ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

インプレッション

本文です

Vol.381 トヨタ アクア

まったく新しいハイブリッドカー

アクアの最上級Gグレード。雪の舞う寒い日だったが、試乗を終えてみるとうれしさに心は暖かだった
身長167センチの筆者の運転ポジションに前席を合わせても、後席にはこれだけのゆとりがある
トランクの床は深く、また後席の背もたれを左右別々に前方へ倒して、荷室を広げることができる
アクアのために開発されたハイブリッドシステムは、世界最高の燃費35.4km/L(JC08モード)の実力だ
燃費性能を、どれだけお得に走れたかという経済性で表示するエコウォレットの表示が新開発された
アクアの最量販価格帯となるSグレードの室内は、内装色を車体色に関係なく選べるなど華やいだ気分にさせるデザインとなっている
ハイブリッド用と、ライトなど補機用のバッテリーは、ともに後席下に手際よく収納されている

 トヨタから、まったく新しいハイブリッドカー「アクア」が登場した。プリウスより小型クラスのハイブリッドカーだ。アクアは5ナンバー車体で、日本でもっとも使いやすい大きさである。

 結論から言えば、プリウスから乗り換えてもいいと思うほど魅力あふれるハイブリッドカーであり、また、開発者の顔が見えるようなこだわりを感じられる小型車であった。

 アクアという車名は「AQUA」、すなわち「水」を意味し、水のように自由な広がりをもったクルマとなる願いが込められている。もはや環境性能の高さは当たり前の基本性能であり、それ以上の魅力を持ち、多くの人に喜んでもらえるクルマを目指したという。開発責任者は、初代プリウス以来ずっとハイブリッドカーの開発に携わった技術者で、ハイブリッドカーを知り尽くしたうえで、理想の小型車像を求めたという。

 基になった骨格は、小型車のヴィッツ(Vitz)だ。ヴィッツの床構造を活用しながら、まったく新しいクルマとして車体もデザインも新設計されている。ただしヨーロッパでは、ヤリス(YARIS)と呼ばれるヴィッツの車体そのままにハイブリッドの車種が追加となる。

 アクアのハイブリッドシステムは、1500ccエンジンを基にしている。それは一見、2代目プリウスの仕様と同じに見えるが、エンジンの中身は7割が新設計で、さらにモーター/発電機も新たに開発されて、いっそう小型軽量化されている。

 スタイルは、空気抵抗を少なくするプリウスの技術的手法は引き継ぐが、持ち味は一新され、新しい姿が描かれている。室内も、センターメーターの手法はプリウスから受け継ぐが、内装のデザインはまったく新しい。

 このように、ハイブリッドカーの根幹となるノウハウは、トヨタが1997年に初めてプリウスを市販して以来の蓄積が生かされているが、これまでが燃費を中心に環境性能を優先して追求してきたのに対し、環境性能は世界トップを誇りながら、小型車としての魅力を大きく進化させたクルマとしてアクアは開発されたのだ。

 前置きが長くなったが…それほどアクアには見るべき点が多い。

快適な室内、爽快な発進

 まず「アクア」に乗って感じるのは、室内の適度な広さと居心地のよさだ。「プリウス」より開放感がある。また、前方視界も改善されている。シートはとくに座り心地がよいのが印象的で、たっぷりとした大きさがあって、腰かけていること自体、心地よい。それは後席も同じだ。座って頭上に目を巡らせてみると、周りの空間がゆとりさえ覚えさせる居心地のよさにつながっている。

 走り出しは、実に爽快だ。速いと思わせる。これは、徹底的に軽量化を行い、エンジンの他に、ハイブリッドカーとして必要なバッテリーやモーター/発電機といった追加部品があるにもかかわらず、最量販グレードで1080kgという車重の効果が生きている。「アクア」より、モーター/発電機が一つ少ないフィットハイブリッドより50kgも軽いのだから、軽量間の徹底ぶりはたいしたものだ。

 モーターだけで発進する際、この軽さが利いて、力強く、通常のクルマの流れであればモーター駆動だけで速度がのって行ける。当然それは、燃費性能にも効果がある。

 その後エンジンが始動したとき、これまでのハイブリッドカーでは、高効率エンジンとするため採用されたアトキンソンサイクルという手法の関係だと思うが、「ブーン」というこもったようなエンジン音と振動が感じられるが、アクアのエンジンはより滑らかな回転で、こもり音が少ない。なので、もっとスピードをあげて走らせたいという気持ちになってくる。

 それから、ハイブリッド用のバッテリーはもちろんのこと、ライトやワイパーなどを動かすための12ボルトバッテリーも後席の下に配置することで、低重心となり、ハンドルを切ったときのクルマの動きが俊敏で気持ちいい。スピードをあげなくても、街角を曲がるといった場面でも、クルマが言うことを聞いてくれているうれしさがある。

乗っていてうれしいクルマ

 量販グレードのSは、外装色に関係なく室内の色を選べる。しかもその内装は、ワンポイントとなる縁取りの色遣いが楽しさを覚えさせる。アクアに乗っていることが、とても幸せに感じられる。

 センターメーター内には、トヨタのハイブリッドカーでなじみのエネルギーモニターが備わるが、そのメニューを切り替えると、燃費性能を経済性から表示されるエコウォレット機能が新たに装備されるなど、アクアの環境性能を身近で分かりやすくする工夫も込められている。

 なにしろ、アクアに乗っているのがうれしくてたまらない。また、運転は痛快で、室内は居心地がよい。アクアは、単にハイブリッドカーという以上に、小型車として時代を切りひらく力を備えた、感動の一台である。

 【関連】新車情報 トヨタ新型HV「アクア」

プロフィール

御堀直嗣  みほり・なおつぐ
 1955年 東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
2012年1月31日  読売新聞)
現在位置は
です