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Vol.19HONDA ACCORD EURO-R

スポーツ心あふれるセダン
HONDA ACCORD EURO-R

 現在のアコードが97年9月にフルモデルチェンジをしてから、3年が経とうとしている。76年の初代から数えて6代目。そしてこのアコードから、日米欧アジアの世界各地域の実状に即したアコードが開発されたのである。例えば、道路が広いアメリカのアコードは、日本のアコードに比べボディが大きい。日本のアコードは、5ナンバーサイズにおさめられ、先代に比べ小型になった。ヨーロッパのアコードは、よりスポーディなスタイルが与えられているといった具合。

 きめ細かなクルマ作りが行われたにもかかわらず、日本でのアコードの人気はいまひとつ上がらない状況が続いた。ホンダがオデッセイで築き上げた日本のミニバンブームがユーザーの4ドアセダン離れを起こさせていたからだ。いや、実はヨーロッパのセダンは国内でも売れていた。一方で、日本車に、コレは買いだと思わせるセダンがなかったところへオデッセイという新しいジャンルのクルマが登場した。現在のアコードは、その開発の狙い通り日本の実状にあった格好のいいセダンであったにもかかわらず、そんなにいいセダンが日本車にもあることを誰も気がつかない状況が出来上がっていたのだ。

 しかしここへ来て、再びセダンが注目を集めるようになっている。何も3ナンバーの大きなミニバンは必要ないと人々は気づきはじめ、いいセダンを探しだしたからだ。

 そしてアコードに、その魅力をさらに広げるユーロRが、新たにラインアップされた。アコード・ユーロRは、いっそうの走りを追求したモデルである。目指したのは、F1などフォーミュラカー的な鋭い操縦性であるという。サスペンションは、その鋭い走りを実現するため硬められ、車高も15mm下げて車体の重心を低くした。地を這うような姿勢でカーブを曲がれるようにすることで、フォーミュラカーを彷彿とさせる操縦感覚を与えたのだ。タイヤも、インチアップされた幅の広いサイズに換えられ、ハイスピードコーナリングで安定した高いグリップを示してくれる。

 エンジンも改良が加えられ、排気量を2.2リッターとするとともに、馬力を上げている。また、トランスミッションは5速マニュアルシフトのみで、各ギア比はエンジン性能にあわせて専用の比率に設定されている。出足の良さに加え、小気味良い加速をそれによって実現しているのだ。そうした運転感覚をさらに演出するため、シフトレバーの動きは短いストロークで確実に操作が行えるよう、クィックシフトが採用されている。

 アコード・ユーロRのフォーミュラのような走りを体験するため、私は北海道にあるホンダのテストコースに招かれた。このテストコースは、他の自動車メーカーのテストコースと大きき異なる特徴がある。ドイツ南西部にあるニュルブルクリンクというサーキットは、山あいの地形を利用し、1周が22km以上、その間のカーブの数は100を超えるという、世界でも有数の難コースとして知られている。ここで鍛えられるため、ドイツ車はいずれも操縦安定性の高さで世界に名を馳せているのである。そしてホンダのテストコースは、このニュルブルクリンクを模して作られており、単にクルマの試験場としてデータを採る場所に止まらず、運転者に危機感を覚えさせる緊張を強いるコースとなっている。そのように緊迫した精神状態で運転をしても安全に走れるクルマ造りをホンダは目指しているのだ。

 さて、そのテストコースで220馬力のエンジンを積んだアコード・ユーロRを走らせた。運転席に座ると、そのシートはドイツのレカロ社製のバケットシートで、体を確実に支えてくれる安心感を持つ。ハンドルは、イタリアのモモ社製革巻で手に馴染み、素早い操作が的確に行えるはずだ。クィックシフトを採用したトランスミッションのシフトレバーは、アルミ製でレーシングカーのそれを思い起こさせる。白い計器盤のメーターは、表示のコントラストがはっきりとして瞬時に状態を確認できる。

 アイドリングで静かにたたずむエンジンは、アクセルを踏み込むと、心地よく透き通った音色で回転を上げていく。ギアチェンジをして加速させていくと、専用のギア比がスピードの乗りとうまく噛み合って、リズミカルに勢いを増して行く。すぐにアップダウンのあるカーブが近付いてくるが、硬めてあるはずのサスペンションは、巧みに路面の変化を飲み込み、クルマの姿勢を安定させる。安心してハンドルを切り込み、カーブに入って行けるのだ。乗り心地も悪くない。さらに、先の見通せぬカーブが連続するが、アコード・ユーロRは私のハンドルさばき通りに行く先を定め、速度を上げていくのであった。

 あっという間の1周だった。かつて、フォーミュラカーでレースを戦ったあの時を思い起こさせる身軽な動きと、しなやかな安定性が印象的だった。さらにもう1周、いやあと数周はしないと、この興奮した気持ちは抑えられない。それが果たせぬのなら、買うしかない。このクルマが欲しい。アコード・ユーロRは、素直にそう思わせる、スポーツマインドにあふれた4ドアセダンだった。