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Vol.2AUDI TT COUPE
アウディTTクーペは、ドイツのモーターショーで4年前に展示されたデザインスタディモデルから市販にうつされた、いかにもアウディらしいスポーツカーだ。 どこがアウディらしいのかというと、空力を意識した独特のスタイリングと、225馬力のターボエンジンパワーを存分に走りに引き出すための4WD(4輪駆動)システム、クワトロを採用している点だ。 アウディは、ドイツの自動車メーカー5社が最終的に1969年に統合され、今日に至るが、その過去を紐解けば、すでに100年の歴史を刻む自動車メーカーである。第二次世界大戦前、アウディがアウトウニオンと呼ばれていた時代をここで少し振り返ってみると、当時すでに空力に注目したスタイリングを採用し、FF(前輪駆動)車の技術を持ち、そしてグランプリレースにおいてはメルセデス・ベンツと覇を競い合い、フロントエンジン時代にミッドシップのレーシングマシンを投入するなど、先進技術において特色ある自動車メーカーとして名を馳せていた。 しかし、70年代から80年代初頭にかけてのアウディといえば、悪いクルマではないが、パッとしない、地味なFFセダンを作るメーカーという印象しか与えていなかった。とくに日本では、VWビートルに続きVWゴルフもドイツ車らしい質実剛健な名車として人気を得る一方、アウディの名を知るのは、ごく一部のクルマ好きでしかなかった。たぶんそれは、世界的にもそうであったのだろう。それが証拠に、アウディは80年代に入るや、それまでの地味なイメージを払拭すべく新たなる挑戦に打って出るのである。 アウディ・クワトロの登場である。それまで、4WDといえばジープのようなオフロードを走るための機能だと思われていた。ところが、アウディは舗装された道路をより速く、そして安全に走るための技術として4WDを乗用車に採用したのだ。クワトロとは、イタリア言で4。4WDであることをアウディはその言葉で表現した。そしてアウディ・クワトロは、ドイツのアウトバーンを我もの顔で走った。 アウディ・クワトロの衝撃はそれだけではなかった。世界ラリー選手権にアウディはクワトロを投入。2WDの他車を圧倒する速さでチャンピオンを獲得。以来、今日に至るまでの17年間、世界ラリー選手権の覇者は4WD車で埋め尽くされるのだ。またアウディは、ラリーでの勢いを駆ってアメリカのレースへも進出。そこでも無敵を誇る。ヨーロッパでのサーキットレースでも、クワトロの活躍は華々しかった。こうして、クワトロトいえばアウディと誰もが思い出すほど、舗装路での4WD技術とアウディは強く結び付けられたのである。 また、クワトロと同じ時期に、アウディは空気抵抗の少ないスタイリングのセダンを世に送り出した。82年のアウディ100は、空気抵抗係数Cd値0.30という優れた空力特性を持つ4ドアセダンとして登場。以来、空力=アウディというイメージも強く印象づけ、さらに94年に登場するアウディA4によって、美しいスタイリングのセダンというデザインの魅力も加えることになった。 革新的技術に裏付けられた新しいクルマの魅力を追求するアウディ。そのスポーツカーとして誕生したのが、アウディTTクーペである。前置きが長くはなったが、そういう意味で、アウディTTクーペはいかにもアウディらしいスポーツカーなのである。 スタイリングは、他のどのクルマとも異なる独創性を持ち、しかも非常にシンプルかつ論理的デザインでもある。空力に優れるのはもちろん、全長わずか4メートルしかない車体の四隅ぎりぎりにタイヤを配置し、クルマの操縦安定性の要となるタイヤ性能を最大限に発揮させる配慮が見られる。4人乗りで、小型大衆車クラスでしかないボディサイズは、軽量コンパクトという、スポーツカーのセオリーを追求した成果だ。 運転席に乗り込むと、フロントウインドウの枠となる左右のAピラーが、まるでツーリングカーレース車のロールケージのように見え、本革で仕上げられた室内は、ステアリングホイール、センターコンソール、シフトレバー、ベンチレーションダクトなどにアルミが使われ、ステンレス製ペダルとともに機能を追求したレーシングカーの風合いを持つ。走り出す前から、アウディTTクーペを運転することへの期待に胸をときめかせざるをえない雰囲気に包み込まれるのだ。 排気量1,800ccのターボエンジンは、アクセルをわずかに踏み込む程度の2,000回転で最大トルクを発生する。そのため、スポーツカーとしては小さな排気量ながら、そこからは想像できないほど力強い加速をし、その景色の流れに目が追いつかないほどだ。260km/hまで目盛られたスピードメーターの数値が、そのとき現実味を帯びてくる。しかし速度制限の厳しい日本国内では1〜3速ギアまで使うのが精一杯で、とても6速ギアまでシフトアップする機会は得られないだろう。 かつて、アウトバーンで後ろから迫り来るアウディ・クワトロに強烈なパッシングライトをあびせられた記憶がよみがえった。アウディTTクーペは、まさにそうした交通環境から生まれたスポーツカーであり、その性能の片鱗しかうかがい知ることのできない日本では、欲求不満がたまる一方かもしれない。だが、それほど速い。アウディTTクーペは、アウディの総力が結集された、最新鋭のスポーツカーである。 |
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