるのかさえ忘れてしまいそうになる。

 また、乗り心地もいいのだ。235/40R18という、標準のA4の2インチアップにもなる扁平で幅の広い高性能ラジアルタイヤを装着しているにもかかわらず、滑らかに走る。もちろん、200km/h超のスピードを支えるためのサスペンションの硬さというような感触は持つが、路面からの衝撃をうまく吸収し、いなしてしまう仕上がりが、上品でさえある。

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200km/hを超える最高時速を支えるV8エンジン。クワトロ・システムが効率よくパワーを路面に伝える

 アウディといえば、革新技術が売り物で、その技術の素晴らしさは実感しても、いかにも機械が作動しているといったメカっぽさが強く、かつては乗り心地について洗練さに欠けるところがあった。今日でも、ニューモデルの初期にはそうした技術先行型の仕上がりを見せることもあるが、4年前の2001年にフルモデルチェンジを行ったアウディ A4に熟成を重ね、ビッグマイナーチェンジによって進化を果たした今春発売のアウディ A4と、その高性能モデルであるこのS4は、快適性という面で格段の進歩を遂げている。

 S4のトランスミッションは、6速のオートマチックである。これを、シフトレバーまたはステアリング後ろ側のパドルと呼ばれる操作スイッチを使って、マニュアルモードでギアチェンジさせることができる。アクセルペダルを床まで踏みつけフルスロットルの状態で、エンジン回転が限界まで達したところでパドルを軽く手前に引いてギアチェンジをする。素早くシフトアップを終えたS4が、再び猛然たる加速に入る。道幅は狭く見えはじめ、次のカーブが瞬く間に目前に迫り来る。

 しかしこの間、スピードへの恐怖心はほとんどない。

 というのも、アウディがその世界を切り拓いた、高速での安定性を高める舗装路のための四輪駆動システム、クワトロを装備することによって、4つのタイヤがエンジンパワーを無駄なく路面に伝え、かつ、クルマの姿勢を安定させるグリップを確保するからだ。

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先進的な技術を取り入れてきたアウディだが、乗り心地のよさも格段に向上した

 目に映るスピードはたしかに速いが、身体に伝わる安定感が、怖いという気持ちを起こさせない。

 そして、カーブにそってハンドルを切り込んでゆけば、あの扁平で太いタイヤが遠心力をがっしりと支え、踏ん張りを利かせる。万が一にも道を外れることはないと確信させる手ごたえが、ハンドルを握る手に伝わってくるのだ。

 344馬力が、自分の身体の一部のように馴染む心地よさがアウディ S4にはある。それは、メルセデス ベンツ AMGや、BMWのMシリーズでも同様のことではあるけれども、アウディではクワトロの威力によって、さらに確実性のある安心感にみじんの揺るぎもないのである。そこが、独特である。フルスロットルにするうれしさが、際限もない。

 うれしい心持になって試乗を終え、さて、我に返ると、808万円という価格が現実となって目の前に現れる。果たして、自分は、人知れずこのような高価なクルマを買えるほど粋な男であるのだろうか……?と、考え込まされてしまうのであった。