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読売ウイークリー

“ガンプラ”累計3億7000万個

30代が支えるガンダム人気

27年前に誕生した「機動戦士ガンダム」の“進化”が止まらない。プラモデルが次々と発売され、3月には「新訳」をうたった映画の完結編が公開される。「ガンダム世代」と呼ばれる、かつての視聴者が作り手側に成長。注目を途切れさせない循環が出来ていることが、ブームを持続させている。

本誌 渡辺理雄/撮影 明田和也

 東京・大手町の地下鉄駅構内に1月、「ガンプラ」と呼ばれるガンダムのプラモデルの大型ポスターが掲示された。スーツ姿のビジネスマンが行き交うビジネス街で、大型プラモデル商品「Z(ゼータ)ガンダム」の新発売を告げている。

 商品は接着剤なしで組み立てることができ、彩色は不要。何より部品の入れ替えをしなくても、ロボットから飛行タイプに完全変形できる。価格は5250円という、“大人価格”だ。立ち止まり、ポスターをじっと見つめる30歳代らしきビジネスマンの姿も。記者も気持ちは分かる。うんうん、懐かしいね。

かつてのファンが今や作り手

発売から26年。ガンプラは一大ジャンルを築くまでに発展。見よ、このリアリティーを(手前右が新発売のZガンダム)

 メーカーのバンダイ(東京・台東区)によると、駅構内にポスターを張るという商品広告は今回が初めて。ガンダムは四半世紀を経て、ビジネス街に進出したのだ。

 機動戦士ガンダムは、1979年4月から1年近くにわたって全43話で放映されたテレビアニメ作品。地球連邦とジオン公国の戦争が物語の柱で、多くのロボット兵器(モビルスーツ)が登場する。

 ガンプラは、これらのモビルスーツをプラモデル化したもので80年7月に発売され、小・中学生を中心とするファンが商品を求めて行列した。翌81年に2500万個を売り上げたという。

 それから26年、アニメが断続的に放映されて子どもたちの熱い支持を得る一方、ガンプラは一大ジャンルとなり商品アイテムは1000以上に及ぶ。価格は初期の300円から、3万円近い高級キットまでそろい、累計販売個数はなんと3億7000万個である。この2月には、新しいガンプラ専門工場が稼働を始めた。

 なぜ、これほどのロングセラー商品になっているのか。バンダイの狩野義弘さん(ホビー事業部マーケティング第二チームリーダー)は、理由として、「作り手の声を受け、細かいところの改善が日々成されていること」を挙げる。

 38歳の狩野さんも、子どものころに品薄のガンプラを求めて模型店巡りをしていたという。自分の手で組み立てるプラモデルは、突き詰めると「この部分はこうしたい」という思いになる。子どものころにそうした感覚を培った開発者や設計者が、狩野さんを含めてガンプラに多く携わっている。

 「26年も続けていると、ガンプラで遊んでいた人が加わってアイデアを出していく。そういう、いい循環が生まれているわけです」(狩野さん)

核となるファンは10万人。ライトユーザーならば100万人くらいというガンプラ愛好者。売り場には、30代を中心に、若い男性客の姿が目立つ(東京のヨドバシカメラ マルチメディアAkibaで)

 プラモデルに限らず、小・中学生のころガンダムを見た30歳代、いわゆる「ガンダム世代」は、社会では中堅クラスになって、ガンダムから受けた影響を、さまざまなかたちで表出し始めている。

 昨年11月から2か月間、東京・上野の森美術館でガンダム展が開かれ、期間中の入場者は8万人に達した。展示作品は、ガンダムをモチーフにした絵画、彫刻、大型模型などで、制作者は、いずれもガンダム世代のアーティストたちだ。

 詩人の水無田気流さんは、ガンダム展を一緒に鑑賞した夫から、「お前の詩の世界は、これだな」と言われた。

 人工的な環境の中で生命が新しい姿を獲得していくイメージや、機械と人間、人工と自然といった相反する要素を組み合わせた作品に、自分の作品と通じるものがあったからではないか、と水無田さんは言う。

 1970年生まれの水無田さんは物心ついたころに、オイルショックで工事の音が減ったことを感じていた。そんななかで見たガンダムには、

 「宇宙に移住して3世代目くらいで、大きな変革が迫られるという世界観にひかれました。ガンダムの世界観は、直接的ではないにしろ、物の考え方には影響を与えていると思います」。

 二足歩行ロボットの研究の分野の場合も、影響が顕著だ。

 小型ヒューマノイド「morph3」の開発者として知られる古田貴之さん(37)が所長を務める千葉工業大学の未来ロボット技術研究センターには、「ガンダムが作りたい」という研究者が集っているという。室長の先川原正浩さんが、こう話す。

 「子どものころから、『ロボットといえばガンダム』というふうに、すり込まれている部分が結構あります。いずれガンダムのようなものを、と思いながら、人工知能や歩行制御などのそれぞれの専門分野の研究を続けているのです」

 先日、ある研究者が高出力のモーターが手に入ったと喜んでいた。先川原さんが理由を聞くと、「これで脚が細くできる」との答えが返ってきた。ガンダムの脚は細く、造形が、これでガンダムに近づけるというわけだ。

 40歳代へと突入していくガンダム世代。果たして、どんな成果を社会に送り出していくか。5年後、10年後も「ガンダム世代」という言葉が残っているか、注目だ。