現在位置は
です

投資講座

一覧
本文です

ドル全面安地合いのなか、欧州版ストレステスト結果待ちに

1 概況:弱い米指標を受けてドル全面安の展開

 週初のドル円相場は88円後半でオープンした後、参院選での与党敗北を受けて円売り地合いとなり、週高値89.15円まで上昇したが、英国債の格下げ懸念等を背景とするクロス円の売りに88円割れ目前まで下落。いったんは本邦勢のドル買いに89円台を回復したが、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録がハト派(緩和的な金融政策)の内容だったことや2010年の経済成長見通しが下方修正されたことから、ドル円は再び88円前半まで反落した。

 その後発表された米指標(生産者物価指数、NY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀景況指数)が軒並み弱かったためドル全面安の展開となり、さらに米消費者物価も落ち着きを示し、ミシガン大消費者信頼感指数が予想を大幅に下回ったことから、ドル円は週安値86.27円まで値を下げた後、86円なかばで引けた。

2 見通し:深まる米経済の二番底懸念にドル下落し易い地合い

 今週のドル円相場は上値の重い値動きを予想する。今月発表の米雇用統計(非農業部門雇用者数)が予想を下回ってから、市場参加者の関心はもっぱら「米経済の二番底懸念」に向けられている。最近の米経済指標全般が市場の失望を誘っており、米金融当局もそれを裏打ちするかのように経済見通しを下方修正したため、米景気先行き不透明感が強まっている。

 さらに、消費者物価が前月比で3か月連続マイナスとなるなど、物価上昇圧力も弱いため、市場の米利上げ期待は来年後半まで大きく先送りされている。今年前半はユーロ安というテーマが為替市場を支配してきたが、台頭してきた米経済の二番底懸念に由来するドル全面安の流れのなかで、ユーロドル相場は先週1.30台を一時回復した。目先は、ドル安方向への値動きに引き続き注意が必要だろう。

 今週の注目は、まずは米住宅関連指標であり、20日、米住宅着工・建設許可件数、22日、米中古住宅販売件数及び米住宅価格指数。

 住宅部門は米政策支援の終了で先行きが懸念されるセクターであり、予想を下回るようなら素直にドル売りになる可能性が高い。また、21日のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言も、FOMC議事録や成長見通し下方修正の内容を確認する意味で注目したい。

 最大の注目は、23日に公表される欧州版ストレステストの結果だ。最近は市場の目が欧州から離れてはいるものの、市場に安心感をもたらす内容ならば、ユーロ相場に好影響を与えるのはもちろん、世界経済の重石になっている欧州経済の先行き不透明感の払拭から世界的な株価の上昇につながる可能性がある。その場合、グローバルな投資家のリスク許容度改善から為替市場は円安に振れ易くなるため、目が離せない。

 なお、先月後半からのドル安円高は、世界経済にショックが加わった時に生じる「リスク回避の円買い」ではなく、「米景気先行き懸念からくるドル安」だ。「円」が為替相場をリードしているわけではないため、一本調子のドル安円高は想定し難い。世界の株式市場も足許下落一辺倒の状況にはなく、米金利低下がリスクテイクを促す面も考慮する必要がある。

 直近のIMM通貨先物の非商業部門(投機勢)の建玉は47,359枚と、今年最大の円買いポジションとなっており、予想外に良好な米指標等が出た場合のポジション調整には注意しておきたい。

3 ズバリ:今週の予想レンジ

予想レンジ
85.00〜88.00円

欧州版ストレステスト

 欧州の銀行の健全性を調べる資産査定(ストレステスト)の結果が、23日に公表される。対象行は、当初予定の20〜30行から91行に広げられ、欧州の銀行資産の65%が査定されることになっており、国債のデフォルトリスクも織り込まれる。銀行に対して甘い査定になるのではとの市場の疑念に対して、比較的厳しいストレスが加えられると報じられており、市場の注目は非常に高い。

 今回のストレステストの問題点は、現状、資本不足と判断された問題行に対して円滑に資本注入がされる枠組みが必ずしも整備されていないことだ。13日の欧州連合(EU)財務相理事会では、資本増強には最終的には7,500億ユーロの欧州安定メカニズムが使用できると決められたが、その資金の一部はユーロ加盟国の満場一致でないと発動できず、また残りの一部は国際通貨基金(IMF)融資である。いずれにしても簡単に使える資金ではないため、自力増資や各国による公的資金注入が困難な場合の対応が懸念される。

 昨年、米国でストレステスト結果が公表された際は、不透明感の払拭につながり、銀行株の上昇に寄与した。今回も同様の展開を期待する向きもあるが、昨年とは経済環境が大きく異なる。

 まず、昨年は世界的な財政拡大局面にあったが、今年は世界的に財政緊縮化が進められる。また、昨年は世界的な金融緩和が実施されていたが、今年は特に欧州を中心に国債の信用力格差が広がっており、結果的に長期金利が上昇している国も多く、意図せざる金融引き締めが発生している。

 さらに、昨年は中国を中心とする新興国経済への期待が強かったが、今年は中国の不動産バブルへの不安が生じている。昨年は世界経済の環境が上向きだったが、今年は横向きないしは下向きと考えられ、昨年と同様の先行き不透明感の払拭ができるかについては、疑問が残る。

 最近は市場の目がユーロ相場からやや離れているが、世界経済の先行き不透明感が強まっている現状では、ストレステスト結果公表を契機にユーロ上昇相場が転機を迎える可能性があることに十分留意しておきたい。

 ※ドル円相場は、みずほコーポレート銀行の取引によるものです。

プロフィール
荒井 守  (あらい・まもる)
みずほコーポレート銀行 国際為替部


みずほコーポレート銀行国際為替部の為替ディーラーが執筆を担当します。(「先週」「今週」などの表記は、執筆日を基準にしています)
2010年7月20日  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です