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Vol.81HONDA MDX

上質なスピード感を楽しむ
HONDA MDX

 先日アメリカから帰ってきたところなのだが、あらためて、フリーウェーを走るクルマの洪水には驚かされる。空港に着き、アメリカに第一歩を踏み入れて目にするのは、SUVの多さだ。世界の自動車メーカーがこぞってSUVをアメリカ市場へ投入するのを納得させられる。ポルシェまでがSUVを売り出す時代である。

 そのアメリカ市場で人気急上昇のSUVがホンダMDXであり、毎月5,000台ペースで売れ、昨年末までに11万台(北米とカナダ)が売れたという。ホンダ流に言えば「11万人のお客様との出会いがあった」ということになる。

 MDXには、2000年の11月に燃料電池の取材でアメリカへ行った際にロサンゼルスで初めて乗ったが、周囲の羨望のまなざしを強く感じたのを覚えている。そして、この春から日本にも輸入されることになった。MDXは、カナダで生産されている。

 日本への導入に際して、3.5リッターV6エンジンはパワーアップしているという。それでいて、超−低排出ガスの日本での認定と、国内の2010年燃費規制の先取りに適合しているのである。

 エンジンをかけても静かな高級車の雰囲気を備えたMDXで走り出そうとするとき、力にゆとりのあるエンジンは、2トンを超える重いクルマを静々と滑らかに動き出させる。その重厚な雰囲気が上質で心地よい。SUVも当初はトラックベースで作られたが、日本車を中心に乗用車ベースで快適性を重視したクルマが人気を高めつつあり、気分のいい感触がそれで実現した。

 MDXのV6エンジンは十分なトルクでアクセル操作のままに自在にスピードを変える。北米仕様はともかく、国内の3リッターV6エンジンを搭載したトヨタのハリアーでの失望感に比べ、MDXは上質なスピード感を楽しませる。

 それにしても、運転中の視界が非常に高い。プラットフォームのフロント部分はUSオデッセイ、すなわち日本名ラグレイトと共通であるということだが、ミニバンの視線の低さに比べると、高台にでも上った気分だ。それでも高速コーナリングで安定した姿勢を保ち、ドライバーを不安な気持ちにさせない仕上がりになっているのは好ましい。アメリカのフリーウェイは今日でも制限速度が55マイル/h(88km/h)と表示されるが、実際の流れは70マイル/h(112km/h)に達する。しかも日本の高速道路と違ってアスファルト舗装ではなく、コンクリートの板をつなげたような滑りやすく荒れた路面もある。そのような道路状況でも、これならば安心して運転ができるだろうと思う。

 しかし一方で、日本仕様はややサスペンションを硬めの設定にしているという。そのせいだろうか、路面の継ぎ目など小さな突起を乗り越えた際の衝撃がボディを伝わって体に響き、また、オフロード走行にも耐える大径タイヤがぶるぶると振動を残す。入ってきた衝撃力に対し、振動が収まりきらないのだろう。そこが、なんとも惜しい。

 サスペンションの動きに、もう少ししなやかさがあると高級さはいっそう増すことになるだろう。その点、デビュー間もなくアメリカで運転をしたMDXは、ボディがカーブでややロールするけれども、大きくて上質なSUVに乗っている嬉しさを体感できる走行感覚があった。日本仕様は、スポーティなのかもしれないが、上質さは薄れてしまっている。

 MDXはすべて四輪駆動だ。その前後トルク配分の制御には細心の注意を払ったとのことで、舗装路を運転している最中にギクシャクした動きや、駆動力が配分されることによる違和感は全くなかった。

 幅が2メートル近い大柄なボディは、日本では道を選ぶ場合があるだろう。今回の試乗はまだ雪の残る山間で行われたが、交互通行の必要な場所でとても無理する気持ちにはならない大きさだった。とはいえ、車幅感覚は掴みやすく、運転操作そのものは難しいと感じさせない親しみやすさがある。

 室内は、3列シートの7人乗り。3列目にも座ってみたが、さすがに大きなボディだけあって、座っていられないことはない。シートは3列目を除き本革が使われている。

 ボディカラーは、シルバーとダークグリーンと黒の3色である。その中では、パールの入った黒が、凄みも出てカッコイイと思う。