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Vol.80NISSAN TEANA
日産のデザインは近年、目を見張るものがある。特にインテリア・デザインにおいて、マーチ、エルグランドなどの印象は強く残り、ティアナもまた、思わず乗ってみたくなる装いである。 クルマを選ぶとき、エクステリア・デザインと呼ばれるスタイリングやボディカラーは大切だ。その上で、やはり気になるのはインテリアである。クルマと接する多くの時間は、そのインテリアに囲まれた室内で過ごすからだ。 木目を活かした棚のような形のダッシュボードは、機能的にも明快であり、印象はよい。ソファーのような形のシートも、シンプルなデザインの中に快適さが表現されていて、座ってみたくさせる魅力がある。そして単に見た目のよさだけでなく、開発者自ら長時間座って運転して作りこんだシートであるという。実際は、まだ運転中に疲れが出るところもなくはないが、クルマのシートとして使い物にならないような見掛け倒しでないのは座り心地から伝わってくる。欲しい、と思わせる魅力がティアナのインテリア・デザインにあると思うし、機能面でもクルマとして十分に成立している。 一方で、素材選びではやや失望感もある。木目の光沢の淡さについては好みもあるだろうが、個人的には質の良さをあまり感じにくく、奥行きのない合板のイメージを抱いてしまった。また、ドアトリムの樹脂の部分については、色合いとの調和もあるのだろうが、いかにも安いプラスチックといった見た目であるのが残念だ。もしそれがあまり目に触れない場所であるなら気にもならないのだろうが、ダッシュボードに連なるドア・トリムの部分であるため、知らぬ間に視野に入り、素材の貧相さが気になって仕方がなくなる。 チープ・シックという言葉があり、思い切った簡素さは時に効果的ではあるけれども、洗練された大人のための高級セダンが売り文句のクルマには、それ相応の質の高さを見せてもらわなければ興醒めしてしまう。洗練さ、という点では、ティアナの走行感覚にも気分のそがれる部分がある。いわゆる操縦安定性という運動性能でティアナは、大柄なFF車に似合わぬスポーティで楽しいハンドリングに仕上がっているのは好ましいが、洗練さや、高級であるかどうかどうかという意味では、上質さが物足りない。 V6エンジンのクルマが225万円から買えるお得感には心を動かされるが、インテリア・デザインが洒落ていて、V6エンジンを積んでいるという、ティアナの位置づけからすると、もっと質の高い走りを求めたくなるのが偽らざるところだ。独創的な、いい要素を持っているのに、一台のクルマとして見たり、感じたりしたときに、チグハグさが出てしまっている。 それを忘れさせるのは、同じV6エンジンでも排気量の大きい3.5リッター車のほうだ。車重が数十キロ重くなることで重厚さが出ているのだろうし、この大排気量エンジンにしか採用されないCVTの効果も絶大のはずだ。大排気量で低速トルクにゆとりがあることと、無段変速とによる、力強く滑らかな加速は、洗練された高級車と呼ぶにふさわしい。 CVTは、日産では前マーチから採用が始まり、永い間小型車のためのオートマチックと思われてきたが、開発者の言葉によれば「元来、低速トルクにゆとりのある大排気量車にこそ適したオートマチック・トランスミッションである」のだそうだ。これまでは、大きなトルクに耐えられるものを作れなかっただけとのことである。 ティアナに採用されるベルト式CVTは、世界でもっとも大きなエンジントルクに適応しており、北米市場向けSUVのムラーノには全車採用であるという。アウディでも、2.4リッターエンジンにチェーン式CVTが採用され、快適さと走りの滑らかさの両立したいいクルマに仕上がっている。CVTが、次第に大排気量車に普及し始めており、FF高級車にとって今後さらに注目される技術になっていくだろう。 デザインの良さと、走って心地良い、その言葉どおりに洗練された大人の高級車ティアナとなると、3.5リッターV6エンジンにCVTの組み合わせを選ぶべきだ。その結果、値段は284万円からとなり、結局300万円前後のクルマにならざるをえないのだが、高級とは、それなりのお金によって手に入るもので、安く買おうとすればそれなりの我慢をせざるを得ないことをこのクルマは教えている。 |
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