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日本式地デジ、南米攻略 

5か国・3億人市場を獲得

 ブラジルやペルーなど南米主要5か国が、日本方式の地上デジタル放送を相次いで採用した。技術力の高さや日本政府の積極的な売り込みが奏功し、国際展開で先行していた欧米を巻き返した格好だ。ただ、テレビなどの販路拡大という“商機”をいち早くつかんだのは、日本メーカーではなく韓国メーカーだという皮肉な状況もみられる。(リマで、池松洋)

熱気

リマのテレビ局で技術指導を行う阪口さん(右から2人目、池松洋撮影)

 ペルーは今年4月に日本規格採用を決め、来年3月に試験放送を開始する予定だ。NHKから国際協力機構(JICA)に出向し、同国で地デジのアドバイザーを務める阪口安司さん(42)のもとには、アンテナ塔設置や携帯端末向け放送(ワンセグ)の準備など、テレビ局関係者からの相談がひっきりなしに寄せられている。

 たった一人で相談業務をこなす阪口さんは、「ペルーは日本の地方放送局よりも小さい放送局が多い。高度成長期を迎えた熱気を感じる」と意気込みを語る。

 ペルーのホルヘ・クーバ交通通信副大臣も読売新聞のインタビューに対し、「デジタル放送は、テレビの難視聴地域を減らし国内の情報格差解消を図る重要な手段。技術・資金面で日本の支援を期待している」と述べている。

適合

 地デジの国際規格には欧州、米国、日本の3種類がある。規格策定が欧米より5年程度遅れた日本だが、南米では全人口の4分の3以上にあたる約3億人の市場を押さえた格好だ。

 日本方式は、欧米方式より電波障害に強く、山岳地やジャングルなど過酷な自然環境が多い南米では優位とされていた。ワンセグと通常のテレビ放送が一つの送信機で可能という利点もあった。

希有

 日本政府の巧みな売り込み攻勢も見逃せない。

 まず南米最大のブラジルに狙いを定め、技術協力の提案も含めて強力な営業を展開した。ブラジルのデータ放送技術を取り込み、画像の圧縮送信技術も日本よりも向上させ、「日本とブラジルの共同開発」として周辺国に売り込んだ。

 日本から技術者を派遣したり、採用国の技術研修を日本で行ったりするなど、「売りっぱなし」の欧米と比べた手厚い支援体制も高く評価された。

 サッカーの2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会までにデジタル放送を開始したいという各国の思惑もあり、「外交的に日本規格が勝利を収めた希有(けう)な例」(駐ブラジル日本大使館の臼田昇1等書記官)となった。

対応TV販売は「敗北」 韓国勢先行

 南米向けのデジタル放送機器を強力にアピールしているのは、サムスン電子とLGエレクトロニクスの韓国勢だ。両社は大規模な宣伝・販促、南米向けの商品開発・展開を急速に進め、「3億人市場」で圧倒的なシェア(占有率)を築きつつある。

 2007年に日本方式の放送を始めたブラジルでは、今年9月末の薄型テレビのシェアで韓国2社が60%を占め、日本勢はソニーとパナソニックの上位2社で計20%に過ぎない。ペルーでも、韓国メーカーの技術者が連日のようにテレビ局や政府関係者を訪れる一方、日本メーカーの姿はほとんど見られないという。

 日本メーカーはこれまで、南米市場について「地理的に遠いうえ、安価なテレビが主流であるため、重要視していなかった」(電機大手)。

 日本政府関係者は「ブラジルでテレビを現地生産している点では日本も韓国も同じ。日本メーカーは腰が重過ぎる」と歯ぎしりしている。

2009年11月24日  読売新聞)
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