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Vol.65VOLKSWAGEN PASSAT W8 4MOTION

高級車の新しい境地を拓いた
VOLKSWAGEN PASSAT W8 4MOTION

 フォルクスワーゲンのW型エンジンが、パサートに積まれて登場した。直列エンジンやV型エンジンは馴染み深いが、W型は世界でも珍しく、私自身、運転をするのはこれが初めてだ。

 W型エンジンは、今後フォルクスワーゲンの多気筒エンジンを中心に中核となっていく技術といえるだろう。その性能を世界に知らしめるデモンストレーションとでもいうべき挑戦が、昨年秋にイタリアで行われ、W12と呼ばれるスーパースポーツカーが24時間の世界速度記録295.24km/hを達成している。W12型エンジンは、フォルクスワーゲンのフラッグシップとして登場することになるフェートンに今後搭載されることになっている。そしてW8は、その先触れとなるエンジンであり、パサートに搭載された次第。今回、日本に導入され、試乗の機会を得たのは、パサートW8・4モーションだ。

VOLKSWAGEN PASSAT W8 4MOTION

 W型エンジンが採用される前のパサートには、挟角15度という、V5、V6エンジンが搭載されてきた。通常、V型エンジンは、左右のシリンダーのバンク角が60度とか90度とかだが、フォルクスワーゲンの挟角15度のV型エンジンは、外観がやや太目の直列エンジンといった姿で、シリンダーブロックの中で、各シリンダーが一直線上ではなく微妙に左右にズレて並んでいる。こうすることで、各シリンダーの間隔を詰め、エンジン全長を短くできるわけだ。フォルクスワーゲンの挟角15度のV6エンジンの場合、その全長は直列4気筒並みである。

 前置きが長くなったが、この挟角15度のエンジンをV型に配置したのがW型である。すでに挟角15度の部分でV字を形成しているから、これが左右にVの字に並ぶことで、W型になるという具合だ。W8は、片側4気筒の挟角15度のエンジンをV字型に、左右72度のバンク角で配置している。W8の長さは通常のV6ほどの短さである。

 能書きはこれくらいにして、さっそく運転をしてみよう。W8のエンジン排気量は4リッターである。まずはその大排気量にまかせた大きなトルクの力を発進加速で感じることができる。アクセルを踏み込めば、1750kgもある4ドアセダンが、ホイールスピンを起こしそうなほどに、猛然と走り出す。この低速トルクの太さは、W8エンジンが大排気量であることに加え、吸排気両方に設けられた可変バルブタイミングの効果もあるはずだ。つまり、エンジン回転数の高低に合わせてバルブ開閉タイミングを変えられるので、常に最大の混合気をシリンダー内に吸い込むことができる。

 さらに回転を上げていってもW8は息苦しさを感じさせず、スルスルと回っていってしまう。6,000回転をやや超えたところからレッドゾーンが始まるが、そこまで目一杯回転を上げていってもまだ、勢いを衰えさせない。その高回転での感触は、トルクの力というより回転の威力で加速力を発揮するパワー感といえる軽快なものだ。ここが、W8の真骨頂といえると思う。

 停車中のアイドリングの排気音、あるいは体に伝わる振動は、V8エンジン以外の何ものでもないという大排気量エンジンらしい共通の趣がW8エンジンにもある。そこから猛然と走り出す発進加速も、V8的な味わいを持つ。ところがスピードを上げ、エンジンの高い回転域で走っていると、V12エンジンのように上質で滑るようなシルクの肌触りにW8は変身するのだ。これは、通常のV8エンジンでは体験できない感触だ。かといってV12エンジンでは、発進加速の際のやや暴力的な力ずくのV8らしい解放感は得られない。

 W8エンジンは、このようにV8とV12を併せ持ったような独特の特徴を備え、2つの味をいっぺんに食することのできる満足感がある。そしてこのエンジン特性は、5速オートマチックのギアレシオとも調和しており、どのギアでもアクセルオンで常に快い加速が得られるようになっている。

 W8エンジンを積むパサートは、4モーションと呼ばれるフルタイム4WD車だ。前後のトルク配分は50対50を基本としながら、走行状況に応じて75対25から25対72まで変えて走行する。アクセルオン・オフでの荷重移動を利用した運転をすれば、後輪駆動車の雰囲気を味わえ、275馬力のW8エンジンパワーを適確にスピードに結び付けていく。運転が楽しいと思えるクルマに仕上がっている。

 ただし、基本的には車重が1.5トンを超える重いクルマである。それが、あまりに軽快に走り回るものだから、ついオーバースピードのままカーブで道を飛び出してしまうのではないかと、一抹の不安を覚えさせる面がある。もちろん、タイヤのグリップを維持するEPSを装備しており、進路を外れるのを防いでくれるだろうし、そもそもオーバースピードはドライバーのミスだ。とはいえ、私の好みで言えば、もう少しグリップの感触が強く、接地性もしっとりとした粘性が感じられる種類のタイヤの方が、高級さと安心感の両面で、よりパサートW8・4モーションに合っているのではないかと思った。

 そうはいっても、BBSの鍛造2ピースホイールにまでこだわった足回りの軽快な動きと、適度にロールしながらコーナリングをしていく操縦安定性の高さ、そして乗り心地の快適さ・・・W8エンジンの魅力だけにとどまらず多くの面でパサートW8・4モーションは、高級車の新しい境地を拓いたと感じる。こうなると、W12エンジンを積むことになるフェートンとは、いったいどんな高級車であるのか。今から楽しみだ。