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日米の金融姿勢、ベクトルは同方向に

1 概況:ドル円相場は終始堅調に推移

 週初、材料に乏しく動意薄く推移したドル円相場は14日に米格付け会社がイタリア、スペイン、ポルトガルを含む欧州6か国の格下げを発表したことから、ユーロ円相場が下落する動きに、ドル円相場も連れ安となり、一時週安値となる77円36銭まで水準を切り下げた。

 しかし同日、日本銀行が政策決定会合で追加緩和(資産買い入れ等基金を10兆円増額)を決定したほか、物価政策も明確化したことで円売りが加速し、78円台前半まで急騰した。

 週央15日には、欧州に関するヘッドラインでユーロ相場が乱高下となるも、ドル円相場では前日の日銀の追加緩和を背景とした円売り地合が継続。また、同日発表された米1月連邦公開市場委員会(FOMC)議事録も期待されていた程ハト派な内容ではなかったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的金融緩和の第3弾(QE3)に対する期待感が後退し、ドル買い戻しが一層強まり78円台半ばまで続伸。

 16日には、発表された米新規失業保険申請件数が4年ぶり低水準になった事や、米1月住宅着工件数の予想を上回る結果を好感し、ドル買いから78円台後半まで上昇。

 また、17日にかけてはギリシャの第二次支援獲得への期待感の高まりから、リスク選好に伴う円売りが一段と加速するなど、週を通じて堅調な地合が継続した。結局、政府・日本銀行が大規模円売り介入を実施した2011年10月31日以来のドル高値79円55銭を突破し、ドル高・円安が進行、週高値の79円62銭をつけ越週した。

2 見通し:方向感の出にくい展開を予想

 今週の相場を3つのポイントから見てみたい。

 第一に「円安要因」である。意外感を突いた日銀の金融緩和や日本の経常収支悪化見通しがくすぶり始めていることもあり、足元の日本側の円安要因が強まっている。20日に国内1月貿易統計が発表されるが、これまで発表されているデータから1月は過去最大の貿易赤字となることが見通されており、円安に振れる場面も想定される。

 第二に「テクニカル面」である。足元のドル円相場を見てみると、昨年4月以来初めて200日移動平均線を突破した。また、一目均衡表に目を向けると、週足の基準線と転換線がゴールデンクロスしていることから、ドル円上昇のモメンタムが強まっている。週足の「雲」の下限79円73銭を突破できれば、心理的節目の80円、さらには前々回の為替介入(昨年8月4日)時のドル高値80円25銭を目指す展開もあるだろう。

 第三に「ドル高要因」である。最近発表された米経済指標は総じて良好な結果となったことから、QE3への期待感が薄れ、ドルが上昇している。22日発表の米1月中古住宅販売、24日発表の米新築住宅販売が市場予想を上回る内容となれば、ドルの上昇は続くだろう。

 ここまで「円安・テクニカル面・ドル高」などドル円相場の上昇圧力を強調してきた。しかし、ドル円相場のトレンドを決める本質的な材料は米国の金融政策と見ている。今後短期間でFRBが時間軸政策を大きく変更し、ドルの過剰流動性が解消されるとは考えにくい。日米金利差の観点からも、米国2年債利回りのレベルが急激に上昇し、二国間の金利差拡大が進むことは考えにくく、ドル円のさらなる上昇余地には限界があるだろう。今後の米金融政策を占う上でも、今週は24日に開催されるダドリー・ニューヨーク連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁の講演に注目したい。

3 ズバリ:今週の予想レンジ

予想レンジ
78.00〜80.50円

日米金利差から見るドル円の行方

 従来、為替レートは通貨間の交換比率あるいは相対価格であると言われており、ここ数年の間は通貨間の金利差との相関性が高い。過去のドル円相場と日米金利差の推移を見ると、金利差縮小の場面では円高進行、拡大場面では円安進行するなど、両者は相対的に連動性が高い。また日本銀行の白川総裁も「ドル円レートは2年物国債の日米金利差と相関が高い」と過去に言及していることもあり、「為替を読む」うえで金利の動向は注目される。

 米国金利に目を向けてみると、1月25日に開催されたFOMCの会合後の声明文の中で、FRBは、前回まで「少なくとも2013年半ばまで」としていた利上げの時期を「少なくとも2014年遅くまで」とし、それまでの異例な低水準の金利を維持するなど、超低金利政策に付加している「時間軸」の表現を変更した。

 FRBの発表後、低金利政策の長期化観測からドル売りが進行し、ドル円相場でも1月末に一時76円に接近したことは記憶に新しい。一方、円金利はどうか。大半の市場関係者の予想に反し、日本銀行は先週全員一致で追加緩和を決定、資産買い入れ等の基金を10兆円増額すると発表した。またFRBが1月に導入したインフレ目標にならい、日銀も金融政策運営における物価面の指針を「消費者物価の前年比上昇率で2%以下、当面は1%を目処」としたことで、緩和姿勢を長期に渡って維持することをより明確にした。今回の決定は市場でサプライズとして捉えられたこともあり、円は全面安となり、足元のドル円相場は79円台を回復している。

 しかしながら、米金融政策(低金利政策)の時間軸延長の決定を受けての「ドル安」、日本の長期追加緩和姿勢の維持決定を受けての「円安」は一時的なイベントによる動きであり、白川総裁自身も金融政策決定後の会見等で、「お金の量を供給するだけで、ただちに物価上昇率が1%から2%と上がっていくかというのなら、必ずしもそうではない」「物価上昇率1%にはまだまだ距離がある」と述べているように、金利差はより長い目で見なければならない。

 先月から今月にかけて明らかになったことは、日米ともに金融当局が長期的な金融緩和姿勢をより強めたということで、両国の金融政策のベクトルはほぼ同じ方向を向いた。これにより、両国の金利は当面低水準にとどまり、金利差拡大も当分見込みにくくなったと言えるだろう。今後、思惑や一時の勢いで相場が大きく振れる事があるかもしれないが、実際に金利差の変動を伴わなければ円安トレンド定着とまではいかないのではないだろうか。

 ※ドル円相場は、みずほコーポレート銀行の取引によるものです。

プロフィール
松村 美緒  (まつむら・みお)
みずほコーポレート銀行 国際為替部


みずほコーポレート銀行国際為替部の為替ディーラーが執筆を担当します。(「先週」「今週」などの表記は、執筆日を基準にしています)
2012年2月20日  読売新聞)

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