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Vol.96MERCEDES-BENZ VANEO

メルセデスが作る「家族のクルマ」

 メルセデス・ベンツのラインアップに新しく加わった、コンパクト・マルチ・パーパス・ビークル(多目的車)のバネオは、日本車では、たとえばカローラ・スパシオほどの大きさのクルマだ。

 ベースとなっているのは、メルセデス・ベンツAクラス。

 未来のシティコミューターを模索した「ビジョン93」を基に量産化されたAクラスは、電気自動車も視野に入れたサンドイッチコンセプトと呼ばれる二重構造の床を持つが、バネオも同じ床構造を備え、その結果、客室から荷室まで、全く平らな床が実現している。

 これほど徹底して真っ平な床というのは、めったにあるものではない。そして、バネオの後席を折りたたんで前方へ倒しこみ、広い荷室を得たうえでリアハッチゲートを開けてみると、商用バンに匹敵すると思える大きな空間が得られる。

 バネオは、Aクラスのロングボディタイプよりさらに40センチ以上も全長が長く、屋根の高さは1.8メートルを超える。その室内の床がスッキリと平で、リアハッチゲートはバンパーの高さから跳ね上げられるので、物の出し入れは非常にやりやすい。

 後ろのドアは、スライド方式が採用され、それによって間口が大きいため、クルマの横からの物の出し入れもしやすいはずだ。また、スライド式ドアは、採用するクルマによっては開け閉めの作動が重く、女性などに負担を感じさせることもあるが、バネオの場合は操作が非常に軽いのも印象に残った。ただし、開けた時にはしっかり最後まで開け切って、確実に固定されたのを確認しないと反動で閉じてきてしまいそうになるのには注意が必要だ。

 スライドドアに関してはもう一点、室内から開ける際、ドアの取っ手と、ドアロック解除のボタンの位置関係がやや手に馴染みにくく、力を入れにくいなどの不便さがある。

 平らな床を実現するサンドイッチコンセプトの床は、二重構造であるがために道路からの位置が高い。フロントシートに腰掛ける場合は、腰から先にシートに下ろし、そして足を車内に引き込めば問題ないが、後席への乗り降りにはステップを踏むように足から先に上がり込まなければならないため、その床の高さが、子供や高齢者には負担になるかも知れない。

 こうした日常の使い勝手においては、日本の小型車や軽自動車の方が、モデルチェンジサイクルが早いこともあって、日々前進しているといえる。Aクラスは、燃料電池車としてまさに次世代を視野に入れた開発に貢献するなど、小型ながら安全かつ環境への取り組みの最先端を行くクルマであり、バネオもその延長線上に生まれたマルチ・パーパス・ビークルだが、ユーザーの視点からの使い勝手では、日本の多目的車に一日の長がありそうだ。

 一方、メルセデス・ベンツらしさが存分に発揮されていると実感するのは、バネオの走行性能である。

 サンドイッチコンセプトは、結果的にクルマの重心を高くせざるを得ないうえ、ボディ全高が1.8メートルを超えるバネオの背の高さによって、カーブを曲がったときの不安定さが懸念されるが、いざ、高速道路に乗り込んでみると、それまでの心配をすっかり忘れさせる快適な走りをバネオはして見せた。

 Aクラスより、さらに長いホイールベースと、さらに広いトレッドも、走行安定性の確保に役立っているだろう。4つのタイヤ間の距離というのは、たとえ数センチの違いでも、走りの安心感や、快適性に大きく影響を及ぼすものだ。

 

 また、そっけないほど真っ直ぐなデザインの、ボンネットフードからフロントウィンドウに掛けてのバネオのスタイルは、運転席からの前方視界のよさを十分に考慮したものであることが、運転をしてみると分かる。

 昨今、空気抵抗を減らすためにフロントウィンドゥを大きく傾斜させたクルマが多いが、その結果、斜め前の視界を悪化させた例が後を絶たない。ところが、さすがメルセデス・ベンツである。アクティブセーフティに最も重要な視界の確保に怠りはないのである。

 そして、ハンドルを切ったときの手ごたえ、ブレーキをかけた際の確実さと信頼感も、他のどのメルセデス・ベンツに乗ったときと同じ安心感をバネオは備えている。

 2列目の後席シートは、リクライニング機構を持たない。そのことに不満を覚える人もあるかもしれない。だが、このシートは長時間乗り続けても疲れにくい形状と姿勢をもたらすもので、リクライニングさせないことによってシートベルトの正しい装着も約束する。エアバッグが何個装備されようが、シートベルトの正しい装着こそ、衝突安全における人命確保の第一歩であるからだ。

 あえて、メルセデス・ベンツの多目的車を選ぶ理由は、やはりここにあると思わせる。

 3年間、走行距離無制限の無料修理およびメンテナンスと、24時間のツーリングサポートによる、メルセデス・ケアというアフターケアの安心も、他のメルセデス・ベンツと同様である。

 メルセデス・ベンツが作る、家族のためのクルマである。