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Vol.8MITSUBISHI DION

5ナンバー3列シートの快適さ
MITSUBISHI DION

 ミニバンなどという言葉が日本で取り沙汰される前の時代に、三菱はシャリオという、5ナンバーサイズで3列シートを持つ新しいジャンルのクルマを生み出した。

 家族が生活の中で便利に使う道具として、使い勝手の良さを見抜いた人々にシャリオは愛用されたが、2代目を経て3代目へとモデルチェンジをした際に、雄大という意味を持つフランス語からの造語が付け加えられたシャリオ・グランディスとなって、ボディは3ナンバーサイズへと大型化された。

 その結果、5ナンバーサイズのシャリオを愛用してきた人たちは買い換えるべきクルマを失った。同じ三菱のRVRは5ナンバー車だが、3列シートではない。ホンダから5ナンバーサイズで3列シートを備えるステップワゴンが登場したが、乗用車感覚を備えていたシャリオからすれば、それはワンボックスカーに近い運転感覚で、彼らにとって乗り換えるべきクルマとはなりえなかった。

 シャリオ・グランディスから3年が過ぎ、ここに登場したのがディオンである。5ナンバーボディに、ミニバンの魅力を加えながら、車高はそれほど高くはなく、運転をすると乗用車感覚を持つ。それはまさしく、かつてのシャリオを愛用した人たちにうってつけのクルマである。

 ディオンのスタイルは、斜め前から見た印象がロンドンタクシーに似ている。究極の実用性を求めた車体寸法。乗り降りが楽なように十分に高い屋根。小回りのきくハンドル。ロンドンタクシーが、タクシーとしての機能を遺憾なく発揮した機動性の高さと、乗る人の利便性を重視したスタイルが、ディオンにはある。

 運転席に座ると、もちろんセダンより高さのある視界が前方に広がるが、それは見晴らしのきく安心感を与えるのに役立ち、一方で、既存のミニバンやワンボックスカーのように高い所から見下ろすような心許なさはない。

 走り出せば、運転感覚に特別な違和感はなく、誰もが普段通りに操ることができるだろう。

 ディオンの走りはまた、静粛性が高く、たとえば3列目のシートに座った人とドライバーとの会話も不自由しない。座席はゆとりのあるサイズを持ち、腰を落ち着けて座ることができ、長距離ドライブでもほとんど疲れは感じないに違いない。

 2列目のシートから前方の見晴らしは良く、走りの爽快さを、運転席/助手席の人たちと共に味わえる。ドライブ中は、けっこう周りの景色などが話題になったりするが、前後の席で同じ話題を共有することができるのだ。

 3列目ともなると、足元はけっこう窮屈になり、膝を抱えるような格好で座ることになる。ところが、思ったほど不快ではない。屋根が高く、また四角い格好をしたボディスタイルが生み出す室内が、空間のゆとりを持っているからだ。

 試乗の際、同行の者に運転をさせ、この3列目のシートにずっと座ってみたのだが、なぜか居続けてしまう心地よさがあった。広いリビングはたしかに心をのびやかにするが、一方で、アパートの3畳間も身の丈にあった温もりのある空間が忘れがたい。そんな居心地が3列目シートにはあるのだ。ディオンより大きな3ナンバーのミニバンでも、3列目には座りたくないというクルマは多く、それからすれば、ディオンの3列目シートの快適さは印象深い。

 その3列目シートは、折りたたみ、回転させると、荷室の床に完全収納ができる。オデッセイで馴染みの手法だが、5ナンバー車で3列目シートの座り心地を満した上で、これを実現をしたのはディオンが初めてだろう。そのために、開発技術者は相当に知恵を絞らなければならなかったと聞く。

 日本の使い勝手に合った5ナンバー車で、走りは快適、乗用車感覚で運転ができ、室内の居心地は良く、荷物スペースも上手にアレンジできるディオンの価格は、159.8万円から。とかく日本人は、上級グレードのクルマを買いたがるが、159.8万円のディオンを買う人は、シャリオの魅力を見抜いたのと同じく、クルマの良さをよく理解した目利きということができる。