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国内市場に期待する太陽電池

 欧州需要の停滞により太陽電池の世界市場は厳しい状況が続いている。しかしながら、日本国内の市場は様相が異なる。システム価格の下落を背景に新築住宅向けの裾野拡大に加えて、2012 年7月からの全量買い取り制度の開始により非住宅向け市場の立ち上がりが予想されるからだ。

1.本格的な拡大期に入った国内市場

 太陽電池の国内市場が堅調だ。太陽電池の2011 年7-9 月の国内出荷量は348MW(前年同期比28.7%増)と過去最高を更新し、2011 暦年でも1200MW超(2010 暦年992MW)になったと推測される。日本国内需要のうち8 割以上を占める住宅用が、余剰電力買い取り制度のスタート(2009 年11 月〜)を受けてから順調に拡大しているのだ。

 非住宅用は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下再生エネ法)」の成立による買い控えの影響から2011年7-9月こそ停滞したものの、余剰電力買い取り制度のスタート以後は拡大している。今後も太陽光発電システムの価格低下(売電益利回りの上昇)や再生エネ法による全量買い取り制度のスタート(2012年7月〜)などにより、太陽電池の国内需要は拡大が続くと予想される。



2.新築向けに期待する住宅用太陽光発電システム

 日本の太陽電池需要は住宅用が中心であったが、なかでも戸建住宅の既築向けのウエートが伝統的に高い。2011年では約7割が既築向けだったと推測される。しかし2009年に余剰電力買い取り制度がスタートしてから、状況は変わった。積水ハウス や大和ハウス工業、など大手ハウスメーカーを中心に新築向け需要が高まっているのだ。

 例えば、積水ハウスの新築戸建請負における太陽光発電システム契約実績は2008年度2071棟、2009年度7030棟、2010年度10931棟(2011 年度目標12000棟)と拡大し、太陽光発電システムの搭載率は7割を超えた。

 太陽光パネル価格の下落を背景にシステム価格の下落も進み、今後は普及拡大に弾みがつくと予想される。国内住宅用平均システム価格は余剰電力買い取り制度導入前の2009 年7-9 月で64.7 万円/kW(1件当たり平均設置容量3.80kWで1件当たり246万円)だったが、2年後の2011年7-9 月には52.9 万円/kW(同4.28kW、226万円)と2割近く下落した。



 なかでも新築向けは47.5 万円/kWと既築向け(54.7万円/kW)に比べて割安だ。設置採算も向上しており、今後は新築向けシステムの普及に拍車がかかると予想される。つまりシステム普及が、高価格帯中心の大手ハウスメーカー向け(新築住宅市場の2割強を占める)から比較的安価な中小住宅メーカー、工務店向けへと広がろう。

 中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルは家電量販最大手のヤマダ電機と資本業務提携し、太陽光発電システムとリチウムイオン蓄電池などを組み合わせた光熱費ゼロのスマートハウジングを展開、2014年度に全社の売上棟数4900棟(2010年度1470棟)を目指している。

 また経済産業省ではスマートハウスの標準化を検討している。スマートメーターやHEM S(Home Energy Management System)とともに太陽光発電システムはスマートハウスの必須アイテムになると期待される。



3.全量買い取り制度に期待する非住宅向け市場

 2012年7月から全量買い取り制度がスタートする(2011年8月26日に再生エネ法が成立)。全量買い取り制度とは、電気事業者が再生可能エネルギー源(太陽光、風力、地熱等)で発電された電気を一定価格・一定期間で全量買い取ることを義務付ける制度である。

 欧州でのフィード・イン・タリフ制度と同じく固定価格での全量買い取りとなる。このため、売電目的の事業者が参入しやすく、これまで日本で遅れていた非住宅向け太陽光発電システムの普及が期待される。

 買い取り価格や買い取り期間については、中立的な第三者委員会(調達価格等算定委員会) の意見に基づき決定される。現時点では決まっていない。委員の任命など政治的な不透明要素もあるが、「集中的な再生可能エネルギーの利用拡大を図るため、法の施行後3年間は買取価格を定めるに当たり、再生可能エネルギー電気の供給者の利潤に特に配慮すること」としており、実際の買い取り条件が決まれば部材調達などの具体的な動きが出てこよう。

 全量買い取り制度の開始により、様々な形での太陽光発電事業への参入が予想される。既にメガソーラー計画として取りざたされたものも多い。ソフトバンクの孫正義社長と全国35道府県が参加する自然エネルギー協議会は、全国10数か所以上でメガソーラー設置に向けた事前手続きに入っている模様である。

 また、三井物産・東京海上アセットマネジメント投信のように「安定的な利回りが見込める金融商品」としてメガソーラーに関する投資ファンドを考えている企業グループもある。さらにサンエジソン(米国) のように海外でのメガソーラー造営の実績を持つ企業が日本市場への参入を狙うケースも見受けられる。



4.国内市場の拡大を享受する太陽電池関連企業

 国内太陽電池市場は拡大するが、すべての太陽電池関連企業が市場拡大の恩恵を受けるとは限らない。理由は、(1)依然として海外市場の動向は不透明で、当面は海外向け売上高の減少が足を引っ張る可能性がある、(2)国際競争力が低下しているため、海外市場でのシェアダウンや価格下落の影響を大きく受ける可能性がある、(3)国内市場での輸入製品増加により、国内市場でのシェアダウンや価格下落の影響を大きく受ける可能性がある、などを指摘できよう。

 このため、内需型ビジネスに特化した太陽電池関連企業、なかでも太陽光発電システムの設計・施工や流通に強い企業が注目されよう。国内太陽電池市場拡大という観点から太陽光発電システム施工で国内トップ級のウエストホールディングス、太陽光発電システムの設計受託に注力するエプコ、太陽光発電システム卸売で既築住宅向け実績首位の高島などである。

鈴木東陽(すずき・とうよう) 日本証券アナリスト協会検定会員。証券専門紙や経済誌、三洋経済研究所、いちよし経済研究所などを経て、現在、いちよし証券シニアアナリストとして、投資セミナーや経済講演などに従事。
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2012年2月22日  読売新聞)

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